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【1話完結小説】冬恋

寒い寒い寒い!
膝掛けをして背中とお腹にカイロを貼っても意味がない。真冬の教室は凍てつく寒さだ。
「その膝掛け百均のでしょ?」
隣の席のキザ山がめざとく見つけて声をかけてくる。
「…だからなんなのよ」
「百均の膝掛けってペラッペラだから全然あったかくないんだよね」
知った風な口を聞かれてイラっとしたけれど…それは図星だった。
「うっさいな、あんたに関係ないじゃん」
「俺のダウンさ、いいヤツだからめちゃくちゃあったかいよ、ホラ」
そう言って私の膝の上に自分のダウンジャケットを脱いでうやうやしくかけてくるキザ山。
「ちょっ…あ、ホントにあったかい…」
「でしょ」
ウインクしてくるキザ山。
「今日一日、使っといていいよ」
寒さでちょっと震えながら言うキザ山。
「ありがと…」
キザ山、もとい山崎君のダウンジャケットからはオシャレ雑貨屋さんみたいないいにおいがした。

end

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