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自分史コラム 「小川淳也」という愚直な良心

あなたの「幸福度」上がってる?

もはやこの書き出しだけで、読むのを止める人がほとんどじゃないかと思いつつも書きはじめました。
正直なところ、私はその他多くの人のように、日本の政治に90%絶望しています。

1億2,000万人もの人が生きている日本は、今なにをどうみてもおかしい。
おかしくないという人がいたら、どこがどうおかしくないのか聞いてみたいほど、日本は社会問題のオンパレードです。

国民の6割が反対しているオリンピックの強行は?
原発の放射能は?
森友・加計学園の公文書改ざんは?
桜を見る会は?
地球温暖化は?
政治家と官僚の汚職と嘘は?
異常なまでの経済格差は?
年金は?
少子高齢化は?
性差別は?
沖縄の軍事基地問題は?

などなど。まだまだあるけども。

これ一言でいえば「日本国民の幸福度って上がってると思う?」ってこと。
この国で生まれた人はすべて「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と憲法第25条で保証されているけど、それできてる?ってこと。

もちろんなかには「この世の中は勝者と敗者がいるのが当然だ」とか「それが資本主義社会なのだ」とか、「落ち込んでいる人は自己責任だ」とか、「偉そうに書いてるオマエはどうなんだ」という声もあると思いますが、それこそが政治の責任なのじゃないかと思うわけです。

結局は自分たちの責任だよね。

しかしそんな国にしてしまったのは、政治に無関心な、または沈黙する多くの日本国民の責任でもあると感じています。

偉そうに言うつもりは毛頭ないのですが、私は私なりにこの国がどうすればよくなるか、それも自分が生きている間だけじゃなく、50年後や100年後に、というようなことについて思いをもち、出来うることに時間を費やしてきました。
 
そして結局のところ、ほとんどの国民が、面倒くさがって、または諦めて声をあげてこなかった、無関心のまま政治に参加しなかったことの集大成が今の日本だと実感しているわけです。

とはいえ、そういう人のために人生を投げうつなんてしたくない。私はそんなに清廉潔白じゃないし、そこまでの志もない。そんな役目、冗談じゃないよくらいに思ってる。
だから政治家にはなりたくないし、なるつもりもない。あくまでも一国民として自分なりの役割を見つけて動いてきました。この投稿もその一つなのです。

でも政治家を志すならば、それを真剣にやってほしい。
命削ってやる以上、お金は人より多くとってもいいし、地位も保証されるべき。そういう人を、自分も人生の時間を使って応援したいと思います。
でもなかなかそういう人、見たことがないし、応援しても受からない。
そうした現状を何年も経験した結果、冒頭の「90%絶望」という状態になっているわけです。
 
しかし、その残りの10%の希望を感じさせてくれる人がいました。
立憲民主党の「小川淳也」氏です。

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小川淳也 衆議院議員【公式サイトより】

「死んでも死にきれん」この国への思い

彼を知ったのは友人があげていたFacebookのシェア。
2019年、統計不正疑惑をめぐる予算委員会で、麻生財務大臣を鋭く突っ込む動画に「え、この人だれ?」と思ったのが最初です。

小川氏は1971年生まれの50歳。香川県高松市で美容院を営む両親のもとに生まれ、東大法学部を卒業後「官僚として日本を変えたい」と自治省に入省。
しかしその限界に気づき、官僚をやめ2003年に当時の民主党から立候補。惜敗するも2005年に初当選し、以後現在まで5選。
その後野党の合併や解体などを経て、現在は立憲民主党に所属しています。
 
選挙区は高松市などが含まれる香川1区。対抗馬は現デジタル改革担当大臣 平井卓也氏。つい先日「完全に干す」「脅したほうがいい」という、大臣にあるまじき発言が暴露された自民党代議士ですが、地元のドン的な存在です。
この選挙区で小川氏はなかなか勝てないが、そのたびに比例復活で当選してきました。この経緯もまたいろいろあるのですが、本題とずれるのここでは触れません。

お断りしておきますが、私は立憲民主党の熱心な支持者ではありません。
野党第一党で期待させておいて、仲間割ればっかり、ガッカリさせられるという印象。それでも今の政府与党よりはマシだと思うし、ねじれがない自公一強だからこそ、こんな日本になっていると思っています。
 
そんな立憲民主党のなかでも彼は「地盤、看板、カバンなし」、いわゆる三バンなしで、党内で派閥にも入らない一匹狼だとのこと。
にも関わらず彼は「この人、命賭けてるな」という気迫と、さらになにが問題の肝なのかを、素人でもすんなりと理解させるトークでどんどん私を惹き込みました。

さらに私が興味をもったのは彼の「官僚出身」というキャリア。
この国の舵取り、向かう方向を決めるのは政治家ですが、そのやりくり、実務は政治家ではなく官僚の仕事です。

2009年の民主党 鳩山内閣が、実は官僚に嫌われたために頓挫したという分析をどこかで読んでから「問題の根っこは官僚にあるのではないか」と感じていた私は、官僚から政治家になったという彼に興味を抱いたのです。
 
国会の官僚答弁て「お前はロボットかよ」という感じでのらりくらりとしか答えない。その官僚の体質や体制を知っている彼なら、ツッコミもシビアであろうという期待を感じたのです。

そんなこんなで彼に注目しはじめた私でしたが、それでもまだ「とはいえ、他の政治家と同じで、なんだかんだとウラもあるんじゃないか」と感じていました。
 
もう政治家に期待してガッカリしたくない、という思いからですが、昨年公開のドキュメンタリー映画 「なぜ君は総理大臣になれないのか(通称「なぜ君」を観て、本当に驚きました。

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映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」公式サイトより

え!?家賃47,000円!?

