岡山にある古民家の調査で気づいたこと。京間、関東間、中京間だけでない畳基準。
久しぶりの投稿です。
「これは面白い!」という出来事があったので共有したいと思いました。
タイトルからなんとなく分かってしまうとは思いますが、今回共有したいのは、"結果"よりも"過程"についてです。
こういう過程があるからやはり建築は面白いと感じる出来事でした。
それではその出来事について。
独立して間もない私に、岡山県内にある古民家をリノベーションするというご依頼を大変有難く頂きました。
その古民家をリノベーションするにあたって、既存建物の現地調査をしました。
調査内容は規模やリノベーション後の用途にもよりますが、計測や部材の腐朽具合、水道や電気等の設備関係等、様々なことを調査します。
文化財建造物ともなると数ヶ月を要しますが、今回の古民家は数日で終えることができそうです。
その現地調査の中で、柱間の寸法を計っていくのですが、どうも中途半端な数値になっている感覚がありました。
基本的に建物は一定の規格寸法(モデュールという)で間取りを組むことがほとんどで、よく一般木造住宅で使われているのは、「910mm」という寸法で、これの倍数や割った数値によって柱の位置を決めています。(※ハウスメーカーは独自の寸法を決めてモデュール設計をしています。)
皆さんお分かりの通り「910mm」はいわゆる「中京間(1820mm×910mm)」という基準ですね。
地域によって畳の大きさが違うというのは、一般の方でも知っている人がいる有名な話で、
「京間(1910mm×955mm)」
「中京間(1820mm×910mm)」
「関東間(1760mm×880mm)」
など用いられる基準に地域差があることも広く知られています。
しかし、今回計測した数値はどの基準にも当てはまらない感覚がありました。計測した場所によって数値にバラつきや基準寸法に対して数mmの誤差は生じるものですが、その平均値がどの基準畳寸法に近くはなりませんでした。
(この辺の直感はいろいろな建物の実測調査を経験すると感覚的に分かってきます。)
このしっくりこない感覚を持ちつつ、とりあえず数値を記録し調査を終えました。
ここで、その数値をただただCAD(コンピュータで作図)に落とし込んで終わることができないのが私の性格。本や文献でこの中途半端な畳寸歩の謎を調べてみる。インターネットだと、どうしても情報の先入観が入り込んだり、広く知られている一般解が検索上位に上がってきてしまうので。
そうしたら、すぐに答えが分かりました!
『瀬戸内海地域には「六一間」という規格寸法がある。』
・・・六一間?
寸法は、、、1850mm×925mm!
「まさにこれだ!」となりました。
その上でインターネットで調べてみましたが、やはり大半のサイトは「京間」、「中京間」、「関東間」、そして「団地間」の4種類を掲げています。
そして、一部のサイトではこの「六一間」についてちょびっと書いてありました。
これを知らなかったのは、日本建築に関わったことがある者として不覚でした。
ただ、岡山に住んで実際にその土地の建物に接したからこそ発見できたこと。しかも、実測調査をしてなかったら気づかなかっただろうと思います。
眠っている建物にはやはり色々なミステリーが隠されている。
そして、浮かんできた謎を本や文献を使って調べてみる。
なんだか、探偵のような感じを味わえるのは、古民家調査の醍醐味です。これが、社寺建築などの地域の歴史やコミュニティと何百年も関わってきた建物の場合はより深く、より楽しいです。
そんな感じでこの建築探偵ごっこ?笑・・・の面白さを共有したいと思いました。探偵ごっこと言っていますが、これを突き詰めると歴史的な発見をする研究になるので、これを面白いと思える感覚は非常に大事だと思います。
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