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『素晴らしき哉、人生!』:1946、アメリカ

 クリスマスの夜、ベッドフォード・フォールズの町民たちは、「ジョージ・ベイリーを助けて下さい」と神に祈っていた。天国のイエスは、ヨゼフからジョージを救いたいと望む人々の祈りについて知らされる。そこでイエスは二級天使のクラレンスを呼び寄せ、今夜10時54分に自殺しようとするジョージを救うよう指示した。
 イエスはクラレンスに、成功すれば翼を与えると約束した。すぐにクラレンスは地上へ向かおうとするが、イエスとヨセフは「まず予備知識が必要だ」とジョージの人生を見せることにした。

 1919年、12歳のジョージは仲間たちと共に、氷の張った池でソリ遊びをしていた。氷が割れて弟のハリーが池に落下するが、ジョージが救出した。その際、彼は左耳の聴覚を失った。
 ジョージはガウワーの営む薬局でアルバイトをしていた。店にはジョージに好意を寄せるメアリーとヴァイオレットが遊びに来た。ジョージはメアリーに、大人になったら世界を旅したいという夢を語った。メアリーはジョージの聞こえない左耳に顔を近付け、「貴方が好きよ」と囁いた。

 ガウワーは機嫌が悪そうだったが、ジョージは彼が流感で息子を亡くしたことを知った。ジョージはガウワーから、調合した薬を届けるよう指示された。ジョージは薬を間違っていると察したが、ガウワーが急かすので店を出た。
 困ったジョージは、住宅ローン会社を営む父のピーターに相談しようと考えた。会社に行くと、町の大物であるポッターが来ていた。ポッターから「借り手に圧力を掛けて金を取り立てろ。失業した奴なら家を追い出せ」と迫られていた。無慈悲なポッターの要求に、ピーターは断固として反対した。

 多忙な父に「後で話そう」と言われたため、ジョージは薬局に戻った。薬が届いていないという連絡を受けたガウワーは、戻ったジョージを見て「この怠け者が」と殴り付けた。ジョージは彼に、「薬を間違えていたんです。これは劇薬なんです。でも言い出せなくて」と釈明した。
 自分の過ちを知ったガウワーは驚愕し、怯えるジョージを済まなそうに抱き締めた。ジョージは「このことは誰にも言いません」と告げ、その約束を守った。

 やがてジョージは成長し、高校卒業から4年を費やして大学へ行くための資金を貯めた。進学の前にヨーロッパ旅行へ行こうと決めたジョージは、ガウワーから旅行鞄をプレゼントされた。それはハリーが高校を卒業した日だった。
 ジョージは父から、ハリーを大学へ進学させたがっていることを聞かされた。「お前は大学を出たら、どうする?」と訊かれたジョージは、「建築の仕事に就きたい」と答えた。「将来的に後を継ぐ気は無いか」と問われた彼は、「地味に稼ぐのは性に合わないよ」と告げた。

 ジョージが「有意義な仕事がしたい」と言うと、ピーターは「住宅ローンの仕事も有意義だぞ」と述べる。ジョージが「分かってるけど、僕が学費を溜める間に、大半の友人は大学を卒業した。もう耐えられないんだ」と語ると、ピーターは「お前の言う通りだ。この町はポッターに牛耳られてる。お前は町を出て、自分の道を進め」と述べた。
 ジョージが高校の卒業パーティーに参加すると、先に大学を出た友人のバートが来ていた。そこにヴァイオレットも姿を見せ、ジョージと挨拶を交わした。

 ジョージは友人のマーティーから、妹のメアリーと踊ってやってほしいと頼まれた。「子守は御免だよ」と渋ったジョージだが、成長したメアリーの美しさに見とれた。
 2人が踊っていると、メアリーに好意を寄せるサムが嫉妬心を抱いた。彼はフロアを開いて下に設置されているプールを開き、嫌がらせをしようとする。しかしプールに落下したジョージとメアリーは踊り続け、他の面々も後に続いた。

