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第14回 景気対策の常識をつくったケインズ経済学 vol.1

前回は資本主義そのものに問題があると考えたマルクスについて紹介していきました。今回は公共事業で景気対策を図る考え方を打ち出したケインズ理論についてみていきます。


今回も前半と後半に分けます。前半は景気対策のケインズ理論について、後半はケインズ理論の問題点についてみていきましょう。


1.経済政策の常識を変えたケインズ 

ケインズは資本主義の欠陥を補う政策がとれれば、資本主義でも十分やっていける、豊かになれる、失業者を減らすことが出来ると考えました。


日本でも景気が悪くなると、政府が赤字国債を発行して道路をつくったり橋を架けたりして公共事業を増やせば景気がよくなるという議論が行われますが、これはケインズ理論に基づいています。 


ケインズ理論により、景気対策には公共事業という常識が生まれたのです。


2.ケインズ経済学のきっかけ

ケインズ理論のきっかけになったのは1929年の世界恐慌です。世界恐慌が起こる前までは、世界の国々は「均衡財政政策」という経済政策をとっていました。国民や企業が納めた税金の枠内のお金を使って国民のために仕事をするというものです。


そんな中世界恐慌が起こり、国の税収が激減します。そしてさらに景気が悪くなっていきます。このような状況でケインズの思想が影響力をもつようになりました。


3.ケインズが考えた失業対策

そこでケインズは、企業にお金がなくて従業員を雇えないのであれば、政府がお金を出して雇用が生まれるような仕組みをつくればいい。そのためには公共事業が必要なんだと考えました。


例えば政府が道路建設のために100億円を支出し、次々にいろいろな企業の仕事が増え、それぞれの従業員の給料が支払われる。するとその社員たちの給料で消費が増え景気が良くなっていくという要領です。


ただ、現状は景気が悪いため政府が借金として赤字国債を発行して金融機関や国民に買ってもらおうとします。一時的に財政赤字は出ますが、まわりまわって赤字は解消されやがて財政は均衡されるというのがケインズの考え方です。


4.消費性向が高まれば乗数効果は高まる

財政支出をしたらどのくらいの経済効果があるのか、これが乗数効果です。例えば100億円の公共投資に対して200億円の需要が生まれるとすると、乗数効果は2倍ということになります。


乗数効果を大きくするためには高い「消費性向」が必要になります。消費性向というのは家計所得のうち消費に使われる割合のことを言います。


消費性向が高まれば高まるほど景気は良くなり、給付金の10万円もみんながすぐに使えば景気への効果が大きいことになります。


5.貯蓄性向を押さえるために累進課税

貯蓄性向とは入ってきたお金をどれだけ貯蓄に回すかというものです。貯蓄性向を下げ、人々が消費性向を高めていくように誘導すれば景気対策になります。


そのためにケインズが考えたのがお金持ちから税金をたくさんとる「累進課税」です。

お金持ちはいろいろなものを買いますが貯蓄もします。景気が悪くなり失業者が増えたとき、政府はあまり消費をしないお金持ちからたくさんの税金を吸い上げ、そのお金を社会保障として失業者や困っている人に渡します。

逆に言えば、最初からこの仕組みがあれば景気が悪くなってもお金持ちから貧しい人へ社会福祉としてお金が回ることによって所得の再分配になりそれによって景気の悪化を食い止めることが出来ます。


6.金利を下げて新たな企業の投資を増やす

ケインズは景気対策のため、ほかにもみんながたくさん買い物をしたり企業が投資することによって消費を伸ばすということを考えました。

企業は銀行からお金を借りる時、金利が低ければ低いほどお金を借りやすくなり、利潤率が利子率よりも高ければ企業は事業への投資を始めると考えました。

そこで日本の景気が悪くなり日本銀行がどんどん金利を下げ、結果的に金利がほとんどゼロになりました。一般人が銀行にお金を預けても利子はほとんど付きませんが、銀行はそれより高い利子で企業にお金を貸します。

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