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#1 「経営とマーケティングの分離」に挑む統合解剖学、はじめます。 | マーケティングアナトミー™

マーケティングアナトミー™は、組織での運用を前提としたBOX流「経営とマーケティングの統合解剖学」です。
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こんにちは。BOXの阿部です。

マーケティングアナトミー™、はじめます。

BOXは設立以降一貫して「経営とマーケティングの統合」をテーマに、実に幅広い業種におけるクライアント様の支援を行ってきました。消費財、サービス、B2Bなど、スタートアップから大企業まで、プロジェクトのスコープもスケールも多種多様です。

プロジェクト内容は、メンバーの経歴がそうであるようにマーケティングをコアにしながらも、そこに接続される全社戦略、事業戦略、組織設計、ファイナンス、サプライチェーンマネジメント(SCM)、システム最適化、オペレーション改善など、多岐にわたる領域で戦略策定から実装まで並走支援を行ってきました。

実は、1年半ほど前から、BOXのメンバーが積み重ねてきたそうした並走支援の知見に加えて、ぼく個人が10年以上経験してきた統合マーケティングプランナーとしての知見、またBOXメンバーが経営の当事者として関わっている実ビジネスの知見をまとめて体系化したい、という構想を重ねていました。「知見」とカッコつけて言っていますが、これまで数多くの失策も経験してきた罪滅ぼしでもあります。あのときはこの視点が足りなかったな、あのときはこう考えればよかったな、という毎日の後悔や反省の積み重ねを反映して、批判を恐れず一度思い切って体系化してみようというチャレンジです。

そしてこのたび、メンバーに壁打ちをしてもらいつつ、「経営とマーケティングの統合解剖学」と銘打ったマーケティングアナトミー™なるフレームワークにまとめることにしました。そして、誤解を恐れずに敢えてぼくなりのポジションを取る意味合いも込めて、マーケティングアナトミー™についてこのnoteマガジンで連載することにしました。

痛感してきた、「経営とマーケティングの分離」が発想の原点

実際にマーケティングアナトミー™の説明をする前に、今回のnote記事では「なぜマーケティングアナトミー™の発想に至ったのか?」、その課題感を共有しておきます。

ぼく個人としては、マーケティング調査および分析からブランドマーケティングの戦略策定、メディアプランニングを含むIMC(統合マーケティングコミュニケーション)プランニング、クリエイティブディレクション、PRディレクション、時にはスポーツイベントや音楽イベントの統括、細かいところではプレスリリースの執筆やアドマネの設定まで、いちプランナーとしては上流工程から下流工程まで、それなりに広い領域を経験してきたほうだと思います。

しかしやればやるほど、いくつかの課題に直面してきました。

●オリエンがスベっている

オリエン(ブリーフ)で書いてある「ターゲット」が、同じオリエンに書いてある売上増や顧客数増を達成するには小さすぎる集団を規定している。オリエンに書いてあるブランド指標の目標値が、目指す売上や顧客数に帰結していない。etc.

●みんなが言っている「マーケティング」の意味がバラバラ

広告代理店の営業は「調査部隊」というニュアンスだし、宣伝部はざっくり「宣伝」のことだと思っているし、◯◯マーケティング屋さんは◯◯マーケティングこそ本流だと喧伝しているし、おかげで経営者は「マーケティングって何かよく分からん!」とすら思っている。etc.

●外部支援機関の知見に隔たりがある

コンサルはなんとなく事業計画っぽいところで止まってしまい、「じゃあどうするの」という戦場の香りがせず、広告代理店は事業P/Lなどいざ知らず。クリエイティブエージェンシーは突然企画のプレゼンからスタート。etc.

●右脳vs左脳論の呪縛

「クリエイティブ」が好きな人は数字が発想の敵だと思っているし、逆もまた然り。クリエイティブvsロジックや文系vs理系の発想が根深すぎて統合的に議論できず、組織文化から手を入れる必要すらある。etc.

