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文学トリマー 毎週ショートショート
"吾輩は猫である"
これほど洗練された文章はないだろう。
吾輩という一人称からは、それだけでその猫のキャラクタリスティックが連想される。
"私は猫です"
"俺は猫だ"
などとしてしまえば全く違った文学へと変わってしまう。これはプロフェッショナルの文学トリマーが関わったのに違いない。
これまで多くの文学がトリミングされてきたわけだが、この文章もいつかは名も知らぬ文学トリマーによって刈り取られ
祈願上手 毎週ショートショート
なぜ私の願いは叶えられないのだろう。
神様は不平等で差別主義者に違いない。
もし神が全能ならば、私の願いを一度くらい聞き届けてくれてもいいではないか。
信心が足りないと人は言う。
これだけ心から請い願っても成就しないのに、
どうやって信じればいいと言うんだろう。
無条件で信じられる人々の気持ちがわからない。
祈願に得手不得手でもあるというのだろうか?
もしそうならば、なんと不条理なんだろう。
奇岩シューズ 毎週ショートショート
噂に聞く奇妙な岩は山中の特に目立たない場所にあった。
苔むした木々に覆われた静寂の支配する暗がりにぽつねんと鎮座している。
どのようにしてこの地にあるのか、サッパリわからないらしい。確かに自然の産物というよりは恣意的に置かれたという方がしっくりくるのだ。
一枚岩であるにも関わらず、ボコボコと丸っこい突起がそこかしこから飛び出している。誰かが加工したのでなければこんな形状があり得るだろうか?
しか
てるてる坊主のラブレター
このラブレターは届かない
あしたは雨がふるから
このラブレターは届かない
切手をもっていないから
このラブレターは届かない
ぼくが丸めて捨てたから
このラブレターは届かない
きみは文学がきらいだから
このラブレターは届かない
ぼくの心はふくざつだから
このラブレターは届かない
いつだってラブレターは届かないから
このラブレターは届かない
てるてる坊主になったから
だから
3日坊主のクレーター
「青龍さまがでたぞぉぉ!」
村人たちは青龍さまが現れたとされる場所へドタドタと走っていく。
「おらぁ幸運だあ。生きて神様を拝めるとはぁ」
「本当にねぇ」
ブツクサと浮かれている村人たちを制するように、村長は村唯一の坊主を呼んだ。
「おい坊主!噂じゃぁ青龍さまってのはとんでもねぇ神様だと聞いたがどうなんだぁ?おめぇなら知ってるべさ?」
「ええ。そりゃあもう。伝承によれば空から現れた青龍さま