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高校生の質問②「同性愛者が登場するドラマに対する感想は?」

このnoteでは、女の子として生まれ、「ちいちゃん」と呼ばれて育ってきたかつての自分。男性として生き、「たっくん」と呼ばれ、福祉の専門家として働いている今の自分。LGBTQ当事者として、福祉の現場に立つ者として、「生」「性」そして「私らしさ」について思いを綴ります。(自己紹介はこちら)
前回の「すべての高校生に受け入れられる制服は?」に続き今回も、講演会で出会った高校生からの質問に答えていきます。

【高校生からの質問】

「『おっさんずラブ』など、同性愛者をはじめとする性的マイノリティが登場するテレビドラマを見て、田崎さんはどう思いますか?」

***

【田崎の回答】

テレビドラマや映画、マンガなどで性的マイノリティが登場人物の1人として描かれるケースは確かに増えてきましたよね。2019年に大手広告会社が、「日本のLGBT層は人口の8.9%で、左利きの人の割合とほぼ同じ」という調査結果を発表し、話題になりました。自分の身近に存在するはずの性的マイノリティがドラマの登場人物にいることは、特におかしなことではありません。むしろ、やっと日本でも同性愛者がドラマの中に出てくるようになったなというのが本音です。

講演会などで性自認や性的指向の多様性についてお話しすると、中学生や高校生のみなさんはとても真剣に耳を傾けてくれます。そして講演会後の感想でも「自分の身近な人の中にも性的マイノリティの人がいるのだとわかった」「だれもが自分らしく生きることができる社会にしたい」といった声を寄せてくれます。

僕は、「自分の家の近所にも、そしてクラスにも、同性愛者はいて当たり前」という感覚になることが大切だと思っています。だから、ドラマなどで、ごく自然に、登場人物の中に同性愛者が描かれているのは、社会の意識を変えていくためにも必要なことだと思います。

僕は、高校生から、さらにこんなことも聞かれました。「『おっさんずラブ』では、同性愛者のオジさんに好意を持たれた主人公の男性が、次第にオジさんに好意を抱き始めます。ドラマのように、異性愛者が同性を好きになることってあるのですか?」。

僕は、異性愛者が同性を好きになることだってあると思っています。僕がtwitterでフォローしている男性は、家には奥さんと子どもがいて、外に「彼氏」がいます。本人に「性的指向は?」と尋ねると「異性愛者です」と答えるけど、実際には同性の人とも関係が持てるという人は意外と少なくないと思います。

そもそも人間の脳には、男性的な部分、女性的な部分、中性的な部分があるそうです。「男か、女か」「異性愛者か、同性愛者か」と考えるのではなく、性をもっと多様なものとして捉える方がより科学的であることも分かってきています。だから、ずっと異性愛者だったあなたが、同性の人に好意を持ったとしてもそれはおかしなことではありません。表立ててわざわざ言わないけれど、人生の中でそういう感情を持ったことがある人もいるのではないでしょうか。

『おっさんずラブ』は、実は僕も見ていました。面白かったですよね。あのドラマでは、オジさんに猛烈にアタックされたことで主人公の気持ちが「変わった」という描写だったと思います。でも、「変わった」というよりも、そのときはそれでいいと思ったという感覚なのかなと僕は思います。人とのかかわりの中で「魅力的だな」と感じた瞬間を素直に受け容れることで、自分の性的指向にとらわれる必要がなくなった……そんなふうに考えることもできるかもしれません。
 

〈次回の投稿は12月14日の予定です。「女子校、男子校と分けることについてどう思いますか?」という高校生ならではの質問に答えます。(田崎)〉

【これまでのnoteはこちらから】


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