ストーリーをつなぐ〔第11回課題〕
映像シナリオの書き方を通信講座で学んでいます。
通信教育の基礎科課題、いよいよ大詰め。
今回とラストの次回は200字詰の原稿用紙20枚です。意外とあります。
今回の課題は「1年間」
ナレーションや文字情報を使用せずに、お話の中で1年経過させなさい、とのことでした。
甲子園を目指す野球少年のお話です。
甲子園とは結構無関係な人生だったため、事実との差があると思います。
野球経験者の方、ファンの方は読んでて違和感があるかもしれません。
もし映像にするなら、少年野球をリサーチして、もう少し長くしたいなと思っています。
野球ファンの皆様、すみません。ご了承ください。
野球のルールは、小学校の時部活でソフトボールを少しやっていたので、その時の記憶を引っ張り出しました。
(球技がてんでダメなので、へたくそすぎて思い出すのが申し訳ないほど)
もう少し感情に焦点を当てたいな、とも思うのだけど、それは紙の時点ではなくて、現場のお仕事なのかな、と最近本とか読んでて思います。
憧れまで、あと3球
人物
三上大志(15)中学3年・野球部
木村宗介(16)高校1年
木村サキ(15)大志の野球部のマネージャー
木村雅代(40)宗介とサキの母
木村勝彦(42)宗介とサキの父
高木万蔵(51)ラーメン屋店主
近藤悟(15)大志と同じ野球部員
実況
◯甲子園球場
満席の観客席。少年達が守備位置についている。全ての塁に走者がいる。
木村宗介(16)がバッターボックスでバットを構えている。
ピッチャーがボールを投げ、宗介が打つ。ボールが大きく弧を描く。
◯ラーメン屋
テレビで甲子園の中継。
冷やし中華を食べている三上大志(15)、近藤悟(15)と男子学生3人。
カウンターの中には高木万蔵(51)。
実況の声「西高1年のルーキー木村、打ちました!逆転サヨナラです!」
沈黙の店内。箸を持ったまま立ち上がる大志。
テレビからサイレン。
大志「…勝った」
大志の顔が段々とほころぶ。
大志「勝ったー!」
◯中学校・屋外プール
プールサイドで掃除をしている高木サキ(15)と学生4人。
大志、叫びながら走ってくる。
大志「サキー!」
サキ「大志、あんたまた掃除サボって」
大志「おいバカ!兄貴の勇姿くらい見とけよ!宗ちゃん勝ったぞー!」
サキ「…うそ!」
大志「じゃ、そういうことなんで!」
走り去る大志。
サキ「…あ!ちょっと大志掃除は?!」
◯高木家・居間(夜)
大志と宗介、木村勝彦(42)が食卓を囲んでいる。
サキが入ってくる。
サキ「ただいま。あれ、大志なんでいんの」
大志、コップを持ち上げ
大志「祝杯をあげに」
呆れ顔で居間を通り越し台所に向かうサキ。
大志「そんでそんで?」
宗介、立ち上がり、バットを振る構え。
宗介「俺はピッチャーの目を見た。それで」
唐揚げの大皿を持って入ってくる木村雅代(40)。
雅代「宗介、もうご飯だから座んなさい」
宗介「はーい」
座る宗介。食卓につくサキ、雅代。
宗介「来週決勝だろ。ちゃんと勝てよ」
大志「あったりまえじゃん」
雅代「推薦がかかってるもんね。大志くん、宗介と一緒に甲子園行くんだって」
大志「おばさん、それ、内緒」
サキ「内緒って、それしか言ってないじゃん」
勝彦「それはがんばらないとな」
笑顔で応える大志。
大志「うん、がんばります」
◯中学校・野球場
キャッチャーの大志を含め、守り側のチームは守備位置についている。
ピッチャーマウンドに近藤。
3塁に走者がいる。
3塁側ベンチにサキが座っている。
キャッチャーマスクを額にずらし、チーム全員を見渡す大志。
大志「しまっていくぞー!」
マスクをおろし、しゃがむ。
バッターボックスに入ってくる少年。
近藤と目を合わせる大志。うなずく近藤。
近藤がボールを投げる。ボールは打者のバットに当たり、1塁と2塁の間を跳ねながらとんでいく。
2塁手がボールを取り損ねる。
キャッチャーミットを開いている大志だが、顔からは諦めの表情が見える。3塁からの走者がホームベースを踏む。
唇を噛む大志。
◯路上(夕方)
サキと大志がうつむき気味に歩いている。大志は泥だらけのユニフォーム姿。
立ち止まる大志。
