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毎月15万円、ワークスタイルに投資できるとしたら、何を選ぶ?TCP yui

こんにちは。Tokyo Creators’ Projectのyuiです。
アドベントカレンダーイベント、6日目!本日は、ワークプレイスストラテジストという立ち位置から、この1年間の調査・分析をもとに、私なりの「ニューノーマルな働き方」を想像してみました。

「ワークスタイルをサポートする費用」に、一人当たり月15万円投資している。

もしあなたが、今月から毎月15万円、「あなたのワークスタイルをサポートする費用」として会社から手当てされたらどのような内訳に使うだろうか。

近年、人々の嗜好やライフスタイル、職種、コミュニティによるワークスタイルの多様化が加速している。コロナ禍となった本年、日本でもリモートワークの加速が相まって、この傾向はさらに強くなることは自明である。

弊社は今年一年間、ワークプレイス可視化レポート”wit”というレポーティングサービスを通して、総計9508名の働く環境に対する調査・分析を行った。”wit”によって可視化されたのは、従来の企業における「ワークスタイルをサポートする費用」である。

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witによって可視化された国内企業のベンチマーク
・自社オフィス  ¥80,000
・シェアオフィス ¥20,000
・通勤交通費   ¥14,000
・在宅環境整備   実施企業無し
・ソフトウェア   ¥15,000
・ハードウェア   ¥25,000

この結果から、日本の大企業やそのグループ会社・子会社では、ソフトウェア(社内コミュニケーションツールやマネジメントツール等)やハードウェア(ノートパソコン、タブレット、社用携帯等)を含めると、一人当たり15万円前後を、従業員のワークスタイルをサポートするために、毎月投資していることが分かった。

働き方の変化が起きている今日、社員が使うべき働く環境やツールも変わるはずである。働き方改革を推進していく際に、企業は、どのように働き方を変えていくから、何に、どのくらい投資するか、というのを粒度を揃えて判断しなければならない。サブスクリプション型・メンバーシップ型のサービスが増えている今日、「従業員一人当たり」という粒に揃えることで比較検討がしやすくなる。

どの環境やツールを選択するかは、人によって違う。

さて、この15万円をどのように使いたいかは、実は社員によって異なるのではないだろうか。多様性が問われる今日、様々な職種やライフスタイル、趣味嗜好を持った社員がいるだろう。

実際に、社員が自分の働き方に合わせてその15万円を自由に使える、という想定で、いくつか例を出してみよう。

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あなたが営業職だった場合...
都内主要駅に布陣が強いシェアオフィスの利用が便利であり、自社オフィスの利用度は低い。(実際にコロナ前の2019年、営業職の自社オフィス稼働率は30~40%に留まった。弊社調査による)
その場合、週に1~2日しか使わないのに、自社オフィスに8万円/月を費やすのはもったいない。しかし、チームミーティングや1on1、交流などに使いたい時もある。週1~2日の利用に留めることで、2万円/月に減額されると嬉しいところだ。
営業として、日々の移動も多い。都内を自転車で移動できると便利に感じる。電動自転車の購入費用と駐輪代を手当から捻出しよう。
ハードウェアはiPadで事足りる。ソフトウェアは、コミュニケーションツールを多様に使いたい。クライアントへの幅広い対応が求められるからだ。Slack、Teams、Zoom、全てのアカウントが欲しい。
一方で、クリエイティブ部門が使ってるフォトショップやイラレは不要。PDF編集ソフト程度で十分だ。

そんな希望をつらつらと書くと、こんなポートフォリオになるのではないだろうか。

・自社オフィス   週10時間利用(出社率25%)¥20,000
・シェアオフィス  週16時間利用(従量課金)¥15,000
・交通費      電動自転車(36ヶ月償却) ¥3,000
・交通費      駐輪場 ¥5,000
・ソフトウェア   コミュニケーションツール ¥6,000
・ソフトウェア   PDF編集ソフトウェア ¥3,000
・ハードウェア   iPad(36ヶ月償却) ¥5,000
・ハードウェア   iPhone(36ヶ月償却) ¥3,000

総計 60,000円

違う例も考えてみよう。

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あなたが、ものづくりに携わっている場合はどうだろう...
基本的には、プロジェクトチームで毎日頻繁にコミュニケーションを取りながらの仕事だ。仲は良いからハイコンテクストな内容でも、オンラインでコミュニケーションが取れる。週に2~3日はリモートワークで十分だ。
ただ、週明けには先週の進捗確認と今週のタスク確認、週中には中途のタスク確認はしたい。ここは相談や議論も増えるため、週2日は自社オフィスのプロジェクトエリアで同じ空間で働くようにしている。出社は面倒だけど、通勤ピーク時から時間もずらして集合時間を設定できるし、仲間に会える時間はやはり楽しい。
クライアントミーティングやベンダーミーティングは、家から近いシェアオフィスの会議室を使うこともある。自宅から自社オフィスは、ドアtoドアで60分かかる。数時間の打合せのためだけに行くには、移動時間を負担に感じる。
交通費は従来の定期代より安く済むため、浮いたお金で自宅に10万円のタスクチェアを買った、快適。
ハードウェアにもそれなりにこだわりがある。グラフィックボード搭載のRazorを選んだが、持ち運びには不便だから、軽めのiPadも追加購入。ソフトウェアはチームで使うSlackとAdobe Creative Cloudで十分。

