しょうもない詩) 剛毛なのに美容師を笑わそうとする人
僕はとんでもない剛毛だ。ライク・ハリガネ。
その上、毛量も多い。タワシなんて、他人の気がしない。
僕はもしかしたら親父がウニと浮気して産まれた子供だったんじゃないかとすら考えていた時期がある。それぐらいの剛毛だ。
美容院や床屋に行くと、いつも「普通の人の5倍ぐらいの髪を切ってもらってるのに、同じ料金で申し訳ないなぁ」と罪悪感にさいなまれる。
僕も40代になり、髪の毛の量も減ってきて髪質の元気も無くなってきたが、10代、20代の頃なんて、常に頭に剣山を乗せていたようなものだった。
しかも、ハリガネの髪は時折凶器と化す。
僕の髪は、いつも容赦無く美容師の人のハサミの刃を傷つけているんだ。これはもう暴力だ。切られているようで切っている。髪を切らせてハサミを断つ。
こんな一方的な僕の暴力により、ハサミを刃こぼれさせてしまった罪を償いたい。
そう思う僕は、できるだけ冗談を言って、ご迷惑をかけている美容師の方々に少しでも笑っていただきたいと思ってきた。だから、日夜剛毛ジョークを考え、放ってきたんだ。
ーーー
あの日、キレイな美容師のお姉さんが、僕の髪を切り始めてこう言った。
「しっかりした髪の毛ですね〜」
僕はこう答えた。
「オカンがね、好きな食べ物、ヒジキなんですよ。
僕を産む前、めっちゃ食べてたって」
綺麗な美容師さんは
「ぶひょっっっwww」
と聞いたことが無い声で吹き出した。その後、5分ぐらいまともに立てていなかった。
きっと、剛毛の客が来たら、いつも閉店後に同僚と「アイツ、わかめ食べ過ぎやって」とか話してきたんだろう。あの笑い方は図星を突かれた人がするものだった。
僕は悶えている美容師さんを尻目に、窓の外を眺めた。そして小さくガッツポーズをした。少し罪を償えた気がした。
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あの日、軽快なトークのイケメンの美容師さんが、僕の担当になった。
当たり障りのない世間話をし、10分後あたりから、話題が尽き始めた。
美容師さんは、僕のカットに集中しているように見えた。
静寂の中、僕は美容師さんにこう言った。
「"今晩ハサミ、研がなあかんな"と思ってるでしょ」
「ぶひょっっっwww」
僕は「あかん、笑いすぎて切られへん」と、急に休憩を始めた美容師さんを尻目に、窓の外を眺めた。そして「やっぱり、そう思っていたんやな。」と確信した。
まだまだだ。もっと、罪を償わねば。
ーーーーー
あの日、熟練のダンディーな美容師さんが、僕のカットをしながらこう言った。
「お兄さん、この髪質なら絶対にハゲないですよ」
僕は答える。
「あ、ほんまですか。髪切りに行くと、絶対そう言われるんですよ」
「なかなか無い髪質ですからね。毛根から強い」
「中学の時、友達にシャーペンの芯貸してくれと言われたんですよ」
「ん? はい、はい。シャー芯?」
「そうです。僕、試しにそいつに自分の髪の毛渡したんですよ。
ほな、そのツレ、大事そうに持って、自分のシャーペンの芯のところに入れたんですよ」
「ぶひょっっっwww」
ダンディーな美容師さんは、爆笑しながら「でも、書けないでしょ!」と言ってきた。
僕は窓の外を見て「当たり前やん」と思い、そのくだりは無視した。
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あの日、オシャレな女性の美容師さんが僕の担当だった。
僕の髪を切り終わった後、散らばった僕の髪の毛をホウキで集めていた。
集められた僕の髪の毛は、メロンぐらいの大きさになった。
僕は、掃き集められた切られた僕の髪の毛を見て、こう言った。
「誰か殺したんか思いましたよ。
子供一人分の毛髪ありますやん」
「ぶひょっっっwww」
やっぱり、そう思っていたんだ。なんぼあんねんって。
今日も少し罪を償えた気がした。
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帰りのレジにて。
「お客様、今日は4500円になります。」
レジでは僕はこう言う。
「やす!ハサミ研ぐ料金、入れてもらっていいですよ。」
「ぶひょっっっwww」
レジの方にも罪を償えた。
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もちろん、美容師の方もプロだ。
コミュニケーションのプロだから、僕の数々の冗談にしょうがなく笑ってくれた面もあると思う。
でも、僕は、あの時のあの美容師の方々の吹き出し方は、リアルだったと信じたい。
わかっている。
こんなことでは刃こぼれさせた罪は償えない。
もっと切れ味のある剛毛ジョークを考えねば。
今日も罪悪感にさいなまれている世界中の剛毛の友よ。
ここで紹介した剛毛ジョークで、美容師さんと少しでも打ち解けて欲しい。
世界中の剛毛の友に幸あれ。
今日も読んで頂いて有難う御座いました😃
#浅くてしょうもない話
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