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Photo by
hiroyuki_gon223
月夜のベランダ
古い水面を見つめる
月が揺れるベランダで
届かない隣家の壁を
そっと指でなぞった
遠くの星が
透明なままいくつも小さく光る
子どもの頃の夢のまま
淡いにおいを残して
まだおばあちゃんが
下で寝ている
そう思って
今日みたいな
眠れない夜に階段を下りれば
深夜放送を椅子に腰かけて
見ていた
「あんた、まだ起きてたんかいな」
「おばあちゃんこそ、眠られへんの?」
他愛のない会話
深夜に取り残されたもの同士
仲間みたいな
不思議な光が揺れる
心地よいリズムで
何もかもが流れていく
ここにしか灯らない光
時間を気にしない
ゆったりとした老後の日々と
昼の光の下で
見つけられずに焦る青い日々が
深夜の交差点で
ひと時何も気にせず交わる
僕の隣で
近すぎず……遠すぎず
揺れている光
遠くへ消えていく
揺れが収まっていく水面から
顔を上げて
昼の光の中に
消えていかないものを
見つけに行かなくちゃ
……でも……
時々は
下りておいで
眠れない日は……ね
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