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8ヶ月前の「虫の知らせ」

「虫の知らせ」というものを、私は信じることにしている。それはラジオの周波数のようなもので、身内は周波数が似ているからキャッチしやすいのだ、という話を聞いたことがあるから。

それに、宇宙も含めこの世界というのは、あらゆる空間に素粒子が詰まっているらしい。だとしたらどこかで誰かに何か変化があったとき、素粒子が揺らぎ、波動のようなものを感じてもおかしくはないと思うから。

6年前、私と夫との関係に、大きな亀裂が入った。それから4年間、夫婦生活を続けてみたが――もう無理だ、私の心身がこれ以上病んでしまう前にこの関係を終わらせよう、と決心する。

だけどその理由とは別に、「早く実家で暮らさなければ」という思いも同時に存在していた。それはどこか焦りにも似た感情で、胸の中に居続ける。

かくして無事離婚できた私は、実家で両親と穏やかに暮らし始めることができた。だがその8ヶ月後、父が脳梗塞で突然倒れ、6日後には帰らぬ人となってしまった。

折しもコロナ禍である。他県に住む姉や親戚たちは、臨終に立ち会うどころか葬儀にも参列できなかった。だけど私は、今や「同居の家族」。危篤に駆けつけ、臨終に立ち会い、母と助け合いながら、なんとか葬儀まで走り切った。

こんなに早く父を亡くしたことは悔しくて仕方がないが、一大決心して実家へ戻ってきたことについては、後悔はまったくない。8ヶ月前に感じた、「早く実家で暮らさなければ」というあの焦り。あれに素直に従っておいて、本当に良かったと思っている。

あれもきっと、「虫の知らせ」だったに違いない。

――こんなことを考えてしまうのは、昨日という日が、父の救急搬送からちょうど一年目だったからだろうか。

これからも私は、ますます「虫の知らせ」には素直に従おうと心に決めている。母とはまだまだ、一緒に暮らしたいと思っているから。何かあってたまるか。

去年は草刈り機械デビューをして、使いこなせるようになった。今年は農作物をひとつ、母から教わりながら育ててみる予定。

いい天気だ。
今日は畑にはびこった、はこべ取りをしよう。


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