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未来の歴史上の人物達よ

小学生の時にひどく視力を落とした。
 
原因はこちらの書物にある。

歴史漫画である。
 
夜な夜な、僕は布団に潜り込み
小さい灯りで照らして読んでいた。
 
何かを学ぼう。という気概は全くない。
 
物語を楽しんでいたのだ。
 
ほぼ、内容は忘れている。
 
ただ、振り返ると、一枚の絵が浮かんだ。
 
その人の背景にはお月様が輝いていた。
 
血を吐き、痩せほそり、生涯を閉じながら。
 
瀧廉太郎だ。享年 23歳。
 
荒城の月を作った天才作曲者。
 
絵に物語が映し出されていた。
 
人生は儚い。

天上影は変わらねど
栄枯(えいこ)は移る世の姿
映(うつ)さんとてか今も尚
ああ荒城の夜半の月

荒城の月

作曲:瀧廉太郎
歌詞:土井晩翠

歴史上の人物とは何者か?
 
個人の意見で、曖昧な定義であるが

国家や文明などを含む、人間社会に対して
影響を与え、語り継がれる人物。だとする。
 
与えた影響度の大小によって
判断されているように思う。
 
歴史上の人物と見做される為の
席の数には限りがあるのだろうか?
 
僕は、あると思う。
 
全世界の人間の数に起因して
語り継がれる数には限りがあるはず。
 
僕の読んだ漫画の中にいた歴史上の人物は
もう誰かと入れ替わっているかもしれない。
 
あくまで語り継がれる
歴史上の人物の話だ。
 
人間は何らかの形で社会と関わり
小さくとも影響しあっていると思う。
 
語り継がれることはないかもしれないが
誰でも微かな影響を与えているはずだ。

だからこそ、全ての人間は死んだ後には
歴史上の人物の一人になると考えている。
 
忘れ去られる歴史上の人物。
 
夢がない。
 
唯、歴史上の人物にはなるのだ。

人間は忘れていくのが、習わしだ。
 
ただ、習わしに争う本能があるように思える。
 
忘れられたくない、という本能だ。
 
人の武勇伝を聞くのが好きだ。
 
武勇伝は、その人の人生の一部。物語だ。
 
その物語を当人が活き活きと話しているのだ。
 
面白くないわけがない。
 
たまに物語の質や話者の器量によって
面白くないと感じてしまう場合もある。
 
そんな時は、相槌と返答に工夫を凝らして
面白い物語になるよう、仕掛けていきたい。
 
話を戻すと、僕は武勇伝を語る事は
 
忘れてほしくない、自身を覚えていてほしい
 
本能から突き動かされた表現だと思う。
 
人生の物語を声で表現したものが、武勇伝。
 
如何にも物事を俯瞰で見えているように
書いているが、僕の主観にすぎない。
 
僕はこの本能を感じたことがある。
 
とある朝礼で、日記をテーマに話した。
 
その中のスライドがこちらだ。


何で書くん?と聞かれて、話したこと。※ニッカー=日記を書く人

高校生の時、感情の波が激しかった。
 
だから、先生に提出する部活ノートとは別に
感情を吐き出す、裏垢ノートを書いていた。
 
何て事だ。
 
誤って、裏垢部活ノートを先生に提出した。
 
皆にばれて、咄嗟に出た言葉が「」の中だ。
 
少なからず、自身を記しておきたい。
 
世界から、忘れられないように。
 
そんな感情があったのだろう。
 
準備なしに発する言葉は本音を表す。
 
あまり選びたくない言葉であるが、遺書も
その本能の断片なのではと思ってしまう。

荒城の月にあるように世には習わしがある。
 
死後、己が存在した軌跡は、変わらぬ空の下
ゆらゆら、灯ったり、または消えるのだろう。
 
唯、我々は歴史を生きていることは事実だ。
 
人間は地球上で唯一はるか遠い未来を思い
行動することの出来る動物だと思う。
 
残す事。
 
忘れてほしくない、という本能を力に
後世に影響を与える唯一の手段である。

手段は問わない。
 
誰かが、泣いて笑っているかもしれない。
すぐに、忘れられているのかもしれない。
 
どちらでも、良いじゃないか。
 
知る由がない。存在しないのだから。
 
人生は物語だ。紡がれ続けている。
 
未来の歴史上の人物達よ。
 
生きろ、残せ、物語を。
 
見る事のない未来の為に。

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