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キャリアコンサルに聞く、近年の求職事情【第35回マスクの向こう側】

<まえがき>いくつになっても働くことが求められるのであれば、できるだけ、好きな仕事、自分に合った仕事をしたいですよね。今回は、キャリア支援に取り組んでいるキャリアコンサルタントにお話をお伺いしました。コロナ前後を挟んで、どんな変化があったのか。これからのキャリア構築には何が必要なのか。重要なのか。ポイントは「早期」「一緒に」だそうです。

●内定をもらう人と、もらえない人は「〇〇」が違う
●面接官が知りたがっているのは優秀かどうかより〇〇な部分
●キャリア構築は本人だけでなく「〇〇」も一緒に

―自己紹介をお願いします。
キャリアコンサルの仕事をしています。以前は、企業側に立った採用支援に取り組んでいましたが、今は独立して、求職者側に立った幅広いキャリア支援事業に取り組んでいます。

―具体的に、どんなことをしているんですか。
一人ひとりが自分に合ったキャリアを送るためのお手伝いです。既に社会に出て働いている方に対しては、キャリア開発や研修事業。これから社会に出ていこうとする方に対しては、就活講座やキャリアカウンセリングなどを行っています。たとえば、「この業界、興味がある」という学生がいたら、その業界で働く大学OBOGを見つけてきて、直接会話できる場をセッティングしたり、学生が書いたエントリーシートに事前に目を通して「こういう風に書いたら魅力が伝わるのでは」などアドバイスしたり。「一億総活躍社会」と言いますが、これからの世の中は、性別や年齢を問わず、ずっと働き続けることを前提としています。できるだけ好きなこと・向いていることを仕事にすることで、長い人生、少しでも楽しく暮らしていけるようになったらいいですね。

―コロナの影響について教えてください。
企業の従業員向けに定期的に行っていた研修事業は、感染リスクを考慮して、3月後半で中止になりました。4月に入ると、就活支援を行っていた大学も休校に入ってしまったため、それも中断してしまいました。4月・5月・6月に関しては、売上ゼロの状態が続いています。リーマンショックの時もそうでしたが、景気の悪化は雇用情勢にも暗い影を落とします。実際、本年度の新卒採用同時期の内定率は前年に比べて10%近く落ち込んだと言われ、来季に関しても、コロナがいつ終息するかが見えないこともあり、多くの企業が「不透明」と消極的な回答を寄せています。私の会社も当面は、苦しい状況が続くのではないかと思っています。

―自粛期間中は、どのようにして過ごしていたのですか。

早い段階で持続化給付金を申請し、それを元手に新商品の開発に着手しました。と言っても、私の会社はメーカーではないので、あくまでもサービス開発ですが(笑)。考えたのは2つです。1つは「より早期のキャリア支援」。もう1つは「親御さんを含めたキャリア支援」です。

―「より早期のキャリア支援」について教えてください。
キャリア教育講座は多くの大学で1年から開催されていますが、就職活動そのものは大学3年生頃から始めるのが普通です。要領よく就活して、早期に内定を得る人もいれば、その一方、同じ時期から始めたのに全然上手くいかず、内定を得られない人もいます。「自己PRが上手い」「企業研究が優れている」などテクニックの良し悪しもありますが、私はそれより重要だと思っているのが“自分がどういう人間で、どういうことがしたくて、どういうことに適性があるのか”自分をしっかり把握できているかどうかです。これがはっきりとしていると、会社選びもスムーズですし、企業の選考でも評価が高くなります。逆にどんなに偏差値が高くても、話が上手でも、自分のことがよく分かっていない人は、就活が難しくなるような気がします。

―具体的に、就活のどの辺でマイナスなのでしょうか。
就活では、エントリーシートの内容を充実させることが欠かせませんが、そういった方の自己アピール欄は大体がアピールになっていない場合が多いですね。「文化祭実行委員の会計を担当した」「地域の持久走大会で入賞した」「茶道部の部長として年間活動の企画」など箇条書きになっているんです。事実を端的に書くのはいいですが、それだけでは、人となりは伝わりません。企業の人事担当者も、エントリーシートや面接で、その人が優秀かどうかを知りたいわけではないんです。それだけなら、成績証明書を見れば足りるわけで、むしろ傍から見てもなかなか分からない、その人が何に喜び、何に怒りを感じ、何を悲しいと思ったのか。一緒に働く上で、その人がどういう人なのか、パーソナルな部分を知りたがっているのです。そういう学生は自分を上手くアピールできない、という点で大きくマイナスだと思います。

―“自分のことがよく分からない”という原因はどこにあるのでしょう。
過去に「自分は何者なのかetc.」きちんと自分と向き合う機会を持っていたかどうかだと思います。きっかけは何でも構いません。たとえば、大学受験もその一つです。みんながみんな、勉強が好きなわけではありません。「何のために勉強するのか」「自分がやりたいことは何なのか」苦悩したり、葛藤したりする人もたくさんいるはずです。でも、だからこそ、その過程で新しく見えてくる自分もいるわけです。しかし、今の時代は、進学率は54.6%にものぼり、希望すれば大体が大学に行ける状況です。「これが勉強したい」「これを深めたい」目標や志を持って進学した人もいる一方、何となく進学してしまった人もいます。昔であれば、こういう人達は高卒で働きに出ていたはずですが、大学進学が一般的になり、その上、AOや推薦入試など様々な入試方法があるため、進学が容易になってしまいました。将来の選択肢を先送りにしている人、何となく進学しちゃった人など自分と向き合ってこなかった人は、自分に対する認識が甘く、やはり就活でも自分を語るのが難しいような気がします。

