【書評】 半導体は大事だけど、とんでもなく脆い
読後感
昨今ニュースで「半導体が欠かせない」「半導体のサプライチェーンが寸断されてしまう」などの報道を目にすることが増えた。
それでも実際に「半導体って何?」と聞かれると、私には答えられない。さすがに教養が必要では…と思っていたところこちらの本を見つけたため、すぐに手に取った。
読後感としては、なるほど半導体がいかに世界経済にとって重要か、そして半導体のサプライチェーンがいかにグローバルの生産体制に依存しているかを理解することができた。
一方で半導体の仕組みや、前工程や後工程など実際に製品に組み込む半導体が完成するまでのプロセスの詳細を理解することはできなかった。当然ながらあくまで本書は「教養」を身につけることが主眼だ。従って半導体の重要性とサプライチェーンの脆弱性を学べただけでも、本書の役割は十分に果たしたと言っていいだろう。
Key Takeaways
半導体なくして製品なし
半導体は日常生活に欠かせないものとなっている。それは様々なセンサーやカメラなど電子機器そのものが高度化する中で、部品として半導体が欠かせなくなっているためだ。
半導体は水平分業。川上にはやっぱりアメリカ
半導体産業はもともと垂直統合型だったが、現在はグローバルな水平分業が進んでいる。基本的な部分だが、エッセンシャルな情報だ。
ここで重要なのが、半導体といえば中国や台湾だ、という認識の誤謬である。確かに半導体製造を席巻しているのが中台、そして韓国である。しかし半導体産業の川上、設計に強いのはなおもアメリカのようだ。
半導体はお菓子ボックスではない
半導体は自分の都合に合わせてすぐに調達できる「お菓子ボックス」ではないことも学んだ。例えば自動車。新型コロナの感染拡大で自動車メーカーは需要が落ち込むと予想したが、予想以上に需要が旺盛に。慌てて半導体を発注しても、すぐには調達できなかった。そのため自動車の納品が遅れるという現象が発生したのだ。
テスラは自分で半導体を設計
テスラは半導体を自ら設計することで、最新の自動車の開発に必要な半導体をより早く手に入れることができるようになった。記憶が正しければ、アップルも自社で半導体を設計することで競争力を保っている。利益率の高い川上工程を自社に組み込むことで、コストを抑えながら自社の利益率と競争力を上げる戦略だ。あらゆる電子機器メーカーが今後、半導体の設計に乗り出す時代が来るかもしれない。
テスラ関係でもう一つ。自動車にどれほどの半導体が使用されているかを把握するための目安となる数字が以下の引用。
在庫を増やせばいいじゃない?
半導体のサプライチェーンが脆弱なら、在庫を増やせばいいじゃない。マリー・アントワネットばりに豪語する人がいそうなものだが、どうやらそうもいかないらしい。各メーカーは自社特有の製品に合ったオンデマンドの半導体を使用するため、そもそもそれぞれの半導体は小ロットのようだ。
とはいえ自動車は汎用的で、かつ最先端ではない(古い)半導体が使われるケースが多いようでもあり、その場合は在庫ストックは有用だ。
See you next time…