 パーティーの帰り、ジョージとメアリーは幽霊屋敷と呼ばれているグランヴィル・ハウスの前を通り掛かった。メアリーが屋敷に住みたいという憧れを口にしたので、ジョージは驚いた。ジョージは彼女に、「町を出て世界を旅行する。そして大学へ行って、建築家になる」という夢を語った。
 2人の様子を見ていた住人は、キスするようジョージに促した。いい雰囲気になった2人だが、そこへジョージの叔父であるビリーがやって来た。ピーターが発作を起こしたことを知らされたジョージは、デートを切り上げて家へ向かった。

 ピーターの死を受け、ジョージは会社の仕事を手伝った。3ヶ月後、ビリーたちは理事会を開いて社長の後任を決めようとした。すると会議に出席していたポッターが、「後継者は要らない。資産は全て管財人に委ね、会社を解散すべきだ」と主張した。
 彼は理想主義だったピーターを扱き下ろし、「怠け者でギャンブル好きなタクシー運転手のアーニーへの融資を銀行は断ったのに、彼は家を建ててやった」と語った。ジョージは「父は25年も損得抜きで会社をやって来た。大事なのは顧客の幸せを願えるかどうかです。労働者階級が家を持とうとするのは間違いですか。貴方は守銭奴だ」と激しく反発した。

 ジョージはビリーに促され、大学へ行くために出発しようとする。だが、動議の採決が気になるジョージは、出発を遅らせた。会社は存続が決定するが、ジョージの社長就任が条件として付けられていた。
 迷った末に、ジョージは大学へ行くことを諦めて社長の座を継いだ。彼は自分の代わりに、ハリーを大学へ行かせた。ハリーは大学でフットボールのスター選手になった。ジョージはハリーの大学卒業を待って、会社を継いでもらおうと考えていた。

 大学を卒業したハリーが帰って来る日、ジョージは建築技師になる夢をビリーに語った。汽車を降りてきたハリーは、ルースという結婚相手と一緒だった。ジョージはルースから、ガラス工場を営む彼女の父がハリーを入社させたがっていることを聞かされた。
 悩んでいるジョージの様子を見た母は、「メアリーが休暇で3日前に戻って来たわ。どうして電話しないの?」と話し掛ける。ジョージが「サムに悪い。あいつは彼女に夢中だ」と言うと、母は「でもメアリーは関心よ」と告げた。

 町に出たジョージはヴァイオレットと遭遇し、「遊びに行かないか」と誘う。ヴァイオレットはOKするが、ジョージが「裸足で草原を歩こう」などと話すと呆れたような態度を取った。ジョージは「やっぱりいいよ」とデートをキャンセルし、メアリーの家へ向かう。
 彼が家の前を歩いていると、メアリーが声を掛けて来た。ジョージが苛立ちをメアリーにぶつけたせいで険悪な雰囲気になってしまい、彼は家を去ろうとする。しかしサムからの電話がきっかけで、彼は正直な気持ちを表現し、メアリーに愛を伝えた。

 ジョージはメアリーと結婚し、新婚旅行に出掛けようとする。アーニーのタクシーで空港へ向かう途中、ジョージは銀行に大勢の人々が押し寄せている様子を目撃した。異変を感じたジョージはタクシーを降り、急いで会社に向かった。するとビリーはジョージに、「銀行が1時間前に返済を要求して来たので、有り金を吐き出した」と明かした。
 銀行を乗っ取ったポッターはジョージに電話を掛け、『株券を買ってやる。今日を乗り切らないと破産だぞ」と告げる。しかしジョージは、「乗っ取ろうとしても無駄だ」と突っぱねた。

 ジョージは会社に押し寄せた人々から、払い戻しを求められる。「ここは銀行じゃない。お金は無い」とジョージが説明しても、人々は納得しない。そこでジョージは、「書類にサインをしてくれ。60日後に支払う。そういう規約だ」と説明した。
 ポッターが株券を買ってくれると知った人々が銀行へ行こうとするので、ジョージは「ポッターは、この会社を乗っ取るつもりだ。彼は支払いが滞っても待ってくれない。考え直してくれ」と説く。しかし当面の金が必要な人々は、銀行に頼ろうとした。するとメアリーが「幾ら必要なの?」と言い、新婚旅行のための2000ドルを掲げた。ジョージは人々に対応し、銀行再開までに必要な金を貸し出した。

