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《MV考察》still feel.(2019)/half•alive《part①》

今回はhalf•aliveというバンドの"still feel."という曲のMVの考察についてです。

(前回の記事で歌詞の解説を書いています)


あくまで筆者の意見であることをふまえた上でお読み頂けると幸いです。


場面① 自分自身と向き合うジョシュ


腕を組み、壁にもたれかかっているジョシュ(half•aliveのボーカル)。

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何かを悩んでいるようですが、心許ない足取りで歩き出し、似た身なりをした2人の男性と合流します。


3人は同じ振り付けで歩き出し、はじめはジョシュの背後にいた2人がやがて前に飛び出してきます。

右往左往して軽快なステップの後、倒れそうになったところを踏みとどまってから、何かを宙に投げるような動きをします。

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* * *

まずは冒頭の「悩んでいるジョシュが思案しながら歩き出し、2人の男性と合流する」という場面についての考察です。

これは、「自我(エゴ)」が「超自我(スーパーエゴ)」と「イド(またはエスと呼ぶ)」に出会うシーンだと感じました。

自我・超自我・イドとは、フロイトが説いた精神構造のこと

自我 … 下の2つをコントロールする機能

イド … 動物的本能(欲求や性的衝動)
超自我 … 親や周囲から教えられた躾によって備わる

ジョシュはこの歌詞についてのインタビューで「なぜ僕は自分のために話したり、自分らしく考えたり、自分らしく話したりできないのか?」と考えていたことを口にしています。

映像のなかのジョシュが「自我・超自我・イド」のどれになるのかは見る人の解釈によって異なると思いますが、私は「自我」であると解釈して続けていきます。



場面② バンドメンバーから影響を受けるジョシュ


フリーズした分身2人を置いて、ジョシュだけ歩き出します。

彼は半袖シャツにスラックスという格好から、突如現れたクローゼットをくぐり、カーディガンと手袋・それに丸眼鏡という装いに早着替え。

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そしておもむろにソファに座ると、そこにはバンドメンバーであるタイラーとブレットがいます(3人とも似た系統のファッションで可愛い)。

もつれあうようなダンスをしてから、ブレットが「ぽーん」とボールを放つように何かを投げ、それをジョシュがキャッチします。

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そして、ソファに2人を残したままジョシュはまた歩き出します。


* * *

夏の装いから秋の装いに着替えるジョシュ。この場面では、季節の移り変わり・時間の経過を表しています。

「ブレットが何かを投げてジョシュがキャッチする」というシーンは、まるで何かの軌道を表しているようです。

まさに この部分の歌詞が " back into orbit(軌道に戻る) " なので、「見失った自分自身のことを何かが軌道に乗せてくれた」ということでしょうか。

また、ジョシュがインタビューで「ブレットがこの歌詞を書いた」と言っていたことから、「悩んでいた箇所にブレットがアイデアを与えてくれて、また軌道に乗って進むことが出来た」という意味と捉えることも出来ます。



場面③ 転機


ここで、オレンジ色だった照明がパッとピンク色に変わります。

眼鏡を外しスタンドマイクに向かうジョシュ。
そこには座っていたはずのバンドメンバーが楽器を構えて待っており、3人で演奏します。

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しかしジョシュはその場を離れて歩き出し、流れるようにカーディガンを脱ぎ(ここめちゃくちゃカッコいい)最初に登場した姿で冒頭の分身2人と合流します。その瞬間、照明が紫色に急変します。

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分身はジョシュの後ろに重なり、3人はまるで1人の人間のように合体します。
千手観音のような振り付けから、腕を重ねて大きな瞳を作り、瞬きするような振り付けが印象に残ります。

そして、円陣を組むようにひと固まりになったところで分身がフェードアウトし、ジョシュだけが残されて立ち尽くします。


* * *

この場面で一番特徴的なのが照明の色です。
穏やかなオレンジ色から濃いピンク(マゼンタ)色に変わり、紫色に変わります。

色彩心理では、オレンジには「元気」「親しみやすさ」がある一方で「自信家」「落ち着きが無い」というネガティブにもとれる意味があるとのこと。

そしてマゼンタには「次のステップを意識している」という意味があり、紫色には「癒されたい」「回復したい」という願望が隠れているそうです(すべて個人差あり)。

色彩心理をふまえて考察すると、
「燻っていたバンド活動のなかで次のステップに進みたいと考えていたジョシュは、やがて超自我・イドのもとへ還り自分自身を見つめ直す」という転機を表す場面なのだと考えられます。


(容量の関係で、次回の記事へ続きます。)

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