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生きる力

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戻ってきた実家での田舎暮らし。里山の風景。染みるご近所付き合い。親類のありがたみ。母から学ぶ農作業。できなくてもいい。知っておきたい。
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#里山暮らし

竹が椿にかわる頃

我が家の悩みの種、竹。 畑のそばに竹山があり、毎年春になるとタケノコが一斉に侵略してくる。我が家の畑だけでなく、ご近所さんの畑にも。 放っておくとタケノコはあっというまに成長し、何メートルもある竹となる。 去年は母と二人がかりで刈れたからまだいい。今年は私がお勤めに出たため、母が一人で立ち向かった。 だけど母は草刈りや畑仕事にも追われるから、1人では手が回らない。畑に現れたタケノコをやっつけることだけで精一杯で、本拠地である竹山まで手が回らない。 小さい竹山ではあったが

カボチャの収穫

私の小さな農園で育ったカボチャ。 お盆頃からついに収穫が始まった。 これまでに追肥をしたり、子づるを切って整理したり、泥がつかないように干し草を敷いたりとお世話してきたが。 母から「これは茂らせすぎだ」と注意されるほど、つるが伸びまくり、葉も大いに茂った。 そして病気にもなった。多くの葉に白い粉状のものがついたのだ。カボチャ畑の隣で育っていた、母のキュウリも同様だった。母の本によると、通気性が悪くてカビが生えたのだとか。今年はしょっちゅう雨が降ったから、そのせいだろう。

我が家の盆棚作法

8月13日を待たずに、盆棚に手をつける。去年片付けるときに解体しすぎてしまって、今年は組むときに手こずるだろうと思ったから。 11日の午後、板と棒の束でしかない盆棚を出す。紐をほどいて、一本一本を吟味。祖母と母、それぞれの印が入っているから、それを解読しなければならない。 元々は祖母が組み立て担当で、祖母自身がわかるように印を入れていたらしい。その後母が引き継いだが、祖母の印がわかりづらいからと、母も印を入れた。しかしどちらも黒の油性ペンで書き込まれたので、 「結局なんだ

ツバメたちの巣立ち

うちの巣箱で生まれたシジュウカラは、数日前、いつの間にか巣立っていた。 「なんだ、あいさつもしないで」 母が寂しそうにぼやく。 毎日シジュウカラのヒナを狙っていたスズメたちも、ぴたっと来なくなった。 車庫に巣を作って住み着いたツバメたちも、ついに巣立ちのときが来た。卵のカラを見つけた7月3日から、きっかり3週間後のこと。 朝、2階の部屋にいた私の耳に聞こえたのは、すごくたくさんの鳥の声と、母の叫び声。 これは何かあった。 ツバちゃんたちが天敵にでも襲われたか。 慌てて

久々のサワガニ

30℃にとどかない気温。 ほどよく風のある曇天。 チャンスとばかりにあちこちから草刈りする機械音や、草焼きの煙が上がる。 我が家も例に漏れず、この日は母と二人、一日がかりで大きな土手2ヶ所で草を焼いた。 数日前に刈って、すっかり乾燥した草。熊手で集めて火をつけ、それが燃えている間にまた草を集める。 そうやって何個目かの草山を作ろうと熊手を掻いていたとき。私の足元で、土色の生き物がカサカサと通過しようとしていた。 カエルかな? 大きさからそう思ったのだが、腰を屈めてよ

ツバメのヒナが生まれたようです

今朝母が、白く小さなものを、テーブルにコロンと転がした。卵の殻である。 「お! 生まれたの?」 我々との激闘の果てに、車庫で巣を作り、何日も卵をあたためていたツバメ。ようやく生まれたか。 「ツバちゃんの巣の下に落ちてた」 卵がいくつあるのかはわからないが、まずは1つ。 さっき車庫に行ってみたが、ヒナの鳴き声は聞こえないような。生まれたばかりだからか? 元気に育ってほしいものだ。 これから巣立つまでが、天敵との戦いである。愛犬オオキイノ(ゴールデンレトリバー)には、引き続

お天気で動く

草刈りシーズンである。 草を刈って、何日か風と日に当てて、ある程度乾いたらひっくり返して裏側も乾かす。その後燃やすわけだが、あまり乾かしすぎると燃えすぎて怖い。だから適度に半生の草も残しておく。 (乾かしている間に他の場所の草刈りも進める) 乾いたら草を集めながら燃やす。燃やすのは風が強すぎない日が良い。風がまったくないと燃えにくくて困る。雨が降る直前だとなお良い。こういう日はご近所さんちからもバンバン草燃やしの煙が上がる。 これをやりながら、今年手がけているカボチャのお

