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小説「さよならモラトリアム」

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「まだ何も、始まってへんのよ」  二十三歳の誕生日を前にして、早々と人生を諦めようとしていた柊茉莉子(しゅうまりこ)に、偶然出会ったカウンセラーの椿スミレはこう言った。マリコは…
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2021年2月の記事一覧

さよならモラトリアム 終章

 次に目を覚ましたとき、あたしは真っ白なシーツの中にいた。起き上がると、スミレが温かいコ…

大神晴子
3年前
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さよならモラトリアム 第13話

 家に入ると、「最初の記憶」が蘇ってきた。まだ幼いあたしが母と風呂に入る。風呂から上がる…

大神晴子
3年前
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さよならモラトリアム 第12話

 四月一日。あたしはこの日の午前十一時半に、シュトゥルムフートと朱橋駅で待ち合わせをして…

大神晴子
3年前
7

さよならモラトリアム 第11話

 あたしがロイヤル・パレス・ナニワに着いたのは、スミレとの待ち合わせの一時間前だった。薫…

大神晴子
3年前
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さよならモラトリアム 第10話

 あたしはもう丸一日以上、眠ってしまっていたことを悟った。慌ててあたしが謝りに行くと、椿…

大神晴子
3年前
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さよならモラトリアム 第9話

 スミレに会いたい、というあたしの気持ちを予想していたかのように、二か月前にスミレと交換…

大神晴子
3年前
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さよならモラトリアム 第8話

 就職活動をしていた時間が空いたことで、またあたしは小説を書き始めた。そこで、あたしは悟ってしまった。  結局、あたしが小説を書くのは、何かしらで有名になりたいという承認欲求を満たすことと、まともな職を手に入れることが出来ていない現実から逃れることが目的であり、それを読んだ他人がどう思うかなど、もはやあたしには関係なかった。  現に、スミレに愛されている、と思えていたときには、小説など書かなくても生きていられた。そもそも、小さな頃から、本などまともに読んでこなかった人間に、小

さよならモラトリアム 第7話

 結局、あたしはせっかく手に入れたスミレのカウンセリングルームでの仕事を、たった一ヶ月で…

大神晴子
3年前
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