 やがてジョージは草原を開拓し、「ベイリー・パーク」という住宅地を設けた。好条件で自分の家が持てるため、ポッターズ・フィールドの賃借人たちが次々にベイリー・パークへ移住した。ジョージが目障りなポッターは、「年俸2万ドルでウチの会社に来ないか。経営と資産管理を任せたい」と持ち掛けた。
 大きなチャンスだと考えたジョージは迷いを見せるが、すぐに思い直して断った。帰宅したジョージは、夢を一つも叶えられていないことを実感して落ち込んだ。しかしメアリーから妊娠を聞かされ、大喜びした。

 ポッターの圧力が強くなる中、ジョージは夜遅くまで働いた。やがて戦争が始まり、ジョージとメアリーの母は赤十字に参加した。4児の母となったメアリーは、慰問活動に従事した。サムはプラスチックで大儲けし、ポッターは徴兵委員長になった。
 ガウワーは債権を売り、警官のバートは戦地で負傷して勲章を貰った。ハリーは海軍のパイロットになり、大活躍した。耳の障害で兵役を免除されたジョージは町に留まり、自分の出来る方法で戦った。

 ハリーが名誉勲章を貰い、ジョージは誇らしげに号外を配った。彼が会社に戻ると、銀行監査員のカーターが来ていた。ビリーは8000ドルを預金するため、銀行へ出向いていた。
 ポッターが入って来ると、彼はハリーの勲章授与を報じる新聞を得意げに見せ付けた。その際、ポッターに渡した新聞に金を入れた封筒が挟まったが、ビリーは気付かなかった。預金しようとしたビリーは、金が無いのに気付いた。彼は慌てて探し回るが、もちろん見つからなかった。

 ポッターはビリーが封筒のありかに気付いていないと知り、黙っておくことにした。会社に戻ったビリーは、8000ドルの紛失をジョージに打ち明けた。2人は銀行までの道を調べるが、見つかるはずも無かった。そのまま金が見つからなければ帳簿に穴が開き、会社は破産してしまう。
 帰宅したジョージは、家族に八つ当たりしてしまう。彼はポッターの元へ行き、金を貸してほしいと頼んだ。しかしポッターは拒否し、「監査官に会って、住宅ローンの株主として君を告訴する」と言い放った。

 絶望感に打ちのめされたジョージは橋の上に立ち、川に身投げしようとする。だが、近くにいた紳士が先に身を投げ、「助けてくれ」と叫んだ。ジョージは川に飛び込み、紳士を助けた。紳士はジョージに、「君を助けるために飛び込んだ。私は二級天使のクラレンスだ」と言う。
 クラレンスの言葉を全く信じないジョージは、「この世は金次第だ。僕なんか生きてる価値が無い。生まれて来なければ良かった」と漏らす。そこでクラレンスは、「ジョージ・ベイリーの生まれて来なかった世界」をジョージに見せることにした…。

 製作&監督はフランク・キャプラ、原案はフィリップ・ヴァン・ドレン・スターン、脚本はフランセス・グッドリッチ&アルバート・ハケット&フランク・キャプラ、追加シーン脚本はジョー・スワーリング、撮影はジョセフ・ウォーカー&ジョセフ・バイロック、編集はウィリアム・ホーンベック、美術はジャック・オーケイ、衣装はエドワード・スティーヴンソン、音楽はディミトリ・ティオムキン。

 主演はジェームズ・スチュワート、共演はドナ・リード、ライオネル・バリモア、トーマス・ミッチェル、ヘンリー・トラヴァース、ボーラ・ボンディー、フランク・フェイレン、ウォード・ボンド、グロリア・グレアム、H・B・ワーナー、トッド・カーンズ、サミュエル・S・ハインズ、メアリー・トリーン、フランク・アルバートソン、ヴァージニア・パットン、チャールズ・ウィリアムズ、サラ・エドワーズ、ビル・エドマンズ、リリアン・ランドルフ、アルジェンティーナ・ブルネッティー、ボビー・アンダーソン、ロニー・ラルフ、ジーン・ゲイル、ジャニーン・アン・ルース、ダニー・ママート、ジョージー・ノークス他。

