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My Love My Emotions Mine All Mine

最近ある曲に出会った。MitskiというアーティストのMy Love My All Mineという曲だ。
喧騒な世の中を生きるなかで、少し疲れた僕に、とても静かで優しいこの曲は、ゆっくりと染み渡った。
今日はこの曲の中でも、特に好きな歌詞の一節を聞いて考えたことを共有したい。

Nothing in the world belongs to me  But my love mine, all mine, all mine

Mitski「My Love My All Mine」

「この世界にあるものはどれも私のものではないけれど、私の愛は全て私のもの」
この曲を初めて聞いたとき、この一節が僕の胸に刺さった。
刺さったというより、離れなかったという表現の方が正しいかもしれない。
僕はこの一節のことをずっと考えていた。

確かに、この世界にあるものはどれも僕らのものではないかもしれない。
僕らが持っているものは、そのほとんどが他の誰かが持っていたものに、自分のお金や、自分の働きを払って得たものだ。
この曲の最後の一節でも”Nothing in the world is mine for free. (この世界にあるものはどれもタダで私のものにはならない)”と語られている。
僕らが着る服も、もはや無くてはならないスマホも、今住んでいる家も、日々の食料も、それらを買うためのお金でさえも、元を辿れば僕らのものではないと言えるのかもしれない。
だけど、そんな世界でも、確かに僕らのものであると言えるものがある。
それは愛だ。とこの曲は教えてくれる。

僕たちが覚える愛は、他の誰のものでもない。
僕たちから発生したもので、他の誰とも同じなんてことはない。
それぞれがそれぞれの形の愛を、愛情を持っている。
僕らの愛というのは、他の誰のものでもない。
全て僕らのものだ。

そして、僕はそれは愛に限らないと思う。
僕らが覚える感情も、全て僕らのものではないか。
感情も僕らから発生する。
同じ体験をしても、そこで生まれる感情というのは、その種類も形も大きさも人それぞれ全く異なるだろう。
感情も紛れもなく、僕らのものだ。
生きていて感じるどんな喜びも、悲しみも、寂しさも、楽しさ、愛しさも。
僕ら以外の誰も、僕らと同じ感情を覚えることなんてできない。
全て僕らのものだ。

そんな唯一正真正銘僕らのものである愛と感情を、
僕らは日々蔑ろにしてしまう。
隠し、偽り、壊し、無かったことにしてしまうことがある。

僕は Call me by your name(君の名前で僕を読んで)という映画が大好きなのだが、その映画のなかでも特に好きなシーンがある。
それは終盤、主人公のエリオが談話室でお父さんと会話をするシーンだ。
ネタバレになるので、具体的な内容は避けるが、ある辛い経験をしたエリオに対し、お父さんがこんな言葉をかける。

今は何も感じたくないだろう、2度と感じたくないかもしれない。
(中略)
だが何も感じないこと、感情を無視することはあまりに惜しい。

映画 Call me by your name(君の名前で僕を呼んで) 2017

僕はこのシーンを見るたびに泣いてしまう。
僕らが生きているなかで感じる感情は明るいものばかりじゃない。
悲しみ、怒り、寂しさなど、嫌になってしまうものばかりだ。
でも、それも他の誰でもない僕の感情であり、僕ら自身だ。
僕らしかそれを感じることはできない。
その感情を隠し、偽り、壊し、無かったことにした先に待っているのは、何も感じない空っぽの器だろう。

エリオのお父さんが言うように、何も感じないこと、感情を無視することはあまりに惜しい。
だから、日々感じたことを大切にしたい。
どんな小さなものであったとしても、無視せず抱きしめたい。
どんな愛も、どんな感情も、隠し、偽り、壊し、無かったことにしたくない。
それは他の誰のものでもなく、自分だけのもので、生きている証だ。
それがきっと自分を大切にすることに、自分を愛することに繋がるはず。
My Love My Emotions My All Mine.

そして、そんなことをする必要がない社会であってほしい。
誰しもが、自分の愛を、自分の感情を、隠し、偽り、壊し、無かったことにする必要がない社会であってほしい。そう願う。





文で出てきた曲のMVと映画の公式サイトを貼っておきます。
どちらもめちゃ良いので見たり聞いたりしてみてください。
MV見た感想とか、この記事への感想もあればぜひ教えてください。



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