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銀座(三越周辺など)の流動人口を、地域経済分析システムRESASを使って調べてみた

有楽町で逢いましょう。有楽町や銀座エリアをぶらぶら歩く、銀ブラが憧れだった時代もある。そのような時代は、百貨店にあるレストランで「お子様ランチ」や「クリームソーダ」を注文して楽しむ家族も多かった。また、百貨店のアパレルで服を買うことが、トレンドだった時代もある。百貨店の婦人服売り場を舞台とした『リアル・クローズ』というテレビドラマが放送されたこともある。百貨店に行くことが、憧れや娯楽、さらに流行の先端であった時代である。

しかし、消費者の行動の変化や娯楽の多様化などにより、百貨店は新しいビジネスモデルへ転換が迫られていると言われることもある。

当記事では、東京都内の大手百貨店が若い富裕層の取り込みに向けて大型改装を実施することが話題となっている。たとえば、ドレスを充実させたり、コスメやスキンケアの売り場を拡大する百貨店があるようだ。

当文中では、RESAS(地域経済分析システム)を使って、(1)GINZA SIX周辺、(2)銀座三越周辺、(3)GINZA SIX周辺および銀座三越周辺を含む地域、の3つのエリアの流動人口の変化(2016年4月~6月および2017年4月~6月)などを確認することとする(下図のとおり)。

選択範囲は手動でかなりざっくりとしていますが…

(1)GINZA SIX周辺(GINZA SIXは2017年4月20日に開業)

(2)銀座三越周辺

(3)GINZA SIX周辺および銀座三越周辺を含む地域

1. 銀座地域のPEST分析

経営学ではPEST分析と呼ばれるフレームワークがある。PEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つのマクロ環境から、主に企業の経営戦略の策定等に使用するものである。ここでは企業と異なるが、PEST分析の視点から銀座地域を分析することとしたい。

まず、Politics(政治)は、短期的にみると、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げが考えられる。

次に、Economiy(経済)は、2012年12月から続く景気の回復局面と今後の景気動向、訪日外客数を2020年までに4000万人とする政府目標と訪日外客数の増加によるインバウンド需要の増加が考えられる。

さらに、Society(社会)は、ミレニアル世代の脱物質主義的価値観(モノではなく体験や価値を重視)、少子高齢化による消費の減少が考えられる。

最後に、Technology(技術)は、小売再生などが考えられるだろう。たとえば、これまでの小売業は店頭で商品を選び、その場で購入することがほとんどだった。しかし、今後の小売業はオンラインで商品を選び、店頭で商品を受け取ることや、反対に店頭で服を試着し、自宅に帰ってスマートフォンから服を購入することなどが増えていくことも予想される。オフラインとオンラインの活用により、小売業におけるチャネルが増えていく。百貨店のあり方も変化を迫られることが考えられる。

2. GINZA SIX周辺における流動人口等

東京都中央区銀座において、2017年4月20日に開業したGINZA SIXであるが、2016年4月から6月および2017年4月から6月の流動人口をRESASを使って調べてみた。

まず、2016年4月から6月における0時から23時までの流動人口である(下図参照)。

12時から16時までを確認すると、

(1)「12時」は、4月が14,900人、5月が14,800人、6月が15,800人(2)「13時」は、4月が16,000人、5月が16,300人、6月が19,300人(3)「14時」は、4月が17,400人、5月が16,200人、6月が18,800人(4)「15時」は、4月が19,300人、5月が16,800人、6月が20,100人(5)「16時」は、4月が19,900人、5月が17,300人、6月が18,000人

となっている。

次に、2017年4月から6月における0時から23時までの流動人口を確認してみる(下図参照)。

12時から16時までを確認すると、

(1)「12時」は、4月が24,000人(対前年61%増)、5月が27,400人(同85%増)、6月が18,300人(同16%増)
(2)「13時」は、4月が28,600人(対前年79%増)、5月が32,900人(同102%増)、6月が23,900人(同24%増)
(3)「14時」は、4月が30,500人(対前年75%増)、5月が36,900人(同128%増)、6月が27,700人(同47%増)
(4)「15時」は、4月が30,600人(対前年59%増)、5月が35,600人(同112%増)、6月が29,500人(同47%増)
(5)「16時」は、4月が28,800人(対前年45%増)、5月が34,100人(同97%増)、6月が28,200人(同57%増)

となっている。

2017年4月20日にGINZA SIXが開業した影響が大きいと考えられるが、やはり2017年5月の伸びが大きい。

続いて、2016年4月から6月および2017年4月から6月の平均値の比較をしてみる(下図参照)。

グラフをみると、2016年と2017年では「14時」の伸びが最も大きく、対前年81%増となっている。次に、「15時」の対前年70%増、「13時」の対前年66%増、「16時」の対前年65%増の順となっている。

また、2017年は、2016年と比較するとピーク時間帯の前後に流動人口が集中する傾向もみられる。

3. 銀座三越周辺における流動人口等

銀座三越周辺の流動人口をRESASを使って調べてみる。

まず、2016年4月から6月における0時から23時までの流動人口である(下図参照)。

12時から16時までを確認すると、

(1)「12時」は、4月が62,700人、5月が66,600人、6月が64,700人
(2)「13時」は、4月が70,700人、5月が71,000人、6月が72,000人
(3)「14時」は、4月が71,400人、5月が75,900人、6月が79,000人
(4)「15時」は、4月が79,300人、5月が78,200人、6月が76,500人
(5)「16時」は、4月が79,700人、5月が74,600人、6月が73,700人

