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私が管理本部長だ! vol.16

兵どもが夢の跡 中編の3

「高良川さん、あの・・・、岩ちゃんが寝ちゃってですね・・・。全然起きないんです」

エレベーターのすぐ横のところで壁にもたれるように座っていた岩清水は、川島に頬をパチパチと叩かれながらもスヤスヤと穏やかな寝息をたてていた。

堀は川島の後ろでひたすらオロオロしていた。

「僕も運んであげたいんですが・・・浴衣がちょっと、、一応女の子ですし・・・、どうすれば良いのかなって・・」

ああ、なるほど。
岩清水の浴衣は少しはだけていて、不用意に触れるとズルっと脱げてしまいそうだった。

「まあ、とりあえず運ぶしかなさそうですね。川島さん、とりあえず、それ以上浴衣がはだけないように軽く整えて、帯を強く結び直してあげてもらえますか?」

「はい!わかりました!」

元気よく答えた川島が岩清水の浴衣に手をかけたその時、

ウイーン

エレベーターの扉が開いた。

「あれ~、高良川さん、ここにいたんですか~」

そこに現れたのは多田野だった。

「高良川さんがいないから呼んで来いって専務に言われて来たんですよ~、、って、・・・あれ?岩清水さん、どうしたの~?」

明らかにベロンベロンの多田野は、おぼつかない足取りでエレベーターを降り、フラフラしながら岩清水に近づき始めた。

川島は近づいてくる多田野に気が付き、岩清水の浴衣からパッと手を離した。

「あれあれ~、寝ちゃってるの~」

多田野は川島のすぐ横で片膝をつき、岩清水の顔をななめ横から覗き込んだ。

川島は困惑した表情で、多田野と私の顔を何度も交互に見返した。

そして、

「んー・・・、こんなところで寝ちゃってると・・」

多田野はおもむろに左手で岩清水の肩をつかむと、

「おっぱい触っちゃうぞ~」

と言いながら、右の手のひらをお椀型に形どり、指をワサワサと動かし始めた。

「はい、そこまで」

私は、多田野の背後から彼の両脇を引っつかみ、体ごとグイっと上に引き上げた。そして、すぐそばにいた堀に、目線とあごでエレベーターの扉を開けるように指示をした。

ウイーン

エレベーターの扉が開いた。

「部屋に帰れ」

私は、割と強めに多田野をエレベーターに突っ込み、『6階』と『閉』ボタンを押した。

エレベーターの扉は多田野の唖然とした表情を残したまま閉まり、ゆっくりと上昇していったのだった。

*****

邪魔者がいなくなり、川島は当初の予定通り岩清水の浴衣を整え始めた。

「あの、すみません。。私、多田野くんが飲むと手癖が悪いって知ってたのに・・・」

川島がそう口を開くと、

「それを言うなら僕もオタオタしてただけで・・・」

と、堀も申し訳なさそうに言葉を発した。

「・・まあ、彼も悪ふざけが過ぎただけでしょうし、今日のことは水に流してあげてください」

私の止め方も決して褒められたものではない。

「それに、今日は二人に手伝ってもらってとても助かっています。本当にありがとうございます」

二人は少し照れ臭そうな顔をした。

数秒後、川島は岩清水の浴衣の帯をキュッと強く結んだ。

「さて、後は岩清水さんを運びましょうかね」

「はい!」

私たち三人は、交互に目線を合わせてから少しだけ笑った。


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