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 『オペラハット』『スミス都へ行く』のフランク・キャプラが監督&共同脚本&製作を務め、それまでのキャリアの集大成として作った映画。
 ジョージをジェームズ・スチュワート、メアリーをドナ・リード、ポッターをライオネル・バリモア、ビリーをトーマス・ミッチェル、クラレンスをヘンリー・トラヴァース、ジョージの母をボーラ・ボンディー、アーニーをフランク・フェイレン、バートをウォード・ボンド、ヴァイオレットをグロリア・グレアム、ガウワーをH・B・ワーナー、ハリーをトッド・カーンズ、ジョージの父をサミュエル・S・ハインズが演じている。

 現在ではアメリカ映画協会(AFI)の「感動の映画ベスト100」で第1位に選出されるなど、不朽の名作として知られており、アメリカではクリスマスの定番映画となっている。
 しかし公開された際は当時のアメリカの情勢に全く合わなかったこともあって、興行的に惨敗した。

 クラレンスがジョージの前に登場するまでの物語は、極端に言ってしまえば、長い長い前振りである。フランク・キャプラはたっぷりと時間を使い、「ジョージが困っている人々に救いの手を差し伸べ、自分の人生を犠牲にする」というエピソードを重ねて行く。
 彼は弟の命を救い、片耳の聴覚を失う。薬局の店主を殺人罪から救い、殴られる。父の会社を救い、ヨーロッパ旅行と大学行きを諦める。弟を無事に結婚させてやるために社長業を続け、建築家になることを諦める。恐慌で苦境に陥った人々を救うために貯めていた金を使い、新婚旅行を諦める。失業したヴァイオレットのために、所持金を渡してやる。

 そんな風に列挙していくと、まるでジョージは「聖人君子か、イエス・キリストの生まれ変わりなのか」みたいに感じるかもしれないが、そうではない。彼は「人に施すことが私の幸せなのです」という気持ちで、笑顔で奉仕活動を続けているわけではない。犠牲を支払うかどうか決断を迫られた時、一度は嫌がったり、あるいは迷ったりという態度を示す。
 慈善精神に溢れた救世主のような存在ではなく、ポッターからスカウトされた時などは本気で「チャンスかも」と考えている。「夢を諦め続けている自分の人生は本当にこれでいいのか」と落ち込んだりもする。そういう迷いや揺らぎを見せるから、ジョージは嫌味の無い、人間味のあるキャラクターになっている。

 ただし、人間味のあるキャラクターにするのはいいんだけど、8000ドルの紛失が明らかになった後、ビリーに掴み掛かって「金はどこだ。このボンクラ、早く出せ」と罵ったり、家族に八つ当たりしたり、医者を罵倒したりするのは、ちょっと行き過ぎ。
 っていうか「人間味」の描写として、それは方向性が違うかなあ。まだ家族への八つ当たりに関しては、直後に反省する様子もあるのでいいとしても、ビリーと医者のヴェルチに対する罵倒は、荒れる気持ちは分かるけど、好感度が一気に下がっちゃうわ。

 っていうかさ、そもそも「8000ドルが無くなってジョージが窮地に追い込まれる」という展開の描き方に引っ掛かりがあるんだよね。その金をビリーは封筒に入れて銀行に持参したわけで、そこまでは本人も確認していたはず。それなのに金が無いと気付いた後、会社に戻って室内を探し回ったり、銀行までのルートを探したりするってのは、ちょっと行動として違和感がある。
 封筒を新聞に挟んでポッターに渡してしまったことに、なぜ気付かないのかと。焦って混乱しているという事情があっても、ちと無理があるんじゃないんかと。そこは、もうちょっと上手くやってほしかったな。

