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組織風土を変えていくには(1章)コミュニケーションの質と量

経営層の皆さん、新任の管理職の方々、そして組織をより良くしたいという意志を持つ全ての方々へ。未来に向けて、現在、悩んでいる方へ届けてまいります。
この第1章では、「コミュニケーションの質と量」についてお話しします。もちろん、基本的な内容も含まれますが、量と質に関して誤解されがちな点もあるため、改めてお伝えしたいと思います。

コミュニケーションには様々な種類があります。感情や意思、情報を受け取り合い、伝え合うことがコミュニケーションの本質です。「対話」「雑談」「相談」といった言葉によるものだけでなく、「声のトーン」「態度」「表情」といった非言語的な要素も含まれます。コミュニケーションは情報の伝達だけでなく、相手との「関係性」を築くための重要な手段でもあります。この「コミュニケーションの量と質」を向上させることで、組織は大きく変わっていきます。

私は組織開発に携わる中で、コミュニケーションの「質」が重要であると常々感じてきました。しかし、「質」の重要性が十分に伝わらず、「量」だけが求められることが多かったのです。最近になって、まずは一定のルールの下で「量」を確保することが鍵であり、実際には「非言語」の要素が大きな役割を果たすことに気づきました。

約6年前、管理職課長を中心に1,300名を対象に業務量調査を行いました。「価値ある仕事にどれだけ従事しているか」「上司のための社内資料作成などの仕事をしていないか」を可視化するためです。その中で、上司と部下のコミュニケーション時間が思った以上に少なく、「部下育成」に関わる時間がわずか5%しかないという結果が出ました。H社では部下育成に20%以上の時間をかけ、さらに30%を目指していると聞いていました。この数値の差は調査方法の違いもあるかもしれませんが、問題だと感じました。

そこで、私は管理職に対して、単なる雑談ではなく「1on1」を実施することを訴求してきました。しかし、社内では「量」が問題だという認識が広まり、「とにかく月に一回は1on1をやる」という極端な行動が生まれました。回数が重要視され、「やらされ感のある1on1」「傾聴のない一方的な1on1」「部下の成長を目的としない1on1」などが行われるようになりました。これでは意味がなく、「質」を上げる必要があると強調してきましたが、最近ではまずはSTEPがあり「量」を確保することが重要だと認識しています。

「量」を増やすといっても、単に上司から部下に、経営層から管理職へのコミュニケーションを増やせば良いわけではありません。ある種のルールが必要です。例えば、「心理的安全性」を担保した形で行うことが重要です。部下からの自由な意見を尊重し、聴く場を作ることが前提です。自分は自由に意見を言ってもらっていると思っていても、実際にはそうでない場合もあります。エンゲージメントサーベイなどの結果で「関係性」は明らかになります。

自分はできていると思っていても、スコアや項目によってはギャップを感じる結果が出ることもあります。管理職側に問題がない場合でも、会社自体がヒエラルキーが強い、職場が軍隊的な雰囲気を感じさせる場合や、前職の管理職がワンマンなリーダーシップを発揮していた場合、その風土は残っています。

まずは、自由な意見を言える組織にするために、過去のいきさつや風土を踏まえて「手法」を工夫することが重要です。

経営層であれば、「風土を変えていくというビジョンを打ち出す」「メッセージを伝える」「風土やコミュニケーションの課題解決を評価制度に組み込む」といった手段があります。
管理職ができることとしては、チーム内に「課長以外の推進役を置く」「部下目線で本音を聴き出す役割の人を作る」「自らが変わったことを演出する(朝は以前より大きな声で挨拶をする、いつも笑顔でいる、話しかけられたらすぐにノートPCを閉じる)」といったことが考えられます。
組織を良くしたいという想いを持つ社員一人ひとりは、「課長が入らない場でみんなでボトムアップ活動をする」「チームで心理的安全性を高めるための施策を考える」など、様々なことが考えられます。

コミュニケーションが取りやすい環境が整えば、その「量」を増やすことでさらにアイデアが生まれてくるでしょう。ワクワクするようなアイデアが良いかもしれませんね。私もワクワクしてきました(笑)。

「量」を増やすためには、経営層は「タウンホールミーティング」「ランチミーティング」「経営層主催の提案の機会(アイデアソン、改善ミーティングなど)」を定期的に開催することや、職場を笑顔で回りながら話しかけることも良いでしょう。
管理職は「先に自己開示して話し合う環境を作る」「チームのミーティングを楽しい場にする(フリートークを設ける、アイスブレイクを大事にするなど)」「チームのビジョンについてみんなに語ってもらう」など、現状のチームの活動を少し変えることでコミュニケーションの量を増やすことができます。もちろん、非言語の部分の量も増やすような方法が良いかもしれません。
一般職の方も、管理職が前述のことをやるのではなく、主体的に自分からみんなを巻き込んで始めることも考えられます。他の部や課の同僚にも影響を与えるように、一緒に取り組むことも良いでしょう。まずは、こんなことをやろうかなと話し合うだけでもアイデアは広がるでしょう。

最後に、「量」と「質」のバランスについてですが、「部下に寄り添う」「部下の成長のため」という「部下のために、社員のために、どういう関わり方を行うか」という意識があれば、コミュニケーションの「質」はある程度担保されるでしょう。
例えば、より良い1on1をいかに行うかについては「第2章」で詳しく書いていきたいと思います。美味しいお寿司理論、美味しいフレンチ理論についても触れていきますので、お楽しみに♪



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