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多彩な小津安二郎の世界

2017の事になるけれど、妻と「小津安二郎の映画を観たことないね」という話になり、まず有名な「東京物語」を観たらことのほか良く、そのあと連続していくつか小津映画を観ました。観た作品は「東京物語」「麦秋」「晩春」「早春」「お早よう」です。

「お早よう」以外はどれも名作だろうと思います。内容も視点も実に多彩たさいです。それでいて共通した雰囲気ふんいきも確かにある。時代背景が近いのと、映像の撮り方が独特なのだろうと思います。

「東京物語」は淡々たんたんと話が進んでく。その中で描かれる家族を中心とする人間関係は、実に微妙びみょうなものがあります。日常を訥々とつとつと描いているのに、全くきず最後まで観てしまった。何だろうこれは? 不思議です。小津安二郎の観察力には驚くべきものがあるようにも感じます。

それに対し、次に観た「麦秋ばくしゅう」の女性達のおしゃべり、やりとりはなかなか強烈きょうれつ。セクハラ上司も出てきて、ドタバタ・コメディといったところ。とても面白かった。最後は一転いってんしんみりと終わる。実にいい。

晩春ばんしゅん」は結婚しない娘とそれを心配する父の話で、テーマは「麦秋」と共通していますが、父娘の関係を中心に描かれています。ひと芝居しばいうつ父親役の笠智衆が何ともいい。そのぎこちなさが、逆に何ともリアルなのです。

早春そうしゅん」は夫婦と夫の職場仲間が中心に描かれる。夫婦の関係はとても微妙びみょうだ。
「麦秋」で、女子トークの中心にいた淡島千景が、ここでは揺れ動く妻を演じている。全く異なるけれど、どちらも素晴らしい演技です。岸恵子の過激な演技もいい。「東京物語」の静的な感じとは違って、実にダイナミックな展開です。しかし最後はやはりしんみりと終わる。

「お早よう」は「麦秋」の上をいく、全くのコメディ。随所ずいしょに光る演技があるが、コメディ作品としては失敗作だろうなぁ。笑えるけど、やりすぎ。しかし、こける時は大胆にこけるあたりも、さすが名監督だと思う。やりきるのだな。観る価値はありです。

(2017にinstagram(philosophysflattail)に上げたものを、少しだけ修正したものです。)

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