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【2023年土用丑の日】日本各地のウナギの蒲焼の作り方とは?

結論

 大きく分けると関東と関西で蒲焼の作り方は異なる。関東の焼き方には理由がある。名古屋、九州にも独自の蒲焼文化があり、名古屋のひつまぶし、福岡県柳川市のせいろ蒸しをいただいた。


2023年7月30日は夏の土用の丑の日

 土用の丑の日とは、季節の変わり目(土用)の特別な日(丑の日)。そのため、春夏秋冬存在します。夏の土用の丑の日は、「う」のつく食べ物をとれば、暑さで食欲の落ちる夏にも負けないという風習があります。「う」のつく食べ物の定番はうなぎです。しかし、梅、うどん、牛(牛肉、牛乳、バター、クリーム)など何でもOK。
 うなぎが土用の丑の日の定番になった理由は、平賀源内という天才クリエイターによる広告活動が有力です。ある日、鰻屋さんから、「夏に売上を伸ばすために、集客を手伝ってほしい」という依頼をされました。平賀源内は、鰻屋さんの「本日は土用の丑の日なり。」と看板を外に貼ることを提案しました。その結果、大繁盛したため、他の鰻屋さんもマネして、夏の土用丑の日といえば、ウナギを食べるという習慣が定着しました。300年後の現代にも影響を与える平賀源内の影響力には驚かされます。
 土用丑の日の解説は去年の土用丑の日に詳しく書きました。2022年の土用の丑の日は2回あったため、浜松のウナギ、松阪牛について語りました。下の2つの記事をお読みいただけると嬉しいです。

 2023年の土用の丑の日も、ウナギについて取り上げます。きっかけは、北九州市八幡西区にあるいのちのたび博物館で開催されていた特別展「ウナギの旅展」。この特別展では、ウナギの生態、九州地方におけるウナギを中心に、人々とウナギの関係を学びました。その中でも、特に興味深かった全国各地のウナギの食べ方について掘り下げます。

いのちのたび博物館

 九州最大級の自然史博物館。館内の常設展は、46億年もの地球の歴史が学べます。化石の標本が最大の見どころで、ティラノサウルスなど巨大な恐竜、海獣の化石が並んでおり、ワクワクさせる空間でした。

いのちのたび博物館
開館時間 11:00~21:00(土日祝は10:30開館)
入館料  社会人600円、高校生以上の学生360円、小中学生240円
定休日  年末年始、6月下旬1週間程度
アクセス JRスペースワールド駅から徒歩5分

全国各地のうなぎの食べ方

 日本のうなぎ料理(身を使った料理)と言えば、タレをつけて焼く「蒲焼」、何もつけずに焼く「白焼き」がメインです。刺身もありますが、血液に毒があるため、プロが捌かないと食べられません。今回は、全国各地の蒲焼について話します。
 蒲焼は室町時代から食べられていました。当時、頭と尾を落として、食べやすい大きさにぶつ切りしてから、まるごと焼き、醤油と酒で作ったタレ、または、山椒味噌につけて食べられていました。串に差したウナギの形がガマの穂先に似ていたから、蒲焼と名付けられたと考えられます。
 江戸時代になって現在の蒲焼のように、鰻を開いてから焼いて食べるようになりました。江戸時代後期にうな丼が誕生したとされています。蒲焼だけでは、油がしつこく、すぐ冷えてしまいます。蒲焼を熱々の状態で最後まで美味しく食べられる工夫の結果、うな丼が誕生しました。うな重は、丼から重箱に替えただけで中身は変わりません。高級感を演出するために誕生したと考えられます。

東京

 隅田川で漁獲が盛んでした。背開きで、一度白焼きにして蒸してからタレにつけて何度も焼きます。背開きの理由は、江戸は幕府の拠点であり、切腹をイメージさせることからだという通説があります。しかし、実際は、魚は、背中側が厚く、腹側が薄いため、背中側で串刺ししたほうが、形が崩れないから。蒸すことにより、身が柔らかくなるため、崩れやすくなります。蒸す理由は、脂を適度に落とすため。ウナギは、栄養豊富です。しかし、脂も多く、アナゴの倍以上あります。こってりしすぎて重いと感じます。蒸すことによって、脂が適度に落ちて、ふっくらして身が柔らかくなり、表面が香ばしいです。タレは、醤油+みりん+鰻の骨の出汁から作られます。薬味に山椒を使います。山椒の香りがウナギの独特の匂いを抑え、しびれが食欲を増進させます。

