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まるで異世界、なのに心地よい。「ふるさと」と呼んでみたくなる【石川県・白峰】#SAGOJOスクール

2022年2月21日〜23日までの3日間、SAGOJO様主催の「旅先を写真と文章で切り取ろう!伊佐知美から学ぶSNS時代のフォトライター講座」に参加しました。

編集者兼フォトグラファーの伊佐知美さんのもとで、写真・文章・取材について学びながら旅先の地域の魅力を発掘するという、魅力的な内容が盛りだくさんのツアーでした。

このnoteでは、2泊3日の旅で、私が見つけた白峰の魅力や旅の楽しさ、取材体験で知った白峰の現状から課題までをまるっとレポートします。

(このnoteが、私の初めての旅記事なので、ちょっとつたなくても最後まで読んでいただけると嬉しいです!)

「学ぶ旅」スケジュール
[ Day1 ]
 10:00 金沢駅集合(白山ろくシャトルバス)
 11:00 白山比咩神社で旅の安全を祈願
 12:00 白峰着・チェックイン
 12:30 雪だるまカフェでランチ&オリエンテーション
 14:00 白峰ガイド
 14:30 白峰フォトウォーク&写真講座
 16:00 Lightroom講座
 17:30 ライター講座(インタビューなど)
 18:30 白山苑で夕食
 19:30 自由行動・白峰温泉 総湯

[ Day2 ]
 09:30 インタビュー① 小田咲枝さん(雪だるまカフェ)
 10:30 インタビュー② 加藤おさむさん(加藤手織牛首紬)
 12:30 雪だるまカフェでランチ
 13:30 雪だるまづくり
 14:30 インタビュー③ 山口隆さん(NPO法人白山しらみね自然学校)
 16:00 執筆ワークショップ① 取材データまとめ
 17:15 執筆ワークショップ② 原稿作成
 18:30 白山苑で夕食
 19:30 自由行動・雪だるまライトアップ&撮影会
 
[ Day3 ] 
 10:00 フィードバック会
 12:30 菜さいでお土産探し
 13:00 白峰発(白山ろくシャトルバス)
 15:30 金沢駅着・解散

SAGOJO募集記事リンク(詳細はこちら)
https://www.sagojo.link/sugoi-labo/show/155

世界有数の豪雪地帯、白峰

旅の目的地は、石川県白山市白峰地区。 金沢駅からバスで1時間半ほどでたどり着く、ちいさな集落です。

霊峰白山のふもとに位置するこの集落は、世界有数ともいわれる豪雪地帯。

冬のあいだはまっ白な雪に覆われ、多いときには4m以上の積雪を記録することもあるそう。

雪とはほとんど縁のない人生を送ってきた私にとって、この集落の光景はもはや異世界。

そびえ立つ雪の壁、キラキラと輝く幻想的な氷柱、枝の一本一本に雪化粧をまとった木々たち••••••。

滞在中は、白峰の自然が生み出す造形の美しさに、ただただ圧倒されるばかりでした。

そんな慣れない大雪に苦戦しながらも、街歩きをしている間は、なんとかこの美しい銀世界を写真に収めようと奮闘しました。

なんか、白峰、居心地よい

雪景色の中を、犬と一緒に歩く人も多く見られた白峰

集落でフォトスポットを探し歩いていると、すれ違う地元の方々が、よく笑顔で挨拶をしてくれることに気がつきます。そして、そのたびに、なんだか気持ちがあたたかくなるのを感じました。

中でも、とくに居心地のよさを感じたのが「雪だるまカフェ」で過ごす時間。

雪だるまカフェは、取り壊し寸前のところを保存された古民家で運営されており、暖簾をくぐると、まるでおばあちゃんの家に遊びに来たかのようなホッとする空間が広がっています。

