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渡嘉敷、竹原、畑山、最強は誰か!? 三氏限定パウンドフォーパウンド

ふと、思った。

プロボクシング元世界王者である、渡嘉敷勝男、竹原慎二、畑山隆則の三氏が、現役時代、同一階級に名を連ねていたら、一体どのような勢力図になっていただろうか、と。

現在連名でYouTubeチャンネルをお持ちの三氏だが、現役時代は、階級も、ファイトスタイルもそれぞれ異なっていた。

しかし、よくよく思い返してみると、この三氏はボクサーとして気質が、非常に似ていたような気がする。

対戦相手が誰であろうとビビらない。

誰でもかかってこいや。

俺がぶっ倒してやるよ。

そんな気概・オーラが、身体中から満ち溢れていた。目つきも野獣そのものだった。いや、◯◯◯のそれに近かったかもしれない。

それが今ではどうだ。

当代きってのスーパースター、井上尚弥についてYouTubeで語り始めると「ありゃ勝てね〜よ〜」などと談笑されている。

そのような三氏の姿を目にすると、時の流れを実感すると共に、心の中で「嘘をつけ!」と筆者は思ってしまう。

もちろん、現在はニコニコおじさんになられた三氏が「昔の俺なら井上に勝てた」なんて口にしたら、ただの痛い老害扱いされてしまうだろうし、口が裂けてもそんな事は言えないのだろう、とお察しがつく。

だが、筆者は思う。

現役時代の三氏であれば、たとえ相手が井上尚弥であろうと、ビビることなく、俺とやらせろ、俺が井上を倒してやる、と息巻いていたはずだ。

かつて世界王座に到達した渡嘉敷勝男、竹原慎二、畑山隆則は、そんなギラッギラにギラついたボクサーであった。

この非常に勝ち気、ボクサーにとって最も必要なマインドである「俺様気質」の持ち主であった点で、大変似たタイプであった三氏が、もし同時代に生まれ、同一階級で対戦していたら、その勝敗結果は、どうなっていただろうか?

本noteでは、筆者の妄想内における三氏三つ巴の戦いと、その勝敗を決定づけてみたい。

渡嘉敷、竹原、畑山、三氏限定 パウンドフォーパウンド(体重同一時)最強は誰か!?

いちボクシングファンに過ぎないお前に、渡嘉敷、竹原、畑山の何がわかる?と思われるかもしれないが…

じゃかましい。

お前こそ三氏の何がわかるんじゃい!

渡嘉敷氏に限っては世界王座を奪取されたニュースを微かに憶えている。同世代である竹原氏、畑山氏に関しては、デビュー時から引退までをボクシングファンとして見届けた。

筆者はボクシング関係者でもなければ、記者、ライターでもない。紛れもなく、いちボクシングファンに過ぎない。

だだ、だからこそ好き勝手に書ける。ここでは、その特権・アドバンテージを大いに活用させていただく。

それでは、まずこちらのバトルから。

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☆ WBA世界モウソウ級王座決定三つ巴12回戦

◯竹原慎二 判定12R (3-0) 渡嘉敷勝男●

パンチパーマの男性ファンで埋め尽くされた両国国技館での一騎打ち。

渡嘉敷は無尽蔵のスタミナで、1ラウンドから最終12ラウンドまで、終始一貫、前に出て竹原を苦しめたが、攻撃の幅が乏しく、見た目とは裏腹に、実は意外とスピード重視である竹原のコンビネーションとフットワークの前にかわされてしまった。

竹原としては、韓国のタフな弾丸小僧・李成天との2戦、アルゼンチンの狂った機関車・ホルヘカストロとの合計36ラウンドに及んだ戦いの経験が実を結んだ形となった。あの壮絶な肉弾戦の経験がなければ、勝敗は入れ替わっていたかもしれない。

ただ、試合後に心配されたのは、竹原は勝者であるにも関わらず、渡嘉敷の猛プレッシャーに完全消耗してしまったようで、会見を拒否し、大事をとって病院へ直行してしまった。

一方、15ラウンド制の世界戦を何度も経験してきた渡嘉敷は、竹原の強打をかなり被弾したはずなのに、ケロッとした表情で会見に応じた。あれだけ竹原を追いかけ回したのに、まだ余力が感じられる。20ラウンドでも戦えそうだ。おそらく竹原のアッパーで折られたのだろう。笑った際に見えた歯が随分欠けていた。

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☆ WBA世界モウソウ級王座決定三つ巴12回戦

◯畑山隆則 判定12R (2-0) 渡嘉敷勝男●

さいたまスーパーアリーナは満員御礼。畑山の女性ファンと、渡嘉敷のパンチパーマファンで埋め尽くされた場内は、試合前から異様な空気に包まれた。両雄のファン同士が、そこかしこで、どちらが勝つか言い争いをしているなか、ゴングは鳴らされた。