この映画の監督は、大島新さん。小川氏の奥さんと監督の奥さんが同級生だったことがご縁で彼を撮り始めたそうです。監督の言葉をサイトから抜粋します。

なぜ小川淳也を撮り続けたのか 監督 : 大島 新

「このままでは死んでも死に切れん」。
2003年、小川淳也は総選挙への出馬を猛反対する家族に対し、そう言って説得した。その言葉を借りれば、私は「この映画を完成・公開しなければ死んでも死に切れん」と思った。ドキュメンタリー映像製作をはじめてから20年余り経った、2016年のことだった。

私が小川淳也と初めて出会ったのは、2003年10月10日、衆議院解散の日。小川は、私の妻と高校で同学年。妻から「高校で一緒だった小川くんが、家族の猛反対を押し切って出馬するらしい」と聞いて興味を持ち、カメラを持って高松を訪れたのだった。初めは興味本位だったが、およそ1カ月間取材をするうちに、「社会を良くしたい」と真っすぐに語る小川の無私な姿勢と、理想の政策を伝える説明能力の高さに触れ、私は「こういう人に政治を任せたい」と思うようになった。

この映画は、彼が政治家にチャレンジしてから昨年までの17年間の軌跡で、議員としての活動はもちろん、プライベートや家族にも密着したもの。

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映画には両親、高校の同級だったという奥様、二人の娘さんも登場する(映画公式サイトより)

応援に奔走するご家族も、当初は政治家へのチャレンジに猛反対したそう。常に自分を律し、それを強いるお父さんが怖いといっていた二人の娘さんが街頭に立つ姿にもカメラは迫ります。

映画のなかで、いま彼が奥さんと二人で暮らす香川の家賃47,000円のアパートを見たときは、本当に驚きました。聞けばスーツも、量販店の吊るしを一張羅として着ているそうです。
 
とかく「政治といえばカネ」というダーティーイメージが日本では定着しすぎ。
自民党をはじめ、それだけのスキャンダルがあるからなんだけども、さらに国民が「政治といえばそういうもの」と慣れているだけでなく、諦めている気配すら感じていた私にとって、彼の清貧で愚直なキャラクターは、これまで生きてきて見たことのない驚きを与えてくれました。
この映画の公開後、私と同じような驚きをもった人たちがSNS上で拡散したことで、小川氏の知名度は徐々にあがってきました。
 
そして今年の5月、ノンフィクション作家 中原一歩さんとの共著「本当に君は総理大臣になれないのか」(講談社現代新書)が発刊されたのです。

彼の人柄より政策に厳しく突っ込んだ本作

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映画「なぜ君」で彼は、政治家として私が祈るほどに切望していた「信頼できる人間か」「嘘をつくような人間でないか」という最初のハードルをクリアしました。

しかし人柄は信用できても、具体的な政策はどうなんだろう。
総理大臣になりたい、というからには現実的なことも聞かないと支持も応援もできないですよね。

その意味において、この本はまさに彼の政策が細かく語られているうえに、できたてホヤホヤの本で、現在の日本で起きている政治問題の根本は何なのかを勉強できます。

さらにこの本が素晴らしいのは、共著の中原さんと現代新書編集部が、巷にあふれる太鼓持ちゴーストライターではないところ。
 
自分もライターの端くれであるため、もしちょっとでもその匂いがしたら、それだけで読むのを止めたと思いますが、厳しいツッコミと冷静な分析に引き込まれ、一気に読了してしまいました。
映画と似通ったタイトルについて中原さんはこう語っています。

一部の例外を除けば、総理大臣を目指さない国会議員はいない。だからこそ、私は、この小川淳也という全く無名で異質な政治家に問うてみたかった。
「なぜ?」ではなく「本当に君は総理大臣になれないのか」と。50歳になったこの青臭すぎる政治家に、日本という国の未来のあり方について、真剣勝負(ガチンコ)で、本気で問うてみたのが本書である。

いかがでしょうか。もしここまでで少しでもピーンときた方は、ぜひ映画と著作の両方を観ていただけたらと思います。
 
以前は「50歳で引退する」と公言していた彼ですが、今年改めての継続の意志を宣言。
彼が籍をおく衆議院は、今年の10月21日が任期満了で、この秋に解散総選挙が予定されており、その準備のために香川を奔走しているようです。

「愚直な良心」への祈り

熱心な支持者でもなく、90%政治に絶望しているはずのに、こんなに長く小川氏のことを書いてしまったことに自分でも驚いています。
私が単に彼の太鼓持ちでこれを書いていないということが、少しでも伝わってほしいですが、それは読んだ方のご判断にお任せするしかありません。
 
ただ間違いなく言えるのは、中原さんが「小川のような、青臭く、熱く、切ないほどにまっすぐな理想論が、次代の日本のための一握の福音となるかもしれない」と示すほど、日本はヤバいということです。
 
政治とは本来、自分らの社会への希望を語り、理想を掲げて進めていくものだ、そうあってほしいと私は思っています。
絵空事だけなら誰もが言うでしょうが、それを実現するには、命がけでその身を投じる志のある政治家が必要なのです。
私はその志を語る小川氏をして「愚直な良心」と書きました。

ここまで書いておきながら、私は彼を100%信じるなどとは言いません。
しかし、少なくとも彼の存在は、ギリギリのところで絶望しきっていない、いや、絶望しきれない私の希望のタネの一つであることは間違いないとお伝えして、このコラムを終えたいと思います。

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