 あと、「クラレンスが登場するまでの物語が長すぎる」という意見を持つ人も多いようだが、それに対して「そんなことは無い」と真っ向から反論する気持ちは沸かない。ぶっちゃけ、私も「さすがに長すぎるかなあ」という印象はあるので。
 ダンス・コンテストのシーンなどは、あそこまで尺を割かなくてもいいかなと。そもそも、サムの存在意義って、そんなに大きく無いように思えるし。ヴァイオレットに関しては、後半に困った彼女をジョージが助けるシーンがあるけど、サムとの関係性で「窮地の彼をジョージが救ってやる」という展開は無いし、恋敵としてのポジションも簡単に放棄しちゃうし、そんなに必要性は強くないかなと。

 さて、オープニングでは光の点滅と声だけで表現されていたクラレンスは、終盤になってジョージの前に姿を現す。彼は「生きている価値が無い。生まれて来なければ良かった」と言い出したジョージに、「ジョージ・ベイリーの生まれなかった世界」を見せる。ドラえもんの「もしもボックス」を使った時のような状況を作り出すわけだ。
 町は「ポッターズヴィル」という名前になり、住宅ローン会社は遥か昔に潰れている。ガウワーは殺人罪で服役し、ハリーは幼い頃に死んでいる。ビリーは失業して精神病院に収容され、メアリーは結婚しないままオールドミスになっている。

 「ジョージ・ベイリーがいなかったら、多くの人々が幸せを掴めなかったのだ」ということを、クラレンスはジョージに見せ付ける。ジョージは「もう一度生きたい」と願い、クラレンスは元の世界に彼を戻してやる。
 だが、この映画は「人生に絶望した男のために、天使が奇跡を起こして助けてやる」という話ではない。窮地に陥ったジョージを救うのは、それまで彼に助けてもらった周囲の人々だ。

 元の世界に戻ったからと言って、ジョージが横領と帳簿改竄で逮捕されるピンチが無くなったわけでは無い。彼の元には、監査員と警官がやって来る。神もクラレンスも、その状況からジョージを救おうとはしない。それでもジョージは「生きてさえいられるなら刑務所行きも平気だ」と考えているが、それでは映画としてハッピーエンドにならない。
 しかし、この映画は、ちゃんとハッピーエンドになる。町の人々がジョージのために寄付をしてくれたおかげで、8000ドルを工面することが出来たのだ。つまり、これは「正直者は馬鹿を見ない」「情けは人のためならず」ということを描いた作品なのだ。

 イチャモンを付けようと思えば、幾らだって付けられる映画である。何しろ、まるで現実的ではない話だからだ。現実の世界を見てみれば、正直者は馬鹿を見ることが多いし、頑張っても報われないことだって山のようにある。人に情けを掛けたところで、返って来ないことなんてザラにある。渡る世間は鬼ばかりだし、憎まれっ子は世にはばかるものだ。
 しかし、この映画は現実社会を投影した、リアリティーのある話を追及しようとしているわけではない。むしろ完全に逆で、ファンタジーなのだ。

 この映画は冒頭で神と二級天使の会話を光の点滅によって表現し、「天上界の住人が登場する物語、つまり絵空事なんですよ」ってことを示している。しかし、仮に神や二級天使が登場しなかったとしても、これはファンタジーだ。甘い甘い、甘ったるい夢物語だ。
 この映画に関しては、それでいいのだ。中途半端にリアリティーを持ち込むよりも、徹底的に「御伽噺」として描いていることが正解なのだ。

 これまでに何度も、私は本作品を観賞している。この映画は私にとって、自分自身を確認するための指標である。私は自分が捻じ曲がった心の持ち主であることを自覚しているし、それは映画を観賞する時にも出てしまうことが多い。世間的には高く評価されていても、まるで面白いと思えなかったり、酷評したりすることもある。
 しかし、この映画に関しては、前述したように「甘ったるいファンタジーでいいじゃないか。それで何が悪いのか」という気持ちになれる。この映画を見て全く感動できなくなってしまったら、私は自分が人間として終わりだと思っているのだ。

(観賞日:2014年12月21日)

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