名古屋

 腹開きで硬めに焼きます。
 名古屋には、ひつまぶしという郷土料理があります。ひつまぶしは、お櫃にご飯を詰め、上に細かく刻んだうなぎの蒲焼を乗せた料理です。名古屋にある、あつた蓬莱軒が発祥という説では、明治時代末期、うな丼の出前が多く、器が割られていることが多かったです。そこで、器を割れないように木製のおひつに替えて、大勢で取り分けられるように蒲焼を細かく切って出したのが始まりだと言われています。
 食べ方は、4等分にして、初めはうな丼として食べます。2杯目に混ぜご飯にして薬味をのせて食べます。3杯目は出汁をかけてお茶漬けにして食べます。最後の一杯でお好みの食べ方で食べます。薬味はのり、ネギ、ワサビがあります。卓上には山椒もあります。
 ひつまぶしを指示通り一度食べると、自分なりの食べ方が分かります。私の場合、半分うな丼として食べてから、残り半分を大雑把に混ぜます。蒲焼の香ばしさ、食感をキープしたいため。薬味は、ネギのみ使用し、卓上にある山椒をかけます。出汁をかけると、ごはんが出汁を吸って重たくなるため、私は好みではありません。ひつまぶしは、うな丼より蒲焼とごはんの一体感を強く感じられます。名古屋に行ったときにまた食べたい味です。今回は、名古屋駅新幹線口側の地下街エスカ内にある「ひつまぶし名古屋備長」でいただきました。

ひつまぶし 3850円

ひつまぶし名古屋備長 エスカ店
営業時間 11:00~15:00、17:00~22:00
定休日  エスカに準ずる
アクセス JR名古屋駅新幹線口から徒歩1分

大阪

 頭と尾をつけたまま腹開きにし、串打ちし、蒸さずに焼きます。タレは、醤油ともろみを合わせて作ります。串打ちしたうなぎをタレに浸けて焼いてから、頭と尾を落とします。脂によって揚げ焼きのようになり、カリカリ食感になります。

九州

 腹開き、背開きが混在しています。蒲焼は「地焼き」と呼ばれ、蒸さずに焼きます。長崎市から佐賀県鹿島市にかけて、楽焼という内部に空洞のある器にのせて食べられることが特徴です。
 九州では、天然物は有明海、養殖は鹿児島県が中心です。天然モノは「アオ」と呼ばれて貴重です。

福岡県柳川市

 西鉄天神駅から特急で1時間。有明海に面し、2本の大きな川が流れる福岡県南部の街です。柳川市は、かつて有明海からウナギやドジョウが盛んに獲れ、ウナギ料理はせいろ蒸し、ドジョウは柳川鍋(ゴボウと一緒にしょうゆベースの出汁で煮込んで卵でとじた料理)が名物です。
 今回は、西鉄柳川駅前にある吉備でせいろ蒸しをいただきました。せいろ蒸しは、1863年、江戸で人気の蒲焼から考案されました。タレをかけたご飯に錦糸玉子、関西風のウナギの蒲焼をのせてせいろで蒸された料理。蒸すことにより、関東の蒲焼のように身がフワフワになります。脂も適度に落ちてさっぱりします。

ミニせいろ蒸し 2700円

吉備
開館時間 11:15~14:30、17:00~18:45
定休日  水、木曜日
アクセス 西鉄柳川駅から徒歩2分

 柳川市内には、筑後川、矢部川が流れていてそこから水を引いて水路を張り巡らせているのが柳川の街の特徴です。船運が発展しており、川下りが柳川観光の名物になっています。30分に一度、運行されており、堀を抜けていく雰囲気は風情があります。船頭の竿捌きも随所に見られます。特に、橋の下ギリギリをくぐるとき、船頭が飛び越えるシーンは見事です。

 2023年の土用丑の日は、日本各地のウナギの食べ方をテーマに語りました。蒲焼において、ウナギの開き方、焼き方は、浜松が境目と言われています。浜松では、お店によってどちらの開きかたか決まっています。
 みなさんならではのウナギの食べ方やオススメの鰻屋さんがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。

参考文献

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