見出し画像

【365日のわたしたち。】 2022年2月23日(水)

「じゃあ、さっき言われたこと確認したうえでもっかい練り直しね。そしたらミーティング設定しておいて。」

ぞろぞろと会議室から出ていく関係者を横目に、私は机の上に残されていった会議資料をかき集めた。

「先輩、これ。」

向こう側のテーブルに残されていた資料を、二年後輩の子が集めて持ってきてくれた。

「あ〜、ありがとう〜。」


会議前には至高の成果物に思えていた資料が、今やただのゴミ切れ。
このあとは、シュレッダー行き。

「私、お手洗い行ってから席戻るね。先帰ってていいよ。」
「わかりました。資料、シュレッダーかけときましょうか?」
「あ、ううん。あとで自分でやっとくから大丈夫。ありがとう。」

そう言って、会議室を出たところで後輩と別れる。

一人になった瞬間、我慢していた何かが抑え切れなくなった。
目の奥がキュウッと収縮するように痛んで、余分な水分が角膜を覆う。


やばい。


目線を上に向けながら、余計な水分が下瞼ダムを越えないよう、必死で瞬きを我慢する。



なんとか誰ともすれ違わずに、トイレの個室に駆け込めた。



ふー、と息を吐く。



目の奥と鼻の頭が熱い。


ファンデーションはオフィスに置いたポーチの中だ。
こういうことを想定して、会議に持参しなかったことを悔やむ。



大丈夫、大丈夫。落ち着け、自分。

やることは分かっている。
確認事項もメモってある。
オフィスに戻ったら、それを一つ一つこなしていくだけ。


今まで何十回とあったじゃないか。こんなこと。
だから、大丈夫。




そう自分を慰めながら、


あの後輩の隣の席に戻るのが、どうしようもなく嫌だ、と思った。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?