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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを後悔する事に意味を感じ公開します。
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2024年2月の記事一覧

華のかんばせ

華のかんばせ

突出した

誰もが振りかえらずに居られない

美しき かんばせ

どの場面、

どの人込みにも燦然と輝く圧倒的なる

美しき かんばせ

凡庸なる

むしろ弱き性もつ かの人の憐れなるかな

美しき かんばせ

目立たずに密やかに

溶け込み

ただ紛れ込めたなら

年を重ねる毎に

かの人の悲嘆の石は裡に積み上がらずに

済んだでありませうに

嗚呼

我が母よ

その美しきかんばせの

瞳は今

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母:回想

母:回想

”お母さん、お誕生日おめでとう!

ぇっと・・何歳になったんだっけ?”

「38歳よ。

わたしは、38歳から年を取らないの。」

遠い昔の記憶、母の名言。

洋装も和装も似合った母の並外れた美貌。

小中学校の保護者会、校長先生筆頭に男性教師達が色めき立ち

母を観に来ていたと、後に知る。

そんな騒動を・・我が兄は恥じ入っていたのだった。
#フォトギャラリー
昨日ホームで見た母の明朗さ、思い

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父;覚書

父;覚書

積乱雲を見ると

わたしは、父思い父に畏怖し父に焦がれた

既に巨大な体躯は見る影もなく

半分ほどの痩躯となりし父の

そのぎょろりとした眼を見出すとき

あぁ、まだ父は父なのだ、と思うのだ。

認知症の母;愚考つれづれ

認知症の母;愚考つれづれ

とある小説を読み、ある情景に我が身を重ねてしまった。

老いたヒロインが、それ以上に老いた認知症の母を見舞う日々。
母は動けず言葉も発せず、13年もベッドに横たわっている。それでもヒロインは
母を見舞い続けるのだ。

あるとき、老いた母が突然、虚空に白い腕を伸ばし、何やら掴もうとする。
”何か”ではなく、”誰か”の手を捜しているのだと、ヒロインは察知し母の手を自分の両の手で包み込む。

母の口から

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