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将門を祀る?麻布氷川神社(港区)

 都営地下鉄大江戸線の麻布十番駅で降りた。ここへ来るのは三十数年ぶり(!)あのころ麻布十番は鉄道の駅が周辺に無く、都会にありながら陸の孤島なんて言われていた。前回来た時も、広尾の駅から歩いた。あの時は広尾から芝まで東西を突っ切る長距離散歩を母と一緒にしたのだった。

 駅から地上に出ると十番稲荷の横に出た。道を渡って六本木ヒルズの見える方向へ歩く。二つ目の信号、鳥居坂下で左に折れて暗闇坂に入る。この辺りは坂だらけだ。下ったと思ったらすぐに上り坂になる。


鳥居坂下の交差点を左に曲がると
急な下り坂になる
暗闇坂
昔は木がうっそうと生茂り、暗くて寂しい道だったのだろう
この先がカーブになっており、一層見通しが効かない道だった

 暗闇坂の先は三方向に別れていて、狸坂、一本松坂、大黒坂がある。私は真ん中の一本松坂を進む。

 この辺りは大使館が多い地区だ。暗闇坂にはオーストリア大使館。一本松坂にはアルゼンチン大使館がある。インターナショナルスクールも一歩松坂にある。基本的に住宅街だが一軒家よりマンションの方が目に付く。元麻布ヒルズの高層マンションが目を引く。

元麻布ヒルズ

 一本松坂は名の通り一本の松が生えている。実はかつてこの松の前に氷川神社があったのだ。

一本松
暗闇坂から一本松坂に入る場所にある
一本松坂と一本松

 一本松の根元の碑文によると、天慶二年[939]ごろ、六孫源経基は平将門を征伏の途上、ここにあった民家に一泊したという。翌日出立するときに、冠装束をこの松の枝にかけて行ったので、この松を冠の松と云った。

 天慶五年[942]に、経基によってここに氷川神社が創建されたのだという。将門の乱の平定後ということになる。
 また、文明年間[1469~1487]に太田道灌によって社殿が建てられた。(創建したという説もあり)

一本松の根元の石碑

 江戸時代に所領の一部が増上寺の寺領になったため、現在の場所に遷座した。万治二年[1659]のことだ。

 一本松から坂道を少し登ったところ、アルゼンチン大使館のはす向かいに氷川神社がある。
 祭神は素戔嗚尊と日本武尊。

郷社氷川神社の文字は尾張徳川家の
徳川義親侯爵の書

 氷川神社は埼玉県の大宮にある武蔵一之宮が代表的な社で、荒川流域に多いそうだ。素戔嗚尊は出雲系の神だが、関東ではなぜか氷川神社に祀られている。氷川という名称にはいろいろな説があるそうで、つまりなぜヒカワというのか、なぜそれが素戔嗚尊を祀る神社になったのかよくわからないようだ。

摂社の稲荷神社
高尾、應恭稲荷を祀る。仙台藩下屋敷にゆかりのあるお稲荷さんだとか
他に毘沙門天を祀る
港七福神の一つ 

 神社の南側(つまり社の正面)は崖地になっている。一本松坂を上り切ったところに社があるわけだ。崖の下を覗いてみると、下は墓地だった。実は周辺は寺が多い。江戸時代はがけ下に竹林があり、見晴らしもよく鶯の名所だったとか。

神楽殿と神輿蔵

 平成四年[1992]、東映アニメーション制作の「美少女戦士セーラームーン」で、この神社がセーラー戦士の一人火野レイ(セーラーマーズ)の実家の火川神社のロケ地になったことで、アニメファンに知られるようになった。

セーラーマーズ火野レイ


 アニメの聖地になったことで、今でもそれを目当てに参拝する人もいるとか。
 私が訪れたときも、外国人のカップルが写真を撮っていたが、セーラームーンが目当てかどうかは不明。
 三日月が描かれた丸い絵馬もあるよ。


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