―「早期」というのは、どれぐらいをイメージしているのですか。
“自分とは何者なのか”という問いかけは、一朝一夕に応えられるものではありません。時間をかけ、試行錯誤しながら、その時々で見つけるものです。当初は大学に入った段階で就活に向けて備えることを考えましたが、それでも遅いような気がして…。たとえば、小学校・中学校など、もっと早い時から「自分はどういうのが好きで、どういうのが向いているのか」将来のキャリアを意識してもいいのではないかと思いました。そうすれば、たとえば“自分は考えたりアイデアを出したりすることが得意だからもっと積極的に活かしてみよう”とか“自分にはここが足りないから、じゃあ、こういうことをしてみよう”という新しい展開も期待できます。また、そこで仮に失敗したとしても、時間をかけて、再チャレンジすることもできるようになるはずです。

―そこに「親御さん」も含めたのは、どういう理由からですか。
今の子供は、昔と違い、親と過ごす時間がとても多く、様々な面で親の影響を受けて育ちます。親が子供の自由意志を尊重していれば問題ありませんが、それが保たれていないと、親の世界観の中で物事を推し量ってしまう恐れもあります。私が過去に担当した学生の中に、一人、とても印象に残っている子がいました。自分が希望する会社から内定をもらったのですが、父親から強行に反対を受け、結局、内定を辞退してしまいました。親思いと言えばそれまでですが、本来、子供のことを一番に理解し、もしくは理解しようと努めているはずの親御さんとキャリアについて意見が一致しないのは、とても不幸なことです。そこで、就活時にそういうことがないように、小学校・中学校の早い段階から、子供だけでなく、親御さんも一緒にキャリアを考える場を作っていくことを思いつきました。

―具体的にどんなサービスを考えているのですか。
親子で「興味・得意分野探し」「それを磨き育てていくための計画作り」「将来の進路や職業選び」ができる講座とワークショップを組み合わせたプログラムを考えています。もちろん、画一的なやり方ではなく、個人のパーソナリティを判断できる「RIACEK(リアセック)」という診断法を活用して、できるだけその人に合ったやり方を提供していくつもりです。子供の可能性が広がるだけでなく、親御さんが「この子は本当はこういうことが好きなんだ」「こんな意外な特技があったのか」など色々発見してもらえると嬉しいですね。どこに導入を働きかけるか、営業先はまだ未定です。これからじっくり考えていきたいですね。

診断はこちらからどうぞ。

RIACEK(リアセック)6つの分類
■[Realistic]現実的
機械や物を対象とする具体的な活動に興味がある
■[Investigative]研究的
研究や調査のような活動に興味がある
■[Artistic]芸術的
音楽、美術、文芸など芸術的な活動に興味がある
■[Social]社会的
人に接したり、奉仕をするような活動に興味がある
■[Enterprising]企業的
企画したり、組織を動かすような活動に興味がある
■[Conventional]慣習的
定まった方式や規則に従って行うような活動に興味がある
  *ホランドの職業選択理論より

―コロナ後の社会で、お勧めのキャリアがあったら教えてください。
希望や適性もありますが、将来的に安定した立場を望むのであれば、理系に進学することを勧めますね。昨年末、新卒向けの就職情報サイトに掲載されている上場企業の求人を調べたところ、文系採用はほぼ全てが締め切られていたのに対し、理系採用はほとんどがまだ開放されていました。最近「理系離れ」という言葉が示す通り、理系学生が減少傾向にありますが、その影響で、どこの企業でも理系人材が不足し、喉から手が出るほど欲しい状況なんです。実際、世界のどの先進国を見ても理系大学生の方が多く目につきます。文系が多いのは日本の大学だけ。世界標準は理系なのです。コロナ後は各所でAI導入や自動化、無人化、ロボットの導入も加速すると考えられますので、より一層、論理的な思考・データ解析など理系的素養のニーズが増すと思われます。

―「算数や数学が嫌い」という子はどうしたらいいでしょうか。
上記したリアセックの分類によれば、[Artistic]芸術的と、 [Social]社会的の2つのタイプは算数や数学が得意ではないようです。ちなみに、私は[Social]社会的です。算数と数学は苦手です(笑)。でも、それ以外のタイプに関しては、「算数・数学嫌い」という子も、時間をかければ、何とかなるのではと考えています。そもそも数学・算数は、国語や英語と違い、地続きの学問です。微分積分が分からなければ、微分積分を勉強するのではなく、その前の段階に戻ってみましょう。そこが分からなければ、更に前に戻る。複雑に絡み合った糸でも、「自分がどこでつまづいているのか」辿っていけば必ず原因は見つかるはず。そこから改めて勉強すれば克服できるはずです。あきらめないで、頑張ってみてください。(Tさん/キャリアコンサルタント)

マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
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可能な限り取材いたします(オンライン・1時間程度)。
※対象者の氏名等、個人情報は基本匿名にします。
【連絡先】
masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp
コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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