私が管理本部長だ！　vol.19

2020年6月17日 05:50

兵どもが夢の跡　エピローグ

朝が来た。とても静かな朝だった。

10時までの朝食にありつけたのは、私を含めて5人だけだった。
ほとんどの者は、チェックアウトの11時直前まで体を起こすことすら出来なかった。

「26万と1,250円になります」

チェックアウト時の追加料金は、予定の金額よりはるかに高かった。
詳細のレシートにはお酒やつまみだけでなく、マッサージや貸切風呂、遊技場使用などなど、やりたい放題の項目が記載されていた。

まぁ、いつものことと言えばそれまでだ。少し手間はかかるが、調査して犯人の給料から天引きするだけのことだ。

旅館のロビーラウンジで少し休んだ後、みんなを引き連れてノタノタと駅に向かった。昨日はあんなにキレイに見えた雪景色が、今はくすんで見える。
ものの数分で着いた駅前は来た時と同じように賑わっていた。あんなに楽しかったぽんしゅ館での思い出が、遠い昔のことのように思える。

昼過ぎの『Maxとき』に乗り、指定席に座ると一気に身体の力が抜ける。電車はゆっくりと動き始め、ドンドン速度があがっていく。

辺りを見渡すと、昨晩あれだけ猛威をふるっていた輩たちは、こぞって白目をむいていた。私たちの車両には話し声などなく、ただただいくつものイビキが響き渡っていた。

東京まで、後1時間ちょっとだ。

*****

私は管理本部長。
こんな社員旅行から家に帰った日には、いつもよりほんの少し妻に優しくなれるのだ。

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