雪だるまカフェの店名のとおり、あちらこちらで雪だるまがお出迎え。

メニューには白峰名物の「おろしうどん」や「ぼたもち」、「かましいりこ」などが取り入れられており、地元住民にも観光客にも愛される憩いの場となっているそうです。

雪だるまカフェオーナーの小田咲枝さん。チャーミングという言葉がぴったり。

オーナーは、白山生まれで進学以来白峰に住まれている、小田咲枝さん。

白峰の好きなところについて尋ねると、
「人間性が穏やかで、人付き合いがよいところ。みんなが助け合いの精神を持っとるねえ。」
と答えてくださいました。

地域おこし協力隊として1年間だけ白峰に暮らしにきた人でも、地元の方々に食事やお風呂に呼ばれていくうちに、すぐに町の中に溶け込んでいけるそうです。

小田さんが畑で育てた紫蘇から作られる「紫蘇ジュース」。
よく見ると、氷やクッキーも雪だるま。小さなこだわりが愛らしい。

外の人を受け入れる風土

私たちのために、地元の方が即席で作ってくださった雪だるま。

正直に言うと、白峰を訪れるまでは、「豪雪地帯の集落」というワードから、勝手に排他的なイメージを抱いていました。

でも、実際に出会った地元の方々はみんな、笑顔でコミュニケーションをとってくれる。困っている人がいたら、駆け寄って手を差し伸べてくれる。

地元の方にも、私たち旅人や移住者にも、分け隔てなく。

そんなあたたかさが伝わってくるから、白峰は居心地がよいのだと感じました。

雪が積もればみんなで雪を降ろし、誰かが転べばすぐに駆け寄って手を差し伸べる。
滞在中、何度も目にした助け合いの精神。

「白峰には、外の人を受け入れる風土がある」。そう教えてくれたのは、NPO法人白山しらみね自然学校の代表、山口隆さん。

白峰ガイドの達人、山口隆さん。

古くから観光地であり、外からのお金、情報、人が経済を支えてきた白峰だからこそ、観光客や移住者を受け入れる土壌がしっかりと築かれているのだといいます。

白峰が抱える後継者・働き手不足問題

豊かな自然と、人を受け入れる土壌をもつ白峰。

魅力あふれるこの地ですが、ほかの多くの農村と同様、過疎化が進んでいます。

昭和30年代に約3,000人いた白峰の人口は、現在約700人まで減少。人口のボリュームゾーンは85歳以上の女性で、20代~30代は決して多くはありません。

生まれてくる子どもの数も少なく、現に4年ほど前までは、20代の母親はいなかったそうです。

こうした人口減少は、やがて後継者不足・働き手不足につながります。

白峰でも民宿や旅館などのお店が次々と廃業しており、そのほとんどが経営難ではなく後継者不足が要因だったとのことです。

働き手不足の問題は、白峰に根付く伝統産業とて、例外ではありません。

白峰の伝統工芸「牛首紬」を受け継ぐ、「加藤手織牛首つむぎ」代表の加藤さん。

たとえば、牛首紬は、昔から養蚕業が盛んに行われてきた白峰の伝統工芸のひとつ。

太くて節のある玉糸で織りあげるのが特徴で、昔は村民の晴れ着などに利用されていました。

蚕がたくさん。最初はびっくりしたけれど、お話を伺ううちに、いかに大切な存在であるかが伝わってきた。栄養たっぷりなので食べる方もいるそう。

しかし、時代が変わって化学繊維が台頭するようになり、牛首紬の需要は減少。加藤さんの祖母の時代に、白峰の牛首紬の担い手は一度途絶えてしまいました。

それでも、「素晴らしい伝統文化を絶やすことはできない」という加藤さんの祖母の強い思いが牛首紬を復活させ、今に引き継がれています。

村民から持ち寄られた古い織機を大切に保存・修理・使用して、いまでも昔ながらの製法を続けている。

牛首紬は、加藤さん一家の想いによりなんとか復活を遂げましたが、ただ消えていってしまう文化や伝統も多いはず。あたたかな白峰ですが、そういった一面があることも、この旅で学んだことの一つです。

白峰を第二のふるさとに

白峰で見たのは、常軌を逸する大雪に、昔話に出てくるかのような古い街並み、そして、雪を楽しむための小さな工夫の数々。

白峰で出会ったのは、厳しい環境のなかでも互いに助け合い、伝統を守りながら、優しくたくましく生き抜く人たち。

私にとってはまったく馴染みのない、異世界。だけど、たまらなく心地よかった。

何度も訪れて、人に会いに、風景に会いに行きたくなる。

白峰には訪れた人を夢中にさせる魅力があります。

Photo by Tomomi Isa

ツアーの最後で、山口さんは、こう語りました。

「白峰の、人を受け入れる土壌を活かして、関係人口を増やし、地域全体が若者の学び舎として活動できればと考えているんです。田舎暮らしがしたいと願う人たちや、人とのつながりを求めている人たちに、白峰の魅力を訴求していきたい。移住をしてほしいとまでは考えていないけれど、季節ごとに白峰に足を運ぶ人が少しずつ増えてくれれば良いと思っています。いわば、『第二の村民』のようなコミュニティのような形が理想ですね。」

旅先ではなく「ふるさと」として、何度も帰ることができる場所、白峰。

またこの場所に帰ってこられる日を、今から心待ちにしています。

さいごに

「いつかは、大好きな旅の魅力を写真と言葉で表現して生きていきたい」

そう夢みるものの、なかなか初めの一歩が踏み出せなかった私にとって、この旅は大きな転機になりました。

伊佐さんと、この旅で出会った素敵な3名の参加者、そしてSAGOJOの皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。

素敵な旅を、ありがとうございました!

Photo by Kohei Michishita

Information

【雪だるまカフェ】
 
住所:石川県白山市白峰イ75
 TEL :076-259-2071

【加藤手織牛首つむぎ】
 
オンラインショップにて、牛首紬の反物、バッグ、コインケースなどが購入可能です。

【白山しらみね自然学校】
 住所:石川県白山市白峰ロ131
 TEL :080-1962-4614


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