【短編ドラマ】「結ばれなくてもいいですか?」地球滅亡前日でも素直になれない男女の話 ー「最期に、アフォガードをひとつ」
この物語は、YouTubeで投稿されているマンガ動画
『最期に、アフォガードをひとつ。』の第1話のシナリオです。
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“世界の終わりと誰かの恋に、自分をかさねてみる話”
を掲げて、ある日突然、天から使者が現れ、地球滅亡を告げられた主人公が、地球最後の日に自分の恋愛に区切りをつける話を、1話完結のオムニバス形式で公開しています。
地球滅亡という不条理な運命によって引き裂かれる幸せと、ありふれた恋の終わり。
人は最期に何を思い、何を後悔するのか…。
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【登場人物】
▼間宮(男)
20代前半の大学生。素直な気持ちを言葉にするのが苦手で、ついつい本心とは裏腹な態度をとってしまう不器用な性格。でも世渡りは下手ではない。周りからはよく「優しいね」と言われる。先輩のことが好き。
▼先輩(女)
間宮の大学のサークルの先輩。誰に対しても分け隔てなく接することのできる八方美人タイプ。基本的にいつも明るく、あまり人に落ち込んだ表情を見せない。それ故あまり本音を語ることも少ない。いつもその場の空気を優先してしまう。
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■シーン1:間宮の自宅
間宮の前に使者が現われる。
使者「私は使者。選ばれし者たちに、大事な知らせを届けに参りました。」使者「地球は明日、滅亡します。さあどうしますか、人間よ。」
間宮、戸惑いつつ、携帯を握りしめる
間宮「………。俺は…」
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■シーン2:居酒屋
間宮、居酒屋の扉をあける
店員「らっしゃっせー」
先輩「あ、きたきた。間宮~」
間宮「早かったっすね、先輩」
先輩「定時であがれたんだ~何飲む?」
間宮「なんか適当に…ジンジャーハイで」
先輩「同じのください~」
店員「は~い」
間宮(彼女は大学の頃の先輩で、飲み友達だ。といっても会うのは月に1回程度)
先輩「最近どうよ」
間宮「ぼちぼちっす」
間宮(飾らずにとりとめのない話ができる、心地の良い人で)
間宮(俺の好きな人だ)
間宮(地球滅亡を告げられた時、最初に浮かんだのが先輩の顔だった)
間宮(関係が壊れるのが怖くて、何も伝えていないから最期に会うなら先輩が良かった)
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先輩「も~~ひどいんだよ、今日も上司がミス押し付けてきて!誰かに愚痴らないと死んじゃいそうだったから、助かったよ~」
間宮「そこに俺が都合よく連絡してきたんすね」
先輩「というか珍しいよね、そっちから連絡してくるなんて」
間宮「先輩と飲みたい気分でした~とか、言ってほしいっすか?」
先輩「かわいくねー!あっはっはっは」
間宮「何となくっすよ」
先輩「あー、最高の後輩をもったわ」
間宮「最高すか」
先輩「そうだよー間宮はいいやつ!」
グラスに入ったお酒を見つめる間宮
間宮(いいやつ、か…)
間宮(俺、明日地球滅亡ってわかってて、先輩と飲んでるんですよ。先輩の最期の時間を俺に使わせてる。先輩にもきっと俺の知らない大事な人がいるのに)
間宮(先輩は今日が最後って知っていたら、それでも俺に会ってくれましたか?)
間宮(…いいやつなんかじゃない。どうしようもなく卑怯で、臆病だ)
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■シーン3:間宮と先輩、帰り道
先輩と間宮、居酒屋を出て、駅に向かおうとする。
先輩「本当、間宮と飲むのは良いね。気楽で話しやすくて、潰れたら送ってくれるし」
間宮「こっちの身にもなってくださいよ」
先輩「あはは、感謝してるんだよ」
楽しそうに先を歩く先輩。
先輩「ね~、今度はどの店に行こうか?焼き鳥?鍋?中華もいいよね。行ってないところがいっぱいあるな~」
間宮「…それだけですか」
先輩「え?」
間宮「…俺と飲むのは」
間宮「気楽で話しやすい、後輩だからですか?」
間宮(俺はもっといっぱいある。先輩と飲む理由。会いたい理由。それを全部伝えたいのに、言葉が出てこない)
間宮(明日で世界が終わるのに、大きな声で伝えたいのに。先輩を前にすると何も出てこない)
先輩「そうだな…」
先輩「…一緒にいて、一番楽しい後輩だよ。間宮は」
ハッとする間宮
間宮(ああ、俺こんなに先輩のこと好きだったんだ)
先輩との思い出が蘇る。楽しかった飲み会。先輩の笑顔。
間宮(もっと早く、冗談でもいいから伝えれば良かった)
間宮(そしたら、今日がもっと違っていたかもしれない)
間宮の手を離す先輩
先輩「じゃあ、またね」
間宮「…はい」
駅に向かっていく、先輩を見つめる間宮。
間宮(…バカだ。本当にバカ…こんな状況になっても、何も言えない)
間宮、先輩の姿を見届け、反対方向へ歩き出す。
先輩「間宮~~~!」
驚きながら振り返る、間宮。
間宮「え」
先輩、大声で続ける。
先輩「今日!楽しかった!ありがとう!」
先輩の言葉を受け、鼓動が高鳴る間宮。
間宮(思ってることのほとんどを伝えられなかった)
間宮(でも)
大きく息を吸う間宮。
間宮「…俺も!楽しかった!先輩にあえて良かった!」
先輩、間宮の声を聞き、ピースサインを送る。
肩で息をする間宮。
間宮(出したことない大きな声に息を弾ませながら、ふと、先輩の最期の日が楽しいで終わって良かった。と、そう思った)
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■シーン4:使者と先輩のシーン
使者と先輩の2人きり。
使者「悔いのない人生を送れましたか?」
先輩「悔い…だらけだよ。結局、何も伝えられなかった。」
先輩「もっといろんな場所に行けばよかった。たくさん話せば良かった」
先輩「好きだって…言えば良かった」
先輩「…でも、彼の最後の日が、楽しいで終わって良かった」
シナリオ原案/作画:葵山わさび (Twitter: @ahowasa86)
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