「コンプレックス屋さん」SFショートショート
宇宙からやってきた、いわば宇宙人と、地球の人々は友好的な関係を築き始めていた。
お互いの星の資源や、生産物を交換し合い、友好な関係が続くと、宇宙人から提案があった。
「地球でお店を開かせてくれないか」
各国の首相は歓迎した。
「もちろんでございます。我々の地球も、ぜひ宇宙と同等に進化していきたいので…」
そんな会話が続き、
この度生まれたのがこの会社
「コンプレックス屋さん」である。
コンプレックス屋さんでは、人々のコンプレックスを買い取り、また必要とあれば売却する事をしているらしい。
はじめ、多くの人は意味がわからなかったし、自身のコンプレックスを買い取ってもらおうとする人も少なかった。
しかし、コンプレックス屋さんの波はすぐに世界中を飲み込む。
YouTuberやタレントが、トークの題材として面白いとして、行き始めたのである。
そして、それぞれがコンプレックスを買い取ってもらった。
すると、買い取ってもらった人々は、自身が悩んでいたことが消え、手元には大量のお金が手に入る事実に驚き、興奮した。
となると、「コンプレックス屋さんはすごいぞ」という話はどんどん広がり、そして市民権を得ていった。
世間の人々も、自身のコンプレックスが消え、手元にたくさんのお金がもたらされることに、「コンプレックス屋さん」にコンプレックスを売って生活の足しにする人が増えていった。
コンプレックス屋さんがオープンして一年ほど経った頃、気づけば世界中の人々が似てきていた。
肌の色も、今まであった白黒黄ということもなくなり、全て混ざったような色をしている。
それぞれの会社も同じようなサービスをし、革新的なサービスは生まれなくなった。
美容業界では、もうほとんどの化粧品は売れずに衰退していった。
社会全体が、よくない方向に進んでいるが、それでも人は何も感じなかった。
コンプレックス屋さんがオープンして5年後、地球の人口は元の10分の1にも満たない。
代わりに、自然は豊かになり、ビルやマンションもなく、それはそれは古代のような暮らしを地球の人間が始めたのだった。
宇宙人
「地球の人間は愚かである。人が生きていく、進化していくためには、コンプレックスこそが重要なのだ。それを容易く売るとは…」
「コンプレックスがなければ幸せだが、幸せとはすなわち何も考える余地がないと言うことになる。何も考えない人がふえれば、社会は衰退する。にしても、こんなにコンプレックスを抱えた世界があっただろうか。」
「まぁいい。地球という星からコンプレックスは買い取れたんだ。次はこのコンプレックスを使って、我が星の成長を促そうじゃないか」
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