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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを後悔する事に意味を感じ公開します。
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#母

母と紫陽花

母と紫陽花

(母:生前)

天気予報より雨が遅れたみたい。

蒸し蒸しして、時折、小さな雨がポツリポツリと車の窓ガラスに跡をつけたけど、

帰宅まで、何とか持った。

明日から終日雨って予報。

今日も病院ツアー。(四ヶ所だから、ツアーとでも書かなきゃやってられんっ笑〉

母は少し顔色良し。元々真っ白な綺麗な肌の母が、手術後、免疫低下か薬の副作用か、

痛々しく荒れて色も蒼白になってたけど

ボチボチ、状態回

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七つのお祝い:母思ふ

七つのお祝い:母思ふ

着道楽だった我が母は

当事、裕福だったこともあり

馴染みの呉服屋から定期的に和服を購入

部屋中に広がった色彩の洪水に

子ども心に胸ときめかしたことを

覚えております

桐の箱に(多分)入った着物や帯を

美貌の母は目を細め乙女のような嬌声あげて

テーブルいっぱいに広げられたそれらを手に取り

見惚れておりました

幼稚園、年長の6歳ーわたしの数えで七つのお祝いに

母が選んだものは

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ただそれだけが嬉しくて

ただそれだけが嬉しくて

母は喋ることも忘れつつあるのか、とみに無口になった。

栄養士さんとの面談。三ヶ月更新、状況報告あり。食べる量が減っていますとのこと。

前は80%は食べていたのが、60%、体重も急に5キロ落ちた。

なのに~クダンの医師め!母に間食させるなと?

BMIがどうだってのさ。そもそも、母の身長からして計算ミスでしょ。

母は165センチあったのだ。多少、縮んだにせよ・・背中の湾曲で145センチって計

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雛あられ、母が食べた

雛あられ、母が食べた

母が大好きな千鳥屋のカステラと、ふと目に留まった可愛らしい雛あられを買い、

僅かな時間、ホームに寄って戻る。

カステラは、口に含むも吐き出す。嚥下が困難になっているのか?と嘆くも、

突如、袋開き、「うわ~~可愛い、美味しい!」と、雛あられを音立てて食べた母。

色とりどりの小さなあられを無心に笑顔で口に運ぶ母。

ああ、嬉しい!

「ホントにお前は子どもになってしもうたのぅ」と・・苦笑しつつ

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華のかんばせ

華のかんばせ

突出した

誰もが振りかえらずに居られない

美しき かんばせ

どの場面、

どの人込みにも燦然と輝く圧倒的なる

美しき かんばせ

凡庸なる

むしろ弱き性もつ かの人の憐れなるかな

美しき かんばせ

目立たずに密やかに

溶け込み

ただ紛れ込めたなら

年を重ねる毎に

かの人の悲嘆の石は裡に積み上がらずに

済んだでありませうに

嗚呼

我が母よ

その美しきかんばせの

瞳は今

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母:回想

母:回想

”お母さん、お誕生日おめでとう!

ぇっと・・何歳になったんだっけ?”

「38歳よ。

わたしは、38歳から年を取らないの。」

遠い昔の記憶、母の名言。

洋装も和装も似合った母の並外れた美貌。

小中学校の保護者会、校長先生筆頭に男性教師達が色めき立ち

母を観に来ていたと、後に知る。

そんな騒動を・・我が兄は恥じ入っていたのだった。
#フォトギャラリー
昨日ホームで見た母の明朗さ、思い

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認知症の母;愚考つれづれ

認知症の母;愚考つれづれ

とある小説を読み、ある情景に我が身を重ねてしまった。

老いたヒロインが、それ以上に老いた認知症の母を見舞う日々。
母は動けず言葉も発せず、13年もベッドに横たわっている。それでもヒロインは
母を見舞い続けるのだ。

あるとき、老いた母が突然、虚空に白い腕を伸ばし、何やら掴もうとする。
”何か”ではなく、”誰か”の手を捜しているのだと、ヒロインは察知し母の手を自分の両の手で包み込む。

母の口から

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