ステップアップ〔本科進級:第1回課題〕
今年の初めからシナリオセンターの通信講座を受講していて、7月に基礎科を修了しました。
ちょっとお休みしてから次の本科に進級しようと思っていたら、思ったより長いことお休みしてしまい、重い腰をあげたのが9月の終わり。
教材も届き、1回目の課題を提出したので、本科も基礎科と同様に添削前のシナリオを掲載していきたいと思います。
本科は200字詰原稿用紙20枚のシナリオを前期(6ヶ月)で10本、後期(6ヶ月)で10本書き上げます。
月に2本の提出が目安。前半の課題1〜7は小道具を使う書き方の勉強。
第1回の課題は「ハンカチ」です。
フレッシュな気持ちでまた半年間、がんばりたいと思います!
添削前のシナリオは現在全文掲載をしていますが、掲載している全ての作品において著作権は放棄していません。
引用される場合は引用元を明記(こちらのページ、もしくは私のツイッターなど)してください。
「映像化したい」と思われた方(ありがとうございます)はご連絡ください。
あの頃みたいに
人物
伊藤由香(16)高校1年
伊藤京(18)由香の姉
瀬戸有沙(16)由香の友人
花沢真子(16)由香の友人
伊藤里子(45)由香の母
伊藤瑞枝(75)由香の祖母
浅井友也(18)宮古の彼氏
○高校・女子トイレ
洗面台で手を洗っている伊藤由香(16)。
隣で口紅を塗っている瀬戸有沙(16)。
有沙「次数学じゃん。今日当たるわ」
由香「有沙数学得意じゃなかった?」
由香、オレンジ色のチェックのハンカチをポケットから出して手をふく。
伊藤京(18)が個室から出てきて手を洗う。京がポケットから出したハンカチは由香と同じオレンジ色のチェック柄。
由香「あ、今日一緒」
言いかけて途中で口をつむぐ由香。京、じろりと由香をにらむ。
有沙「あ、ほんとだ!お揃いじゃん」
京は無視してトイレから出ていく。バツの悪そうな由香。
有沙「何あれ、先輩ヅラして。感じわる」
○病室(夕方)
ベッドから起き上がり座っている伊藤瑞枝(75)。ベッド横の椅子に座った由香と談笑している。
由香のポケットからハンカチがのぞく。
瑞枝「あら、まだそれ使ってるの?」
由香「うん、これお気に入りなの。おばあちゃんが選んでくれたやつ、センスいいから」
瑞枝「それは京ちゃんとオソロだったわね」
由香「うん…そうだね」
瑞枝「あら、またケンカ?」
由香「…まあ、そんなとこ。フクザツなの、高校生って」
瑞枝「しばらく一緒に見てないわね、あんた達のこと」
由香の視線が泳ぐ。
瑞枝「来週の私の誕生日、覚えてる?ちゃんと二人とも来てくれるわよね?」
急いで笑顔を作る由香。
由香「あ、当たり前じゃん。それまでに仲直りしとくよ」
○伊藤家・キッチン(夜)
夕飯の支度をしている伊藤里子(45)。由香が入ってくる。
里子「おかえり、遅かったね」
由香「おばあちゃんとこ行ってきた」
里子「あれ、お姉ちゃんと一緒じゃないの?夕方行くって言ってたけど」
由香「ううん、会わなかったよ?」
里子「…そう」
京が入ってくる。
里子「京、お帰り」
京「ただいま」
京、由香を見る。
京「学校で話しかけんなって言ったじゃん」
由香「…ごめん」
京、キッチンを出て行く。里子、ため息交じりに小さい声で
里子「模試が悪かったんだって」
里子は再び夕飯の支度に取りかかる。
里子「受験生なのに彼氏なんか作っちゃうから」
由香、京が出て行った方を見る。
○路地(朝)
制服姿で歩いている由香と有沙。
花沢真子(16)が後ろから合流する。
真子「おはよう」
由香・有沙(同時に)「おはよう」
三人の前方にバス停があり、ベンチに京が座っている。
バスが到着し、立ち上がる京。バスから浅井知也(18)が降りてくる。
一緒に歩き出す京と浅井。驚く有沙と真子。
真子「え、あれって」
有沙「うわー、浅井先輩、京先輩とかー。ショック」
真子「有沙、浅井先輩の事好きだったの?」
有沙「浅井先輩の事なんてみんな好きでしょ。ねえ由香」
前を歩く京と浅井を見つめる由香。
有沙「由香?」
