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「拡大、そしてぶち当たる壁」(アートホテル「BnA」のこれまで(3)拡大編)

BnA HOTEL Koenjiをオープンした後、メディアからの注目もありいよいよ拡大フェーズに入ります。しかし、待っていたのは予想外のチャレンジの数々…

1~2話は以下から!



BnA STUDIO Akihabara

高円寺がオープンして少しして出会ったのがコロンビア・ワークスというデベロッパーの方々でした。友人のイベントで創業者の水山さんに会い、意気投合してあっという間に京都と秋葉原のオープンが決まりました。
(たった2部屋のホテルやってる僕らに、いきなり2軒の新築ホテルをまかせてくださったコロンビア、すごい会社です…)

まず取り掛かったのが、BnA STUDIO Akihabara。すでに建設を始めていた小さいオフィスビルを無理やり用途変更してホテルにコンバージョン。新築なのにリノベのような工程を踏んで、2018年にオープンしました。ホテルとしてのフルサービスが難しい設計だったので、広めの5部屋をアーティストの思い描く「ARTと暮らす、東京の次世代アーバンライフスタイル」というテーマでミニキッチンや洗濯乾燥機を備えたアートアパートメントに。家具アーティストのstudioBOWL、ストリートアートコレクティブの81bastards (Mhak, Yoshi47, 井上純, Naoki Yamamoto "SAND", Yoskay Yamamoto, Ghostpatrol, OT, Ryo Yamamoto, 3104Style, LZA)、と51.3G-WAVE (Nanook, Zmurf, Mitsuko Shimae)、3組のアーティストが手がけました。
これまでアートホテルは4軒手掛けてきましたが、結果的にこの物件が一番アートと居住性のバランスが取れており人気の物件になっています。

studioBOWL "Athletic Park"
81Bastards "Hailer"
51.3 G-WAVE "ZEN GARDEN"

1階はBnA HOTEL Koenjiでバーテンダーをしていた小川ダイキが立ち上げたMIKKEという会社がコミュニティースぺ―ス兼フロントデスクとして運営。
その後、Spell's というダンサーチームが運営するホットドッグショップを経て、23年からリバ邸とFOSという動画制作会社が入居しています。

BnA Alter Museum

そして、始まったのがBnA最大のプロジェクト、京都の河原町の新築プロジェクト BnA Alter Museumです。10階建て31部屋は現状、BnA最大規模になります。

BnA Alter Museum

この頃にBnAの「コミュニティリーダーをキュレーションする」というスタンスも確立しました。高円寺でコミュニティリーダーである大黒をチームに加え、彼のコミュニティをベースにホテルを作ったように、京都でも京都のコミュニティリーダーと一緒にホテルを作ろう、と

色々な方に紹介してもらい、関西で様々な方と会い、ビジョンに共感していただいたコミュニティリーダーたちに「アートディレクター」としてアーティストと部屋を提案していただきました。結果的に、椿昇(京都芸術大学美術)、大垣ガク(アシタノシカク)、サハラクミコ、櫻岡聡(Finch Arts)、田窪直樹(Pulp Gallery)、田中タケフミ(ON&co.)、地野裕子(ルゥルゥ商會)、三嶋章義という8名のアートディレクターと、真鍋大度、EY∃、菅本智、青木孝允、中野裕介/パラモデル、梅田哲也、大平龍一、三嶋章義、香月美奈、ミズグチグッチ、SHOWKO、MON、河野ルル、油野愛子、Saiという15名のアーティストの参加が決まりました。

共用部に関しては京都は世界中から文化を見に人が集まる観光地。だからこそ「京都の今」をショーケースするオルタナティブな美術館、というコンセプトで「BnA Alter Museum」が出来ました。目玉となるコンテンツは建物の前にそびえたつ非常階段をのぼりながら鑑賞する10階建ての縦型ギャラリー「SCG」、後にホテルのアートディレクターの頭を悩ませるこの空間、どうもどうしても「ふつうのもの」が作れないチームなのです…