・自社オフィス   週16時間利用(出社40%) ¥32,000
・シェアオフィス  週4時間利用(従量課金) ¥3,200
・交通費      週3日の往復交通費 ¥8,500
・在宅環境     タスクチェア(36ヶ月償却) ¥3,000
・ソフトウェア   Slack ¥1,600
・ソフトウェア   Adobe Creative Cloud ¥8,000
・ハードウェア   Razor ¥8,000
・ハードウェア   iPad ¥3,000

総額 ¥67,300

どうだろうか。同じ会社に所属していても、働くのに必要な環境やツールは人それぞれである。

さらにもう一つ気づくことは、サブスクリプションやメンバーシップ型のサービスは、シェアの概念や使用する月のみ料金が発生することを前提としたサービスモデルのため、常時使わないものであれば、金額をぐっと押さえられる効果もある。

リモートワークの一歩先を考える。

新型コロナウイルスは、特にホワイトカラーと呼ばれる人の働き方を大きく変えた。日本ではなかなか進展しなかったリモートワークが爆速したのだ。しかし、12月2日の松浦の投稿でもあったように、リモートワークは、在宅勤務やサテライトオフィスの利用に留まらない。街中が、世界中が、働く場所に変わるポテンシャルを感じる彼の記事は是非読んでいただきたい。

アメリカのキャンパスから解く真のABW。街全体がチョイスになる。

職種やライフスタイル、嗜好、コミュニティに応じて、それぞれが自分に適したワークスタイルを選択できることは、これからの人材が、企業を選ぶ重要な要素となるだろう。

「ワークスタイルをサポートする」という切り口で、投資の棚卸をしてみよう。

このような潮流に向けて、企業はどのようなワークプレイス戦略を構築するべきだろうか。

まず、是非やっていただきたいと思うのは、現在かけている「ワークスタイルをサポートする費用」を棚卸し、毎月の一人当たり費用に換算することだ。オフィスは資産、ハードウェアはリース、ソフトウェアはサブスクリプション、と違う粒度で捉えているうちは、組織としての意思決定も、ユーザーとしての判断も難解になる。

この棚卸を行うと見えてくるのが「いかに、自社オフィスにお金をかけているか」ということである。同じ「ワークスタイルをサポートする費用」であるにも関わらず、その50%以上は自社オフィスの構築と運営にかかっているのではないだろうか。

2020年コロナ禍中において、国内企業の本社稼働率は平均10~20%であった。サンプル数は7社のため、少なくもあるが、あなたの会社のオフィスもそのような状況ではないだろうか。低稼働のオフィス面積を上手く削減したり、シェアの概念を用いたりすることで、他のツールを導入する戦略が描ける。

ユーザーの活動データはデジタルトランスフォーメーションの源泉となる。

これからのオフィスはただ床面積を削減すればよいわけではない。執務や打合せはリモートで出来るね、という共通認識が生まれた今日、机だけが並んだ質素な空間に足を運ぶだろうか。自宅やシェアオフィスでは出来ない活動を「自社オフィス」で行えることが重要であり、行きたいオフィスづくりがこれまで以上に必要になる。オフィスでやるべき活動を整理し、そこに適切な投資を行うことで、ユーザーから選択されるオフィスを実現していくことができる。

更に、ワークプレイスやワークスタイルは継続的に測定され続けることで、社員のニーズをプロアクティブに捉えることが可能になる。毎月、「ワークスタイルをサポートする費用」がどのように変遷しているか、職種やチーム、属性等に分けてウォッチすることで、どのようなオフィスを持つべきか、シェアオフィスを選ぶべきか、交通費支給やリモートワーク手当の必要性、ハードウェアやソフトウェアのラインナップも、判断しやすくなるだろう。

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「そんな情報、会社中にありとあらゆる形式で散らばっていて、毎月逐一管理できないよ」という言葉が飛んできそうだが、そこはAPIやローコードアプリケーション等を使って、収集プロセスを自動化していくことができると私たちは考えている。理想的には、一つのプラットフォームアプリケーションで全ての情報が集約されることだろう。

そのようにユーザーの自由度を高める制度を構築しながら、運営側はプロダクト開発のプロセスやPDCAサイクルに則って、オフィス構築・維持・運営を行なっていく。

働き方のDX化が求められる今日、DX=デジタルトランスフォーメーションの在り方を理解しておきたい。それは、打合せがリモート化されることや、捺印がデジタルサインと変わることでは足りないと思う。
デジタルトランスフォーメーションとは、人々の活動データを収集・分析し、データに基づいた洞察を提示することで、意思決定や活動をより客観的かつ科学的に判断できるようになる、という変革ではないだろうか。

少し近未来的に感じる方もいるかもしれないが、このようなアイディアを私たちTokyo Creators' Projectは、毎日議論し合いながら、具現化する道のりを描いている。願わくは、こういった未来の先に、自主性、好奇心、誇りといった言葉が「働く」という言葉に紐づいてくれるといいなと思う。おそらく、TCPの人たちは、働くことが大好きで、とても熱いものを持っている集団なのです。
そして同じように、働くことに情熱を持った方々とそんな未来を築いていきたい、という意味を込めて、クリエイターズ、すなわち創造者たちとの協働に励んでいるヤツらなのです。


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Tokyo Creators' Project
協働創始者|ワークプレイスストラテジスト
本田 優 Yui Honda