私の小さな農園

去年は草刈り機(刈り払い機)を覚え、せっせと草刈りに勤しんだ。今年はさらに、農作物をひとつふたつ育ててみようと思う。 母にも言われたが、健康上の理由で、私は農業一本で生きていくことはできない。それはわかっている。だけど今のうちに小さな経験は積んでおきたい。 震災、コロナ禍、離婚、父の死、戦争の影響――たった10年、11年の間にこれだけのことが起こった。これから先だって、世界や私の生活が予想外の変化を遂げないとも限らない。 だからたとえ微々たるものだとしても、「生きる力」

モグラが土を掘り、母は花を植える

秋の終わりの頃。庭から畑へ通じるちょっとした原っぱのようなところに、いくつか小さな穴が掘ってあった。 モグラかな、と思ったが、よく見るとちょっと違う。畑でよく見るモグラの穴掘り跡は、黒くてやわらかい土が、こんもりと山になっている。でも私が見ているこれは、黒い土ではあるが、穴になっている。こんもり山ではない。 夕食時に思い出し、母に話してみる。 「あそこにあちこち穴あいてんだけど。モグラっぽいけど、穴だからなんか違うなーって思って……」 言ってるそばから母が大きくウンウンと

ご近所さんは草焼き職人

朝の散歩、愛犬と畑を歩く。照りつける太陽に愛犬がすぐさまUターンしていた夏はすぎ、今はもっともっとと、走りたがる。空は高く、風が涼しい。稲穂はいつのまにか黄金色に変わり、愛犬と私を繋ぐリードにトンボがとまる。 今日は草焼きをしようかな。強すぎない風、夜からは雨、この前刈った草はすっかり乾いている。うん、草焼きしよう。――最近はそんなことを考えながら散歩している。 夏に草刈り機デビューしてから毎日のように腕を磨き、母にも上手だと褒められるようになった。 「今日は私、何しよう

結界を張るつもりで草刈りをする

カマで手刈りしていた頃に思った。 草刈りって、結界張ってるみたいだなと。 草を刈り倒し、天日で乾燥させ、熊手で集めて、野焼きしたり、しなかったり。草刈りしたところとしないところの境目は明らかだ。そうやって手を入れて、私たち人間と獣たちのすみかを分ける。 もちろん獣たちには、そんなこと知ったこっちゃないだろう。見た目を気にしないのなら草刈りなんてしなくてもいいと言う人もいる。 だけど私としてはやっぱり、きちんと草刈りされていた方がいい。草が伸び放題だと、獣たちが姿を隠して

見習い農耕民族、草刈り機を装備する

この4ヶ月の間に変わったこと。 母は、火が怖いから野焼きはしないと宣言していたが、ご近所さんからコツを教わり、やるようになった。 私も、怖いから使わないと決めていた草刈り機(刈り払い機)を使うようになった。しかも新品。私の専用機。 常々母が「危ないから使わせたくない。あんだはケガしたらただじゃ済まない体なんだからダメだ」と免疫異常体質の私に言い聞かせてきたのに、「店さ見に行って、軽いのあったら使ってみっか?」と言い出したのには驚いた。 それだけ母が、この夏一人で草刈り機を

雨後の筍がすごすぎる

うちには竹林が小さくひと山あって、周りの畑に向かって地下茎が伸びている。放っておくと侵略されてしまうから、毎年モグラ叩きのように筍を刈る。父がいた頃は重機で地下茎を掘り出すこともできたが、今年は母と私の二人で、せっせと筍を刈っている。 雨が二日、三日と続いたあとには竹林周りの筍が一斉に伸びまくる。前回刈り損ねたものなどは2〜3mくらいに成長し、数本の地下茎ブラザーズと山の斜面にそびえ立って私を見下ろしてくる。 それだけ伸びたらもう竹じゃないのかと思うが、茶色の皮をまとって、

草刈り作業の恩恵

近頃はほぼ毎日、カマで草刈りをしている。春頃は30分程度の草むしりでバテていたのに、今ではだいぶ体力がついて、1時間こなせるように。午前、午後と、一日に二度やることも。精度も上がってきた。 今は草に加えて、竹にも目を光らせている。成長が速いし、根の広がり方も凄まじいから、ちょっと目を離すとあっという間に侵略されてしまう。地面からヒュッと生えてくる細竹を見つけてはカマで刈る。タケノコは時々、夕飯のおかずにもなる。   * 草刈りは、心と体、どちらにも良い気がする。適度な運