10Fの階段をのぼりながら鑑賞するストロングスタイルのギャラリー「SCG」

アートルームに関しても、今回はアートに全振りし、アーティストの無理難題をとにかく形にしていったため、ただでさえ尖りまくったBnAの中でも群をぬいて尖った部屋が完成。ソファーの下のトンネルに潜るとインタラクティブなノイズインスタレーションルームが現れるボアダムスのEY∃さんの部屋や、2メートル近い円盤が高速で回転し幻想的な映像を映し出す三嶋章義さんの部屋など、世界で一番「泊まれるアート」を突き詰めたアートホテルだと自信をもって言えるラインナップです。(あくまでも作品なので居住性を犠牲にした部屋も多々ありますが…笑)ライティングの関係で癲癇の患者は宿泊不可能な部屋が複数あったり、部屋の半分が水たまりになってる部屋があったり、やりたい放題です。
その「部屋の半分が水のインスタレーションで立ち入り禁止」、という部屋を作った梅田哲也さんには完成後「まさかこんな企画が通るとは思わなかった…」というありがたい(?)お言葉をいただきました。一般受けはしないですが、本当におもしろいので、機会があれば泊まってみてください。

EY∃ "D/R/M"
三嶋章義 "My Room"
梅田哲也 "no man’s waters place that don’t see"

開業、立ちふさがるオペレーションの壁

これだけの規模感のモノを作るのはものすごく大変でしたが、本当のチャレンジはオペレーションでした。
(って書いてますが、16タイプ31部屋のホテルは作るのもむっっっちゃくちゃ!大変でしたwアーティスト、ディレクターに加え、内装業者3社、設計士も5~6人、特殊施工する大工さんたちも入って文化祭状態です…)

なんせ、それまで僕らが回していたのは2部屋の高円寺と5部屋の秋葉原、それにほぼオペレーションが発生しない民泊物件です。
それがいきなり30部屋強のホテルに加え、飲食までオペレーションを立ち上げようとしたことに無理がありました。BnAチームは「モノを作る」チームで、サービス業の経験はみなほぼないも同然、「2~30部屋の民泊をリモートで回していたし、そんなに変わらないだろう」と高をくくっていたのですが、大間違い。「部屋の数が倍になると、4倍複雑さが増す」と言われるホテルオペレーションの難しさを思い知りました。オペレーションは固まらず、離職も多々。僕らも数か月京都で雑魚寝しながら立ち上げを行い、なんとかかろうじて回る状況になりましたが、立ち上げ時期にチームに入ってくださったスタッフの方々には本当にご迷惑おかけしました。

※ハコモノ立ち上げようと思う企画脳の起業家の方々…オペレーションなめてると死にます、まじで企画段階でマネジメント経験のある現場経験者入れましょう…というかよっぽど覚悟ないとハコモノなんてやるもんじゃない、特に24時間365日休みがないホテルなんてよほどのモノ好きがやる事業です。楽しいけど。

業績も当初かなり厳しく、立ち上がりは芳しくありませんでした。プロジェクトが立ち上がった2017年当時、京都は平均稼働率85%とという空前絶後のインバウンドバブルでホテルは開けば埋まる、という状態。当然ながら、僕ら以外のプレーヤーもこの時期に次々と新プロジェクトを立ち上げ、2019年~2020年に同時に開業したため、一気に需給バランスが崩れたのです。コロナの影響ばかりに目が行きますが、京都はコロナ前にすでに価格破壊が起こっていました。そして、残念ながら僕らのホテル、メディアへの露出は日本でもトップ級ながら、ターゲットが非常に狭いが故にこの逆境を跳ね返すほどの力はありませんでした。

3年で客室数が2万部屋以上増加した京都

そして、色々な取り組みを行い、業績も上向いてきた2020年。インバウンド4千万人、東京オリンピック、と期待が膨らむ中、ついにコロナがやってきます…

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(その(4)に続く)


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