タクシー運転手の隠れたリスク

終電頃のタクシーは飲酒運転と同等、科学的根拠から見るリスク。


「事故を起こしたくなければ、最善の策は車の運転をしなければ良い。」

タクシー運転手が背負うリスクとして一番に思い浮かぶのは
車を運転することによる事故の可能性。

そのリスクを手っ取り早く減らす、もしくは無くすには
“車の運転をしない”
とてもシンプルではありますが、タクシー運転手として仕事をしていくならば車の運転をしないという選択は取れません。

事故を起こすことだけは絶対に避けたいことですが、

今回はそれだけではないタクシー運転手が背負う
致命的なリスクを紹介します。

タクシー運転手ではないあなたにも当てはまるかもしれません。

【座りすぎが脳を削る】

タクシー運転手は、車の運転し長時間座り続ける仕事です。
タクシー運転手以外にも、時間の大半を座ったまま行う仕事をしている方は多いと思います。
そんな“座る”という行為が、あなたの脳を削っているとしたら?
削るは言い過ぎかもしれませんが
そう言っても過言ではない理由があります。

ビジネスインサイダーに掲載されていた記事で
「座っている時間が長いほど、記憶に関する脳の領域が薄くなっている傾向があることが最新の研究で明らかになった。」
と、記されています。

PLOS ONE(アメリカの科学誌)で発表された研究内容が

45~75歳の間の健康な35人を対象に調査。
被験者の平日の運動レベルと座っている時間を聞き、
脳の健康状態を図るためにMRI検査を実施。
記憶形成に重要な役割を果たす脳の領域“内側側頭葉”を詳細に調べた。
被験者は平均して一日3~7時間座っていたが、座っている時間が長くなればなるほど内側側頭葉とその関連領域はより薄くなっている傾向があった。という。
脳のこの領域が薄くなると、認知能力が低下する兆候を示す可能性がある

と、研究者は指摘した。

しかし、
今回の研究は特に大規模なものではない。
また被験者をある時点でのみ評価しただけであり、座っていることが脳が薄くなっていることの原因か否かは分からなかった。
(単に、相関関係があった)
とあります。

《引用元》

研究者は「単に、相関関係があった」と
今回の結果を断定することはありませんが、もしそこに因果関係があるとすれば、長時間座っていて、車の運転をするタクシー運転手は
仕事をすればするほど『脳を削っている』とも言える。

タクシー運転手だけでなく車の運転をする業種の方や
オフィスで長時間座りっぱなしの方にも
この結果には目を背けたくなります。

脳に関すること以外にも、“座る”という行為は
足腰や肩といった身体的な面でも悪影響を及ぼしやすい行為であることから
事故の可能性以外にも、リスクとして見るべき視点が多くありそうです。

【終電頃のタクシーはみんな“飲酒運転”】


飲酒運転が“犯罪”ということは知っていますよね。

この間もこのような事故と事件がありました。

(同業者として悲しいニュースです)

犯罪になるということは、それほど飲酒運転が危険だから。

タクシー運転手がそれと同じ状態で仕事をしていることは知っていますか?
また、その危険な飲酒運転のタクシーに乗りたいと思えますか?

もちろん、タクシー運転手の殆ど(ニュースのせいで殆どと付け加えます)は飲酒運転はしていませんしアルコールチェックもしています。

ですが、実際にお酒は飲まなくても、健康状態に何の問題もなくても
「酔っぱらった状態」で車の運転をしている可能性があります。

特に起床後17時間を過ぎてからは、覚醒のレベルが下がり
ドライバーのパフォーマンスレベルは低下し、
20時間の隔日勤務の勤務体系が多いタクシー運転手はまさに
飲酒運転と同等と言える状態で仕事をしています。

それを示す研究が20年以上も前、1997年にオーストラリアで行われ
『ネイチャー』(世界的権威のあるイギリスの科学専門誌)で発表されました。
それは、睡眠の意識を塗り替えるほど衝撃的で研究者の間でも話題を集めたそうです。

その内容は、、、

一つ目の試験は、
朝8時に起床後、翌日の昼までずっと寝ずに徹夜し
30分ごとに「動く物体をどれだけ正確に追跡できるか」を測定。
この技能テストでは注意力や反射能力といった、
運転に直結するパフォーマンスの低下レベルが分かります。

二つ目の試験は、
同じく朝8時から30分ごとに10~15グラムのアルコール
(ワインならグラス一杯、日本酒ならお猪口3~4杯程度)
を飲みながら一つ目と同じテストを実施し、血中アルコール濃度の上昇とパフォーマンス低下の関係を測定。

その結果を表したグラフが下の図になります。

一つ目の徹夜試験の結果、
起床した直後からパフォーマンスは上がり続け、12時間後の夕方過ぎまでは高い状態を維持。
夜8時頃でもパフォーマンスは下がることありませんでしたが、
12時間を過ぎたころから直線的に下がり始め、起床から17時間を超えると、オーストラリアの飲酒運転の基準である血中アルコール濃度0.05%かそれ以上の酩酊レベルまで落ち込んでいます。

この時間帯から体内時計が夜(休息)の時間帯に入り、神経活動が低下して覚醒力が落ちるため、一気に覚醒中にたまった疲労や眠気が顕在化するそうです。

朝7時の起床であれば17時間後の夜0時以降には“酔っ払いレベル”になる。
つまり、深夜のタクシーは飲酒運転をしているのと同じ状態で仕事をしている。と言えるます。

別の研究では、血中アルコール濃度が
0.02%程度では反応時間や追跡能力が低下し、
0.03%ではハンドル操作が稚拙になり、
0.04%では視線の固定までが困難になると報告されています。
とも、書かれています。

《引用元》
著者 三島和夫 秋田大学医学部教授

これらの研究結果に異様に反応し過ぎることも良いとは思いませんが、
実際に結果として表れていることから「問題はない」とも言えないことが分かります。

実際、タクシー運転手として仕事をしている筆者も朝6時頃に起床して20時間の乗務をしていますが、
(タクシー運転手の勤務体系は20時間の隔日勤務が多い)
朝の時間帯に比べて夜の時間帯は頭が回らず、いつもなら分かる駅名や地名が全く思い出せないことや、何度も行っている目的地を言われても
すぐにコースが思い浮かばないこともあります。

それ以外にも、
覚醒レベルが下がった深夜に起こりやすく、運転手の誰に聞いても「経験ある」というのが

乗務中の居眠り運転

「高速道路で気付いたら一瞬寝ていた」
「ウトウトしていて通ってきた道の記憶がない」
「信号待ちで眠ってしまい、お客様に起こされた」等、

飲酒運転であるないに関わらず、深夜の事故の可能性は格段に高まります。幸い、問題になるほど何か事が起きたり
全員がその情報を知っているほどリスクに目を向けられてはいませんが
一歩間違えれば命を失う可能性がある。

タクシー運転手だけでなく、
タクシーを利用する方や、街を歩く方にも
知っておいて損はないリスクのはなしでした。


最近、高齢運転者による事故も多く発生しています。
車を運転しないあなたも、歩くときは多少注意することも必要かもしれません。
(不安を煽るつもりは一切ありません)


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