●コミュニケーション領域を重視しすぎ

実際の商売では、「どこで売るのか」「どれくらいの店で売るのか」という配架指標や値付けも極めて重要な検討事項。またB2B2X事業では営業人員増も有効な打ち手のはず。なのに、マーケティング部の業務がコミュニケーション領域だけに特化した広告代理店窓口に陥ってしまっている。etc.

●組織を越えると目的がバラける

営業部、商品部、事業部、物流部、経営企画部など、各組織の目的や目標がマーケティング部のそれと同じところに帰結しない。経営陣もそのズレをうまく言語化できずにモヤモヤしており、マーケティング成果以前に、「マーケティング部」の職務権限が怪しい。そもそもの組織構造や意思決定プロセスに課題がある。etc.

●流通している実践的マーケティング論のほとんどが「成功事例」の切り売り

日本国内においては企業の99.7%が中小企業だが、流通している実践的なマーケティング論は有名企業や上場に成功した企業についてのスタディがほとんど(※成功したビジネスはどこを切り取っても成功要因に見える、典型的な因果関係の誤謬バイアス)で、人的、資金的にリソースが限られている中小企業が活かせる体系論が少ない。etc.

ちょっと乱暴にいうと、これらは「経営とマーケティングの分離」と括ってしまえる現象だと捉えています。

ちなみに、マーケティングアナトミー™でいう「経営」や「マーケティング」の語意については、誤解を恐れずに下記の定義を採用します。この前提に立つと、④は①を因数分解した因子であり、経営とマーケティングは(特に売上増の観点において)統合されるべきものである。というのが、ぼく自身があえてここで取るスタンスです。

①経営の目的は利益の(継続的な)獲得である。
②利益増は売上増とコストダウンによって可能である。
③そのうち、売上増は顧客数増または顧客単価増によって可能である。
④マーケティングはその顧客数増ないし顧客単価増に寄与する活動の総体である。

この定義については大いに異論を認めます。「経営は何なのか」という問いや経営の切り取り方について、自分自身でも反論はたくさん可能ですが(笑)、マーケティングアナトミー™の説明においては思い切ってこの前提に立つことにしました。本連載を読み進めるにあたって、「マーケティングとは何を指しているのだ?」「経営とは何を指しているのだ?」と疑問に思ったとき、上記の定義にしばしば立ち返っていただけるとよいと思います。

「経営とマーケティングの統合」は、BOXのメインテーマ

ぼくがプランナー時代にぶち当たった上記の分離を打破するために生まれたチームが、まさにBOXです。ですから、最初からBOXは「経営とマーケティングの統合」をミッションとして誕生したようなものです。その証拠に、2019年当時のぼくのブログには「グランドキャニオン級の溝を埋めていく」という表現で書いてあります(笑)。いい意味で多少のズレはあれど、BOXメンバーの課題感は概ね共有されています。

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以降3年近くにわたって、メンバー個々のスキルセットをかけ合わせながら、BOXはヒト(組織設計)、モノ(SCM)、カネ(ファイナンス&管理会計)など経営のコア領域にもコミットしながら「経営とマーケティングの統合」にチャレンジし続けてきたつもりです。事業会社のCEOとして巣立ったメンバー1名を含め、メンバー全員がBOX以外にも自前で事業を経営している側面もあります。そんな世にも珍しい(?)ノウハウをそろそろ体系化してみよう!というチャレンジが、マーケティングアナトミー™です。

無知なだけかもしれませんが、リソースに乏しい中小企業でも参考になる、経営とマーケティングを本当の意味で統合した体系論はぼくの知る限りほとんど存在していません。この課題感から、ぼくのビジネススクールでの修士論文は『広告しないブランディング』というテーマでした。また、多くの大企業にとっても、経営目線とマーケティングの現場目線をリンクして議論できなかったことは長年の課題だったのではないかと思います。

この連載を通じて、読者の方々のフィードバックを受けながら、マーケティングアナトミー™自体も少しずつ進化していければと思っています。数カ月間、お付き合いいただければ大変幸いです。

さて、次の回でさっそく、マーケティングアナトミー™を構成する要素を見てみましょう。

マーケティングアナトミー™ (2) - マーケティングアナトミー™を構成する6要素


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