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真夏の選書


本屋さんに行くと、どの出版社も夏に向けた選書を紹介していた。読んだことのある本が多く取り上げられていて、「もう一度読み返そうかな」「感想言い合いたいな」と思わずにはいられない。ご自由にどうぞの冊子をいくつも持って帰って、夏休み用に読書計画をたてる時間がべらぼうに楽しかった。
そんなこんなで、役に立つかはわからないけど、ぜひ夏に読んでもらいたい個人的な本のすすめを作ってみた。ご賞読あれ。



インスタの方で読書記録つけてるのでそちらもよかったら覗いてくださいな。







【学生時代を覗きたい人へ】

氷菓/米澤穂信

何事にも積極的に関わらない奉太郎が、姉の命令で入部させられた古典部で、部員の少女の叔父が関わった三十三年前に起きた事件の真相に迫る。 省エネ少年と好奇心少女が繰り広げる青春ミステリー

『氷菓』あらすじ


中学時代の朝読書でハマりにハマった小説。シリーズもので計6作まであるけど、話自体は1冊で完結するからとにかく読みやすい。
青春推理小説で、ミステリーなのに舞台が高校だからどこか爽やかで、でもちゃんと謎めいたストーリー展開に胸の高揚が止まらない。
映画化もアニメ化もしてるからいろんな楽しみ方を味わうことができると思う。
読書に抵抗がある人にはとってもおすすめしたい1冊。



砂漠/伊坂幸太郎

この一冊で世界が変わる、かもしれない。
仙台市の大学に進学した春、なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。
少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。
麻雀に勤(いそ)しみ合コンに励み、犯罪者だって追いかける。
一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡で出来ていた――。
明日の自分が愛おしくなる、一生モノの物語

『砂漠』あらすじ


舞台が高校から大学へ。伊坂幸太郎の怒濤の伏線回収は言わずもがな、この小説のとびきりおすすめポイントは登場人物の人間性なのだ。
読んでいくうちに誰かしらにひどく陶酔してしまう、底なし沼の感覚に陥る。それぐらい登場人物の解像度が高く、さらには普通の大学生活の中に思ってもみなかったことが次々と繰り広げられていく。
なんてことないと言ってしまえば、そうだと言うこともできるけど、なぜだか目が離せない。もっと彼らを見ていたいと思わされること間違いなし。
私は西嶋がだーーいすき。




【綺麗なものを見たい人へ】

星の王子さま/サン=テグジュペリ

砂漠の真っ只中に不時着した飛行士の前に、不思議な少年が現れる。 故障した飛行機を修理できなければ、一週間と命がもたないという極限状態の中で、少年は飛行士のぼくに「ヒツジの絵を描いて...」と話しかけてくる。 少年の話から、彼はちいさな星の王子さまであることが分かり、次第に彼の真実が明らかになっていく

『星の王子さま』あらすじ


小学生のときには全く意味がわからなかったのに、高校に入って読み返すと物凄く大事なことを教えてくれる本だと、思わず抱きしめた。
絵本にあるようなファンタジーな世界観を軽い筆致で読むことができるから、ストーリーがとても想像しやすい。
大人になったからこそ、読んでみると忘れていた何かを取り戻せるかもしれない。心が疲れ切って何もできないときこそ、効力のある処方箋になってくれるかもしれない。星の王子さまと不思議な旅に出かけるなら、この夏にぜひ。



存在のすべてを/塩田武士

平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる――。

『存在のすべてを』あらすじ


今年の本屋大賞で第3位を勝ち取った話題作。すでに読んだ人も多いかもしれないけど、改めておすすめしたい。
誘拐事件から話は始まる。本格的推理小説かなと思いきや、読み終わったそのとき「愛」のかたちを目の当たりにすることになる驚きの展開。
私たちが見ているもの、知っているものは疑いようなく「存在」している。本当にそうなのか。「存在」という言葉がもつ意味は曖昧であり、かつ壮大でもあることを思い知らされた。
綺麗な涙を流すには、綺麗なものを見ることから始めてみよう。




