「きみのお金は誰のため」を読んで
自己紹介で読書が趣味ですと書いていますが、ここ最近の中ですごく印象に残る1冊と出会ったのでブックレビュー的に書き残しておこうと思います。ちょうどnoteで本紹介や自分の読書感想を早く書いてみようとも思ってたので。
その本は「きみのお金は誰のため 田内学著」です。
この本のジャンルとしてはビジネス書で、読者が選ぶビジネス書グランプリ2024総合グランプリ1位となっています。しばらく私の机の上で積読でしたが、書店でそれを見て早く読もう!と思って読みました。
ビジネス書ですが、お金を儲けるための方法や賢くお金を増やす方法はこの本に一切、書かれていません。それは本の冒頭でも言われます。
なので、そういったノウハウを求めて読むと期待外れな本かもしれません。
ですが、気づきは必ず与えてくれます。なぜ、私たちはこの社会で生きられているのか、なぜ働いているのか、そして未来は自分で選ぶことができるのだということを気づかせてくれたと思います。
本の概要
一応、本の紹介も兼ねて概要を私なりの解釈で書きますが、ぜひ実際に本を読んでください。ストーリーとしてもきれいな構成で読みやすく、夢中になります。
3つの謎
主人公は男子中学生です。その子がひょんなきっかけでボスと呼ばれる人から投資会社で働く女性とともにお金について学ぶことになります。
そして、最初にボスからお金の正体、真実として3つのこと告げられます。
きっとこの3つは直観に反するまちがいのように見えます。主人公も疑います。なので、この3つの謎(真実)を紐解くことで物語の前半部分は進みます。
それぞれどういう意味なのかは書きませんが、どれもなるほど…と思います。ただ、ここまで読んだだけでは少し納得できない感覚も残ります。それは後半にかけてクリアになります。
未来をつくるということ
ちなみにボスは投資家です。でも、なぜボスは投資をしているのか、投資はなんのためにするのかについての話が後半のキーポイントになります。
ボスのこの言葉。
投資は未来への提案。
単なるお金儲けのためではなく、未来をつくっていくために投資をしている。それが巡り巡って自分の生きている社会の未来をつくっているんだと思います。
さらに、未来をつくるのは投資だけに限った話ではないと言います。
未来をつくる権利は1人1人にあって、それは日常的な些細な経済への参加によって行われている。私たちは意外とこれを忘れているんだろうなと思います。
よくSDGsの話でも、賢く消費しましょうとか、ちゃんと選んで製品を選びましょうと言われますが、きっとそれはこういうことなんだろうと納得しました。
愛をもつこと
ストーリーの終盤にかけて「愛」という言葉が出てきます。
経済、お金の話をしてきて最後は「愛」。私は納得できました。
というこの問いの答えの1つとして「愛」が出てきます。
「すべては、やっぱり愛だ」なんて言うと胡散臭いかもしれません。でも、ここまでのストーリーを読むと妙な納得感と感動さえ感じました。
私的感想
経済について語られるとき、資本主義を筆頭にいろいろな強そうな言葉が並ぶことが多いような気がします。そして、その資本主義が限界となれば新しい資本主義とか、脱成長とか、また次の強そうな言葉がラインナップに追加されていきます。
そうして、よく分からないけどいかにも正しそうで強そうな言葉がたくさんあるから、結果的に「お金が絶対なんだ」と人は思うのではないでしょうか。
きっと、私はそのことにずっと違和感というか、なにか腑に落ちないモヤモヤを感じていたんだと思います。
“お金”が大事なんじゃない。
そのお金の向こうにいる人々が大事であり、その人々はつながりあって助け合って、互いに支え合っている。それによって社会は成り立っていて、生活が成り立っているというシンプルな事実。
「これだ。」と思いました。
だれかの仕事はだれかの幸せにつながっていて、そのだれかの仕事がまただれかの生活を成り立たせている。決してきれいごと的な決まり文句ではなく、実感として持つことで“ぼくたち”の範囲は広がっていくのだと思います。
私たちは1人で生きているのではない。たくさんのだれかとつながりあって、支え合って社会をつくって、生活しているということを大切に覚えておかなければいけないと思いました。
たしかに、今日明日を生きる上でお金は絶対的に必要です。なるべく多くあった方がいいかもしれません。だから、この本で書かれていることは現実から離れているのかもしれません。今を生きることが精一杯な人にとっては、特にそうだと思います。何の解決策も提示できていないと。
でも、たとえ少しずつでも“ぼくたち”が広がっていった社会をみんなでつくっていく、それはつまり、だれもが“お金の奴隷”から解放されて自分1人で生きているのではないと思える社会にしていく。きっとそれが最も根本的で、かつ最も力強い解決策だと感じます。それは決して遠い未来ではなく、非現実的な妄想ではなく、ほんの少しみんなで世界の見方を変えればいいだけだと思います。
“ぼくたち”が広がった社会は、きっと多様性が満ちた社会なんだろうと希望がもてました。
ビジネス書ではありますが、中高生もふくめすべての人に何かしらの気づきを与えてくれる1冊のはずです。
この本になんとか主義とか、理論とか、専門用語とかそういう強そうな言葉は出てきません。(いや、出てくるには出てきますが、この本で伝えようとしていることに、そうした言葉を使った説明は要らないという意味です)
だからこその説得力があるんだと思います。強そうな言葉に強そうな言葉で返すのではなく、すべてを受け止めてそっと語るという柔らかさが、この本が示してくれる“本当の強さ”であり、お金の奴隷になることへの抵抗力になるはずです。
今回も長い文章をお読みいただきありがとうございました。
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