数量の表し方

中一数学で初めてつまずくところ。

もちろん、正負の数の計算を受け入れることのできない子もたくさんいます。そしてそのだいたいは小学生の頃からの"足す・引く"の考えを固持していることに起因すると思われます(それによって項の概念の獲得が阻害されるのです)。もしくは認識能力が弱く、どうしても符号を見落としてしまうか。

その点に関しては、教えるのに少し自信があります。項による区切り方を徹底し、一つ一つ計算していけば、おおむねできるようになってくれます。

難しいのは、タイトルの"数量の表し方"です。

amのヒモとbcmのヒモがあります。合わせて何mですか?なんて具合の問題です。

ぜひ考えてみてください、意外と混乱しませんか?

この問いに答えるには、まず単位を揃えてやらなければなりません。えーっと、1mは100cmだよね。cmからmに直すから、単位が大きくなるから100bm?なんていう風に失敗する子が、多くいます。正解は、amはもともと単位がmなのでそのままで、bcmを1/100(百分の一)bmに直します。
仮にb=100だとすると、100cm=1mなので、cmからmに直す時は数字だけに着目すれば、÷100されているのです。なので答えは、(a+1/100b)m.

これがねぇ、難しいんですよ。100bなのか1/100bなのか。上記の通り、cmからmに直すには何となく大きくなるイメージがあるのか、そもそも分数を毛嫌いしていて考えたくないから100bと決まるのか(このパターンは意外にも多いです)、とにかく上手く伝えるのが難しいです。

数字ならうまくいく子は多いと思うんです。数量の表し方が厳しい子でも、2cmは何mと言われれば、0.02mと答えられる子はある程度いると思うんです。それを文字で表すのが、難しい。0.02mと言われればああ1mの2/100か、2cmか、と納得のいく子はいると思うのですが、「1/100bm」と言われても、ナンジャラホイって感じですよね。イメージが湧きません。

数学で文字を扱うというのは、今まで具体的な数字でやりくりしてきた算数から、数を抽象化(一般化)して扱うという作業の訓練に他なりません(とはいえ最近では、小学校でも文字式は習うらしいですが)。具体的なイメージの助けを捨てて、本格的な論理の世界に入っていかなければなりません。理性を育てるのです。算数的な世界から数学的な世界へ入門できるか(項の概念の話も全く同じ事が言えます)、そこが中一数学を上手くやっていけるかいけないかの分かれ目な気がしています。

少しだけ付け加えると、数学で文章問題が苦手なタイプは、今度は抽象的に式を扱うことに慣れてしまって、文字式に具体的な意味を与えることを忘れてしまう子どもたちだと考えています。100円の消しゴムがa個あるから、100×a。50cmのテープをbcm使ったから、50-b。a個分あるからかける、bcm分使っちゃったから引く、というのは、イメージの助けを借りなければなりませんし、逆にイメージさえできれば、立式することはなんてことありません。言葉から意味を考えて、数式化する。数式から意味を考えて、言葉にする。その具体⇄抽象の往還が出来るかどうか、それこそが頭の良さ、柔軟性にかかわる大きな一因だと、子どもたちと接しながら思うわけです。

このように、人は物事をどのように理解するのか、今目の前にいる生徒はどのような頭の働かせ方をして、世界をどのように捉えているのか、それらを考えるのは、なにかを教える立場の人間としては欠かせない思考です。はっきりいってめちゃくちゃしんどいです。笑 数学なんかは特に、論理は自ら明晰さを持っているので、それが理解できないのは一体どういう訳なのかというのに、とても悩まされます。しかし、観察して、対話をして、認識を一つ一つ確認していくと、あぁ、そう捉えているのか、子どもにはそう見えるのかというのが、分かってきます。もちろん分からないことも多いですが。そのようにして認識の違いを発見し、こちらの理解してほしい仕方を教え、その通りにすることを学んでくれると、こちらとしてはやった!よかった!となります。これも言い添えておくと、認識(もしくは解釈)の仕方に良いとか悪いとかはありません。ただ教育上、数学的に(あるいは英語文法的にでも良いです)、"正しい"認識はあります。確かにそういう見方もできるけど、ただ学校のこの勉強ではこういう風に捉えるから、それに従おうねと"正す"ことが、我々の仕事なのです。

このような書き方をすると、学校教育は子どもに画一的な考えを押し付けすぎだ!個性を伸ばせ!多様性を認めろ!といった文句が飛んでくる風潮があります。最近では殊更に顕著ですよね。その事に関して私の考えを述べるとまだ長くなりそうなので、今日はこの辺りで。笑 
元々こんなに書くつもりじゃなかったんですけどね。数量の表し方を教えるのが難しいんです〜で終わりにしようと思ったら、話がズルズルと脱線していきました。笑 この手の話は書き出すと止まりません!また今度機会があったら"画一的な教育"の意味についても考えを披露させて頂きたいと思います。

ではまた、おやすみなさい💤

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