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発達障害とウェアラブルデバイス

TechDoctorの公認心理師の江藤です。
 
今回は、ウェアラブルデバイスと発達障害の研究についてお話をしたいと思います。


研究におけるウェアラブルデバイスへの期待

近年、研究分野でも、ウェアラブルデバイスへの期待が高まっています。

メンタルヘルスの分野でも同様に、ウェアラブルデバイスを用いた研究への注目が高くなっています。医学・生物学分野の検索サイトの”PubMed”で、「wearable devices」というキーワードで検索をしてみると、2016年に研究の発表数が1000件を超え、2022年には4235件になっています。このように、急激にウェアブルデバイスに関連した研究が増加しているのが分かります。

その要因としては、デバイスの小型化、高速大容量のネットワークの普及により小型で高性能のデバイスが充実してきたなどの現状があります。それによりウェアラブルデバイスが身近なものになり、多くの人がその可能性に気づき、研究が促進されているのだと考えられます。

PubMedの検索結果より筆者作成

メンタルヘルスの分野でもウェアラブルデバイスを用いた研究が多くなっていますが、特にうつ病、睡眠障害の分野での研究が増えています。弊社のnoteでもうつ病や睡眠障害の研究についてはお話ししているので、この記事では、少し趣向を変えて、ウェアラブルデバイスを用いた発達障害の研究について、1つご紹介したいと思います。
 

発達障害とは何か

まず、ご存知の方も多いとは思いますが、発達障害とは何かというところから、簡単にお話ししたいと思います。

発達障害には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)などが含まれます。「定型発達」と言われる多数派と、発達障害の人では、生まれながらの脳の働き方に違いがあると言われています。同じ障害であっても特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障害を併せ持ったりすることもあり、その人が何に困っているかは千差万別です。

今回は、発達障害のなかでも、ADHDについてお話しをしたいと思います。

ADHDとは、落ち着きがない、待てない(多動性・衝動性)、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)などの特性があります。
多動性・衝動性と不注意の両方が認められる場合も、いずれか一方が認められる場合もあります。発達障害への認知が高まるにつれて、大人になってから発達障害と診断される方も増えていますが、上記のような特性が子どもの頃から認められる場合、発達障害と診断されます。
 

発達障害に対するウェアラブルデバイスの活用可能性

では、発達障害に対して、ウェアラブルデバイスはどのような活用可能性があるのでしょうか。
 
思春期のADHDの子どもに、ADHD症状を改善するために、身体活動を増やすための介入を行った研究をご紹介します。
身体活動を増加させることはADHDの症状の改善と関連し、ADHDの子どもの学業や社会的な機能にも有益であると知られていますが、ウォーキングなどの日常的な身体活動がどの程度効果があるかは知られていませんでした。

そこで、Seattle Children's Research Instituteは、身体活動を増加させる介入をFitbitとFacebookを使用して実施しました。
ADHDと診断された14歳から18歳の11人は、Fitbitを用いて、週ごとの歩数を記録し、Facebookグループに活動状況を投稿し、「いいね!」などのフィードバックをもらいました。そして、子どもたちと両親は、オンラインでADHDの症状を毎週評価しました。

結果として、子どもたちの毎日の歩数が増え、ADHDの不注意症状に改善がみられました。

この結果から、研究チームは、このウェアラブルデバイスとソーシャルメディアを使った介入は、ADHDを持つ青年の身体活動を増加させるための有望な手法であると述べています。また、モバイルヘルス(mHealth)技術とソーシャルメディアは、ADHDの治療から脱落するリスクが最も高いと言われる思春期の子どもたちの支援に役立つ可能性を示唆しています。
 

さいごに

今後、ますます、このようなウェアラブルデバイスを使った介入研究が増えてくるのではないでしょうか。またデータを使って、症状を改善するような介入だけでなく、発達障害の病態の解明に役立つ知見が得られる日が来るかもしれません。
 
弊社、株式会社テックドクターではウェアラブルデバイスのデータを用いて、人々のメンタルヘルスを計測・可視化、分析しています。そして、すべての人のwell-beingの向上を目指して、サービス開発をしています。

現在、エンジニア・データサイエンティスト、医療関係者など多様な人材の採用を実施しております。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
また、ウェアブルデバイスを使った研究をしたいとお考えの研究者の方からのお問合せもお待ちしています。

⇒ 研究や採用に関するお問い合わせはこちら
 

<参考・引用文献>
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
 
Schoenfelder E, Moreno M, Wilner M, Whitlock KB, Mendoza JA. Piloting a mobile health intervention to increase physical activity for adolescents with ADHD. Prev Med Rep. 2017 Mar 18;6:210-213
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28373931/
 


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