序盤から中盤にかけては、前後左右に小気味良く動く畑山が、渡嘉敷の猛ラッシュを上手く捌き、時折見栄えの良いコンビネーションを畳み掛ける展開が続いた。

だが、畑山は、自身が前進して相手をロープに詰めている時は抜群の強さを発揮するが、こと相手が執拗に攻め込んでくるラッシャータイプとなると、冷や冷やさせられる。案の定、中盤から渡嘉敷の猛追に守勢に回るシーンが目立った。きっと畑山本人も、崔龍洙との死闘二戦が頭をよぎったはずだ。

中盤、実況席で思わぬハプニング。解説の具志堅用高氏が、ジムの後輩である渡嘉敷を余程勝たせたかったのだろう。渡嘉敷コーナーまで駆け寄り、直接檄を飛ばす一幕があった。

「おい渡嘉敷!おまえ、もうちょっちゅ左右の動きも入れてかないと!ぜんぶ畑山に読まれてるよ!」

先輩の檄に奮起したのか、渡嘉敷は中盤からさらにギアを上げ、畑山にロープを背負わせた。

渡嘉敷の手数か? 或いは、ロープに詰まりながらも見栄えの良かった畑山のコンビネーションか?

渡嘉敷の猛追僅かに及ばず。判定は僅差で畑山。

試合後の会見では、苦戦の原因を「渡嘉敷の石頭のせいだ」と明かした畑山。終盤に手数が減ったのは、拳を痛めたのが影響していたようだ。だが、それも不幸中の幸い。序盤にアクシデントに見舞われていたら、思わぬ大差で渡嘉敷に軍配が上がっていたかもしれない。

一方、渡嘉敷は竹原戦と同様、激戦だったにも関わらず、会見では涼しい顔。「おう畑山、今からもう1試合やってもかまわんぜ?」畑山のアッパーをしこたま被弾したのだろう。笑顔からのぞく前歯は、欠けて殆どなくなっていた。

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☆ WBA世界モウソウ級王座決定三つ巴12回戦

◯畑山隆則 判定12R (3-0) 竹原慎二●

共に難敵・渡嘉敷を下し、三つ巴事実上決勝の舞台に辿り着いた両雄。

決戦の舞台は横浜アリーナ。超満員1万7000人の観衆は、畑山のハイテンションな女性ファンと、スイッチが入らないとなかなか大声を出さない、ボクシング通の男性竹原ファンに二分されていた。

だが、両選手入場から、場内は畑山ファンの黄色い声援がこだまし、竹原にとっては、まるでアウェイに赴いた心地だったに違いない。

両雄と拳を交えたゲスト解説・渡嘉敷が見守るなか、試合開始のゴングは鳴った。

第1ラウンド。ハイスパートなペース争いが展開された。畑山がキビキビと元気良く動き回りプレッシャーをかける。対する竹原も畑山を調子に乗せまいと、速くて長いジャブを繰り出す。

畑山というのは、意外な凡戦を演じたかと思えば、ここ一番になると、妙に戦略や駆け引きに長けた一面を見せる。若干スピードで上回る畑山の動きに、竹原が、やや後手に回ったように見えた。

リングの中心から、畑山が前後左右にステップを踏みながら竹原をロープに詰めようと画策し、竹原はカウンターを打つ素振りを見せ畑山の接近を許さない。そして機を見てサイドステップを踏み、ロープ際から脱する。

畑山は、渡嘉敷のプレッシャーに手を焼いた竹原の姿をよく観察していたのだろう。そもそも畑山自身も、渡嘉敷の前進には大苦戦しているのだ。

相手が嫌がる事、自分がやられたら嫌な事を徹底的にやってやろう。

序盤から中盤は、畑山の明確な戦略が見てとれたが、後手に回った竹原からは、まだこれといったプランが見えてこない。

ただ、あのカストロをダウンさせた竹原のパンチは、やはり迫力がある。畑山を呼び込んだところへワンツースリーで迎え撃つと、その恐ろしい風切り音に、手に汗握る畑山ファンから悲鳴が上がった。ペースを握ったとはいえ、畑山もまったく気が抜けない。

中盤。畑山が左肩を上手く使い、竹原を押すようにロープに詰め、活きの良いコンビネーションを叩き込むと、竹原もそのうち終わりにコンビネーションを返す。だが、やはりどうしても竹原が後手に回ってる感は否めない。

ゲスト解説の渡嘉敷は、気持ちが入り過ぎて、まるで解説になってない。

「どうした竹原? 俺とはもっと打ち合ったろ。行け!男を見せろ!」

7.8.9ラウンド。いよいよ場内のテンションは最高潮に達してきた。おとなしいボクシング通の竹原ファンも、畑山の女性ファンに負けず劣らずの大絶叫だ。

「竹原!左!左ボディーいったれ!」

みんな忘れていないのだ。あの歴戦の強者・カストロをダウンさせたこと、日本人には到底無理だと言われた世界ミドル級王座を奪取したことを。

だが、竹原のあの快挙を一番目に焼き付けたのは畑山だったのかもしれない。竹原の左ボディーや右のビッグパンチを、流れの中で時折被弾するものの、そんなのハナから想定内と言わんばかりに、竹原をロープに押し込んでいく。そしてお返しの連打。

終盤。畑山のコンビネーションの中から突き上げるアッパーに竹原の顔面がたびたび跳ね上がる。それに呼応して、竹原も負けじと重く鋭い連打を打ち返す。

竹原ファンはやきもきしながらも、両雄のパンチの交錯を目の当たりにして感じていた。

畑山って、こんなに打たれ強かったっけ?