【ゾクゾクしたい人へ】

むらさきのスカートの女/今村夏子

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する

『むらさきのスカートの女』あらすじ


これもとっても話題な作品。
読み終わった後味がなんだか気持ち悪い小説に没頭していたときに読んだもので、とっておきの一つでもある。
とりわけ何か大きな事件が起きるわけでもなく進んでいく話に読者である私たちは何も違和感を抱かない。正しく言えば、抱けないのかもしれない。
読んでみないとわからない、ラストに向けたシーンで思わず背筋も凍る読書体験が待っているでしょう。



向日葵の咲かない夏/道尾秀介

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み

『向日葵の咲かない夏』あらすじ


こちらも読了後の後味がうずうずしちゃう系の1冊。
僕と同じクラスの男の子が死んでしまったことをきっかけに、彼の死を解明する夏が始まる。死んだ彼がある姿になって現れるファンタジー要素もありつつ、死の謎に迫るミステリー要素もある。
調べてみたところ、感想は賛否両論そうだけど、最後の最後で「そゆこと!?」と驚愕するも良し、意味わかんないけどむずむずするなとその感覚を味わうも良し!




【映画の実写を見たい人へ】

傲慢と善良/辻村深月

30代になった西澤架は、マッチングアプリで坂庭真実と出会い付き合い始める。しかし、親の敷いたレールの上を歩み善良に生きてきた真美は、架と婚約直後に失踪してしまう。消えた真美の行方を捜す中で、知りたくなかった彼女の過去と嘘が徐々に明らかになる

『傲慢と善良』あらすじ


本屋さんで長らく正面棚を飾っていたのではないかと思うくらい人気な作品。今年の9月27日から映画が公開されるみたいで、ぜひともそれまでに読んでもらいたい。
順風満帆だと思われていた生活が突如崩れ始める。人への期待は、傷つける要因にもなり得る。痛いほどわかってしまう、リアルな人間性を描き出した長編小説だけど、次の展開が気になってページを捲る手が止まらないと思う。ハードルはやや高めだけど挑戦の価値大有り。
自分の弱いところも全部受け止められる自信がないなら、この本と一緒に一歩踏み出そう。



六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

成長中の企業の新卒採用の最終選考に、6人の就活生が残る。1カ月後までにチームを作り、グループディスカッションを行うという課題を与えられた彼らは、全員で内定を得ようと交流を深めていく。しかし本番直前に課題が変更され、内定者は1名だと通達される

『六人の嘘つきな大学生』あらすじ


最近文庫化と11月22日の映画化によって注目を浴びている渦中にある小説。舞台は就活に移り、内定に向けてみんなで力を合わせて頑張ろうと思ったそのとき、事件は起こる。
読んでいくにつれて、何が本当で嘘だかわからなくなる。就活生ってこんなに嘘まみれなのかと、フィクションなのにそう思わせるほどのリアル感満載。それでも最後には、綺麗にまとめて伏線回収されてスッキリ爽快。
「就活」というワードに敏感なそこのあなた、一度手に取ってみては?




【おまけが気になる人へ】

私とは何か/平野啓一郎

小説と格闘する中で生まれた、まったく新しい人間観。嫌いな自分を肯定するには?自分らしさはどう生まれるのか?他者との距離をいかに取るか?ー恋愛・職場・家族など人間関係に悩むすべての人へ贈る希望の書。

『私とは何か』あらすじ


いつ何時だって解決することができない問い。自分のことなのに自分のことがよくわからない。「本当の私ってなんだろう」と考えたことがある人も少なくないはず。
路頭に迷ってしまい、悩み苦しんでいる人へのささやかな導きがこの本には詰まってる。哲学書ほど堅苦しく難解な内容ではなく、著者が語りかけるような筆致に心置きなく読み進められる。
心に留めておきたい言葉の数々に出会うことができる夏にしませんか。



時をかけるゆとり/朝井リョウ

この初エッセイ集では、天与の観察眼を駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。”圧倒的に無意味な読書体験”があなたを待っている!?

『時をかけるゆとり』あらすじ


「夏休み暇だなー」「バイトと飲みしかねえよ」とほざいてるそこのあなた。とりあえずこのエッセイを読みなさい。
濃密な暇つぶしと爆笑をあなたに差し上げます。





よい夏を本とともに過ごしましょう。🌻




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