由香「え、ごめん。なんだっけ」
○高校・1年5組の教室
由香、カバンの中をごそごそ探している。有沙と真子が由香の所へやってくる。
有沙「由香、更衣室行こう」
由香「あー、体操服忘れちゃったみたい。借りてくる」
真子「じゃあ先行ってるね」
○高校・3年1組の教室前
由香、緊張した面持ちで入口に立っている。
通りがかった浅井に話しかける由香。
由香「あの、伊藤先輩いますか?」
浅井「京?今はいないな…あ、帰ってきた」
京、教室に入ろうとするが、由香に気付き、ぎょっとする。
由香「あ、お姉ちゃん」
京が由香をにらむ。由香、しまったという顔。
京「(浅井に)近所の子なの。幼馴染で。(由香に)何?由香ちゃん」
由香、京をしばらく見つめた後
由香「ごめんなさい。やっぱりなんでもない」
○高校・廊下
タオルで汗を拭きながら体操服姿で歩いている由香と真子。
由香の体操服のゼッケンには「山下」と書いてある。
走ってやって来る有沙。
有沙「聞いて聞いて!やっぱり今朝の、ホントだった」
由香「今朝の?」
真子「浅井先輩?」
由香、気まずそう。
有沙「バスケ部の先輩に聞いたら、先月から付き合い始めたんだって」
真子「有沙、本当情報早いなあ」
有沙「でもさー、普通こんな時期に付き合う?今から受験じゃん。京先輩、実際付き合い始めてから成績ガタ落ちらしいよ?」
真子「勉強も手につかない位だったら、本当の恋、かもね」
有沙「えー!なにそれー」
笑いあう有沙と真子。
由香「…違うと思う」
有沙「は?」
由香「そんなの噂でしょ。調子悪い時だってあるじゃん。あの人遅くまで勉強してるよ」
由香を見る有沙と真子。
真子「由香、京先輩と仲良かったっけ…?」
由香、我に返る。
由香「あ、塾…とかで見かけるし」
有沙「…へー、由香、塾とか行ってたんだ!言ってよー」
由香「あ、うん。そうそう、最近通い始めて」
廊下の角で京が会話を聞いている。
○カフェ・テラス席(夕方)
由香が一人で席についている。テーブルの上には、紙袋、メッセージカード、飲みかけのカフェオレが置いてある。
由香は、カードに「おばあちゃん、お誕生日おめでとう」と書いている。
京が店内からトレイに乗ったパフェを持って現れる。京の後ろに浅井。
由香のテーブルの上にパフェを置く京。
突然のことに驚き、見上げる由香。
由香「あ、お姉…」
由香は浅井に気付き、言いかけたのをやめる。
京「おごり。お姉ちゃんの」
由香は浅井をちらちらと気にしながら
由香「え…いいの?」
京「今日だけね。じゃ、私ら今から図書館デートだから」
京、微かに笑いながら去り際に
京「あ、そうだ。明日おばあちゃんとこ行くでしょ。一緒に行こう」
歩いていく京。浅井は由香に軽く会釈して京を追う。
由香、しばらく見送った後、嬉しそうにパフェを食べ始める。
○伊藤家・ダイニング(夜)
誰もいない真っ暗なダイニング。由香が入ってきて電気をつける。
由香「ただいま」
テーブルの上に紙袋とスマホを置く。
スマホが音を立てて震える。着信を知らせる画面には「お姉ちゃん」と表示される。
電話をとる由香。
由香「もしもし」
急いで出ていく由香。
テーブルの上に置かれた紙袋。
○病院・廊下(夜)
長椅子に座っている京。ひとしきり泣いた後だと伺える。
歩いてくる由香。
京、由香に気付くが、また目線を落とす。
由香はゆっくりと京の横に座る。
京、由香にもたれかかる。
○葬儀場・外
タクシーから降りてくる里子、京、由香。
京は急ぎ足の里子を追いかけるが、由香は立ち止まってしまう。
京、由香の所へ戻ってくる。由香の目から涙がぽろぽろとこぼれだす。
京、ポケットからオレンジ色チェック柄のハンカチを差し出す。
京「ほら」
由香がハンカチを受け取り、顔に当てる。
京「行くよ」
京が由香の手を取り、葬儀場の入口へと引っ張っていく。
由香と繋いでいない方の京の手には、同じ柄のハンカチが握りしめられている。
おしまい
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