そして大歓声のなか、

試合終了。

結果は意外?と言っては、両雄に失礼千万なのは承知の上だが、スコアシートは明白な畑山勝利を支持していた。終始先手を取り、竹原をロープ際まで押し込んだ戦略が功を奏した。

一見華やかな畑山の戦績ではあるが、実は渡嘉敷や竹原よりも、一番苦い経験が多い。

ドローによる王座獲得失敗、猛ファイター相手に大苦戦、思わぬ伏兵にダウン、そしてこっぴどいKO負け。

それらの経験値の差が、この三つ巴バトルを制する結果に繋がったのではないだろうか? 竹原にプレッシャーを与えつつも、致命傷となるパンチだけは芯で被弾しないよう、細心の注意を払っていたように筆者の目には映った。

リング上で勝利者インタビューに答える畑山の声が響き渡るなか、ガウンのフードを目ぶかに被った竹原が花道を引き上げていく。

実況席の渡嘉敷が、生中継の段取りなどそっちのけで、竹原の背中に向かって叫んでいた。

「竹原!もう一度俺とやれ!そして生き残ったほうが、畑山に挑戦しようじゃねえか!」

いかがだっただろうか?

今宵の筆者のテンションでは、畑山隆則氏が三つ巴戦を制し、三氏限定パウンドフォーパウンド最強の座を射止めた…という妄想結果に落ち着いた。

が、

別の日にキーボードを叩けば、また違った結果になる事も十分考えられる。

なぜなら、竹原慎二氏というのは、対戦相手が誰であろうが、常に「竹原なら」という希望を抱かせてくれるボクサーだったからである。それこそ、同じミドル級の現役王者である、あの村田諒太選手が相手であっても、全盛期の竹原なら、何かやってくれるかもしれないといった期待感が頭から離れない。

また、渡嘉敷勝男氏の類稀な精神力とスタミナ、打たれ強さも尋常ではなかった。ボクシング史を紐解いてみても、イラリオサパタVS張正九、エドウィンロサリオVSホセルイスラミレス、ロレンソパーラVS坂田健史のように、前戦で大苦戦の末に挑戦者を退けた王者が、リターンマッチで再び挑戦者の根性とスタミナに手を焼き、あっさりギブアップして王座を手放すなんて事もたびたび起こってきたのだ。竹原氏、畑山氏とのリターンマッチに漕ぎつけた渡嘉敷氏が、そんな我慢比べの「延長戦」を制する可能性も十分に考えられる。

妄想は、

止まらない。止められない。

これはファンの特権である。

現在48歳である筆者が十代の頃など、ボクシング誌のパウンドフォーパウンドランキングでは、白黒フィルム時代の伝説的王者、拳聖シュガーレイロビンソンが上位の常連であった。(現在でも「最高」というカテゴリーではロビンソンが上位と思われる)

一体ボクシング誌は、いつまで白黒時代の選手を最強に推すのだろうかと、当時は辟易していたが、今ならそういった意見も理解できる。

ランキングの選定者自身が見てきた中で、最もインパクトを受けた選手に最強の称号を与えるのは、至極当たり前の事なのだ。

現代の日本のボクサーや現役王者は、30年前のボクサーと比べても格段に技術が向上している、と思う。食えない素人の意見として聞き流して欲しいが、個人的には、攻撃技術よりもディフェンス技術が飛躍的進歩を遂げたことにより、スマートで息の長い選手が増えたと捉えている。

では、井上尚弥と、現役時代の渡嘉敷、竹原、畑山の三氏が、時空と階級の壁を超えて激突したら、一体どうなるだろうか?

常識的に考えれば、間違いなく井上尚弥が勝つだろう。

だが、やはり三氏の現役時代の鋭くギラついた眼光を記憶している筆者などは、世代的に、どうしても、三氏なら井上尚弥が相手であっても、ひと泡吹かせてくれるのではないかという希望を捨てきれないのである。

止まらない。

そろそろキーボードから手を離そう。

コロナの脅威も終息の兆しを見せ始めている。

こうした議論は、ボクシングファン同志たちと共に、居酒屋で酒でも酌み交わしながら、朝までやるべきだ。

それでは、

ひとまずこれにて。

おやすみなさい。

寝れるかな…?

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