となっている。

次に、2017年4月から6月における0時から23時までの流動人口を確認してみる(下図参照)。

12時から16時までを確認すると、

(1)「12時」は、4月が64,800人(対前年3%増)、5月が68,800人(同3%増)、6月が62,400人(同4%減)
(2)「13時」は、4月が71,200人(対前年1%増)、5月が77,200人(同9%増)、6月が71,800人(同0.3%減)
(3)「14時」は、4月が80,300人(対前年12%増)、5月が86,000人(同13%増)、6月が74,300人(同6%減)
(4)「15時」は、4月が83,300人(対前年5%増)、5月が83,400人(同7%増)、6月が75,300人(同2%減)
(5)「16時」は、4月が79,100人(対前年1%減)、5月が82,700人(同11%増)、6月が72,600人(同1%減)

となっている。

12時から16時をみると、2016年から2017年で流動人口はおおむね横ばい、あるいは増加したように見える。しかし、12時から16時を除くと流動人口は減少している時間帯もあるようだ。

2016年4月から6月および2017年4月から6月の平均値の比較をしてみる(下図参照)。

グラフをみると、「14時」は75,433人から80,200人(対前年6%増)となり、対前年で最も伸びが大きいが、たとえば「9時」から「11時」までの時間帯などは、前年と比較して流動人口が減少している。

GINZA SIXの開業による影響は、三越が同期間の前後に実施した取り組みの影響を無視して考えると、三越周辺の流動人口を大幅に増加させる影響はなく、反対に流動人口を減少させる影響があったと考えることもできる。

4. GINZA SIX周辺および銀座三越周辺を含む地域における流動人口等

最後に、GINZA SIX周辺および銀座三越周辺を含む地域の流動人口を調べてみる。

まず、2016年4月から6月における0時から23時までの流動人口である(下図参照)。

12時から16時までを確認すると、

(1)「12時」は、4月が162,100人、5月が162,600人、6月が162,500人
(2)「13時」は、4月が175,600人、5月が171,900人、6月が178,600人
(3)「14時」は、4月が181,600人、5月が176,300人、6月が183,700人
(4)「15時」は、4月が188,500人、5月が180,400人、6月が184,600人
(5)「16時」は、4月が192,400人、5月が177,100人、6月が184,500人

となっている。

次に、2017年4月から6月における0時から23時までの流動人口を確認してみる(下図参照)。

12時から16時までを確認すると、

(1)「12時」は、4月が169,800人(対前年5%増)、5月が177,600人(同9%増)、6月が162,100人(同0.2%減)
(2)「13時」は、4月が181,900人(対前年4%増)、5月が194,300人(同13%増)、6月が181,400人(同2%増)
(3)「14時」は、4月が193,000人(対前年6%増)、5月が204,400人(同16%増)、6月が185,700人(同1%増)
(4)「15時」は、4月が199,400人(対前年6%増)、5月が202,200人(同12%増)、6月が195,900人(同6%増)
(5)「16時」は、4月が192,400人(対前年0%増)、5月が206,200人(同16%増)、6月が191,700人(同4%増)

となっている。

2016年4月から6月および2017年4月から6月の平均値の比較をしてみる(下図参照)。

GINZA SIX周辺および銀座三越周辺を含む地域の流動人口は、2017年と2016年を比較すると増加している時間帯もあるが、「12時」から「16時」を除くと概ね変わらないようである。

これらのことから、大型商業施設の開業の影響は一時的に流動人口を増加させるが、それらを含む地域全体でみると、流動人口の増加の影響はあまり大きくないと考えることもできる。

そのため、まちづくりでは、地域全体のブランド化、付加価値の向上などが効果的な施策と考えることもできるだろう。

5. まとめ

これまで、百貨店等が多くある銀座地域の流動人口等を確認してきた。現在、百貨店の市場規模は約6兆円となっている。日常における必需品の購入が多いスーパーマーケットやコンビニエンスストアの市場規模は10兆円を超える規模である。主に奢侈品を取り扱い、週末の余暇等に利用することが多い百貨店はスーパーマーケット等の約半分の市場規模がある。このことからも、百貨店の潜在力は大きいと考えられる。

しかし、これからの少子高齢化による個人消費の減少やミレニアル世代が消費の中心となっていく時代では、百貨店は変化を迫られることが予想される。このことは百貨店だけでなく、他の小売業なども同様だろう。

これまで見てきたように、大型商業施設による影響は長期的には減衰していくだろう。また、消費の拡大だけでなく、まちづくりなどは地味なことをコツコツと長く続け、付加価値を向上させていくことなどが成功の近道になるのかもしれない。

百貨店が将来の娯楽の中心になるかどうかは分からないが、企業や人が地道に変化をしながら、余暇にちょっとした贅沢を楽しめる余裕も、これからの時代には大切だろう。

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