第13回 社会主義の生みの親 マルクスvol.1
前回は近代経済学の父、アダムスミスを紹介しましたが今回は社会主義の生みの親、マルクスについて見ていきましょう。
少し長くなってしまったので前半と後半に分けます。前半はマルクスによる資本主義の批判と分析、後半は社会主義の誕生について見ていきます。
1.社会主義の父 カール・マルクス
前回紹介したアダムスミスは、市場=マーケットが需要と供給によって値段を決める、余計なことをしないで市場に任せておけば経済は発展するのだろうという理論を打ち立てました。
そこで資本主義は間違っているとして新しい経済理論を打ち立てたのが、カール・マルクスです。
資本主義をひっくり返そうではないかということで共産主義運動をするようになり、『資本論』第一1巻を書き上げました。
2.派遣切りがきっかけとなり再評価される
マルクスは社会主義を打ち出した人物で、その影響を受けソビエト社会主義共和国連邦、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバといったたくさんの社会主義国が生まれました。
しかし、ソ連が崩壊し他国も次々に社会主義を放棄したため、マルクスの社会主義は時代遅れだと言われるようになります。
ところが2008年、リーマン・ショックが起こり、日本では派遣切りが相次ぎました。その年、派遣切りは大きな社会問題になり、これをきっかけにマルクスが『資本論』の中で予言した労働者の状態が再現されているのではないかと再評価が始まっています。
3.労働が富を生み出す ― 労働価値説
「富」とは、労働こそが富を生み出しているのだという考え方、こういう考え方を「労働価値説」と言います。労働によってあらゆる価値が生み出されているという考え方です。
資本家と呼ばれる人たちが労働者を雇って労働させる。労働者が労働することによって富が生まれ、財産が生まれ、お金が得られる。
そのお金を蓄積していくことによって資本というものが生まれます。
4.資本家と労働者
このようにいったん資本家が会社を経営していくと、ライバル企業との激しい競争が始まり、結果労働者を低賃金で長時間労働働かせることになります。
そして資本家が大金持ちになっていく一方でひたすら働かされる労働者が生まれていきます。
やがて資本家と労働者の激しい闘争が起きるようになり、多くの労働者が立ち上がりついには革命を起こし資本主義が崩壊する、これが『資本論』の考え方です。
4.商品の価値とは
マルクスは商品には二つの価値があると考えました。一つ目は使って役に立つという使用価値。
二つ目はものとものを好感させることが出来る交換価値です。
そして商品の交換価値は労働力によって決まるとマルクスは考えました。例えば鉛筆二本を消しゴム一個と交換できるのならば、消しゴム一個作るあいだに鉛筆は二本作れるだろう、だから交換できるのだろうということです。
つまり同じ労働力の量が含まれている商品同士だから交換できるのだということです。
5.資本家について
経済学における資本家とは、持っているお金を何か新しいことに使って増やそうとする人たちのことを言います。
持っているお金や財産を使って何か新しい事業を始めようとする人が、経済学でいう資本家ということになります。
そこで今度は労働者を雇うことになります。そのときに労働者に支払われる賃金は、労働力の価値ということになります。
その労働者が労働力を提供し、その労働力の分だけお金を払っているということです。そしてそこから利潤が生まれていきます。
6.資本家による労働力の「搾取」
こうして、労働力を購入することによって資本家が財産を増やしていく。これが資本主義のメカニズムだとマルクスは考えました。
そこでマルクスは、資本家が労働者を働かせて払った労働賃金以上の利益を生み出す、これはつまり、資本家が労働者を「搾取」しているのだと考えました。
労働時間を「必要労働」と「剰余労働」に分け、労働者が新しく価値を生み出した「剰余労働」を資本家が利益をあげるために増やす必要があるのではないかと考えます。これが「搾取」にあたるのではないかということです。
7.労働力の再生産費と格差社会
そのためには労働の生産性を高める方法と、人が生活にかかるお金を減らす方法があります。
例えば、ユニクロの服を買ったり、安い牛丼を食べて生活するとなると生活にかかるお金(労働力の再生産費)が安くで済みます。
そうすると資本主義経済全体でさまざまな企業がとにかく安いものを作ろうとし、結果的に労働者の給料を安くすることが出来、それだけ資本家の取り分が増えていくことになります。
そして機械化を進め、必要な労働者数を減らし過剰労働人口を生み出していきます。そうすると失業者が出てきます。
そうすると安い給料でも働く人が増え、資本家がどんどん安い給料で大勢の人を働かせることによって、資本家のもとには資本が蓄積され、失業者には窮乏の蓄積がされていきます。
こうして格差社会が生まれていくのだとマルクスは分析しました。
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