大志「今日、やっぱやめとく」
数歩先で振り返るサキ。
サキ「え、今日大志の好きなカレーだよ?」
大志「…やめとく」
大志、道路をまじまじと見つめる。
大志「…おれ、野球やめようかな」
しまった、という顔でサキの顔を見る。
大志、方向を変え、来た道を走っていく。
心配そうなサキ。
◯中学校・教室
授業中の教室。窓際の席で外をぼうっと見ている大志。
斜め後ろの席からサキが心配そうに見つめている。
◯中学校・廊下(夕方)
放課後。歩いている大志。
後ろから近藤が追いついてくる。
近藤「よっ、今日森たちとバッティングセンター行くけど大志は?」
大志「あー、えっと」
近藤「引退してから体なまってねえ?オレ、カチカチでさー」
大志「…俺はいいや」
近藤「そっか、また今度な」
近藤、走っていく。
◯路地(夕方)
大志、歩いている。
道端にバッティングセンターの看板。
大志、立ち止まり中を覗く。
近藤と男子学生数人がいるのが見える。
不安そうな大志。また歩き出す。
◯中学校・教室
休み時間の教室。窓際の席でぼうっと外を見ている大志。外の木が落葉するのを見ている。冬服の学ランを着ている。
サキが1枚の紙を持って駆け込んでくる。
紙を大志の机に叩きつけるサキ。
サキ「なにこれ!」
進路希望調査の紙。大志の名前が書いてある以外は第3希望まで全て空欄。
サキ「西高行くんじゃないの?お兄と一緒に甲子園行くんじゃないの?」
大志「西高は難しいんだよ。俺の成績でいけると思ってんの?」
サキ「甲子園は?野球は?」
大志「だからあ、西高に行けなかったら、甲子園も、宗ちゃんとの野球も無理だろ?」
サキ「宗ちゃん宗ちゃんって、あんたはお兄の後を追っかけることしかできないの?だからお兄に勝てないのよ」
大志、立ち上がる。
サキ、ひるむ。
教室を出ていく大志。
サキ、涙をこらえながら大志をにらんでいる。
◯ラーメン屋(夜)
テレビではプロ野球中継が流れている。
カウンターの中で高木がテレビを見ている。
大志がカウンター席でラーメンをすすっている。
扉の開く音。
高木「いらっしゃい」
宗介が入ってくる。
宗介「ラーメンと、餃子」
高木「あいよー」
宗介が大志の横に座る。
宗介「サキとケンカしたんだって?」
大志、むせる。
宗介「野球、やめんだって?」
ニヤニヤする宗介。
大志、むっとする。
宗介「ごめんって。母さんにでっかい声で愚痴ってるからさあ」
高木「あい、餃子、お待ち」
宗介、割り箸を手に取り、割る。
宗介「大志、メシ食ったら3球勝負しようぜ」
大志「はあ?宗ちゃんに勝てるわけ…」
口ごもる大志。
宗介、ニヤリと笑う。
宗介「決まりな」
◯公園・野球場(夜)
野球場に入ってくる宗介と少し遅れて大志。
宗介はボールで遊んでいる。
大志はバットを持ち、震える体をさすっている。
大志「さっみー。宗ちゃん、俺一応受験生なんだけど」
振り返る宗介。
宗介「受験生の前に球児だろ」
ピッチャーマウンドに進み始める宗介。
渋々バッターボックスに向かう大志。
宗介「おまえ、サキがどうして俺の試合見に来なかったか知ってるか?」
大志「…知らねーよ」
宗介「あいつは、大志に連れてってもらうって昔からずーっと言ってんだよ。マンガかよってな。だから兄ちゃんの応援には行かないんだってさ」
大志の少し困惑したような顔。
ピッチャーマウンドに立つ宗介。
バッターボックスに入る大志。
宗介が1球目を投げる。
空振り。
バックネットに当たって転がる球。
大志が拾って宗介に投げ返す。
宗介の2球目。空振り。
転がった球を投げ返す大志。
大志を見据える宗介。
大志、バットを構え直す。
◯甲子園球場
晴れ渡る球場。満席の観客席。応援の声。
全員守備位置についている。ピッチャーマウンドに立つ宗介。汗をぬぐう。バッターボックスに立つのは大志。大志は杉山高校のユニフォームを着ている。
3塁側ベンチに座るサキ。
大志の真剣な眼差し。
大志を見据える宗介。ニヤリと笑う。
大志もニヤリとする。
大志がバットを構える。
宗介が投げる。
おしまい
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