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#私が管理本部長だ!

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こんな人たちいっぱいいる!会社の管理側から見た社内の色んな景色を描いた小説『私が管理本部長だ!』をまとめました。成長期の会社にありがちな問題点をバッサバサ切り刻みながらも憎めない… もっと読む
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記事一覧

私が管理本部長だ! vol.18

兵どもが夢の跡 後編の2私は、うまくタイミングを見計らって専務の部屋から自分の部屋に戻った。運良くそこは宴会場とはなっておらず、ただ静かに布団だけが6組並べられていた。 ホッとした私は、一番奥の布団に潜り込み、仰向けで目を閉じた。 ・・・ ・・・ギィ、バタン 入口のドアが動く音がした。 もう時間も時間だ。きっと宴会からの離脱者が来たのだろう。 「・・・から・・・いる・・」 「い・・・すね」 「・・う・・・とりあえず・・」 何やら小さな話し声が聞こえたが、私は狸

私が管理本部長だ! vol.17

兵どもが夢の跡 後編の1岩清水を無事に部屋で寝かせ、堀と川島とはそこで別れた。 まだ時計は21時をまわったばかりだった。 部屋割りはあって無いようなものだったので、私たちの部屋があるフロアでは、みんな好き放題にバタバタと部屋の行き来をしていた。 いくつかの部屋に分かれて宴会の延長戦が行われていて、どの部屋の声も外まで聞こえてくるほどに騒がしかった。 私は、まずは一息つこうと思い大浴場に向かった。 そして、脱衣所に入ったところで聞きなれた声がいくつか耳に入ってきた。 「

私が管理本部長だ! vol.16

兵どもが夢の跡 中編の3「高良川さん、あの・・・、岩ちゃんが寝ちゃってですね・・・。全然起きないんです」 エレベーターのすぐ横のところで壁にもたれるように座っていた岩清水は、川島に頬をパチパチと叩かれながらもスヤスヤと穏やかな寝息をたてていた。 堀は川島の後ろでひたすらオロオロしていた。 「僕も運んであげたいんですが・・・浴衣がちょっと、、一応女の子ですし・・・、どうすれば良いのかなって・・」 ああ、なるほど。 岩清水の浴衣は少しはだけていて、不用意に触れるとズルっと

私が管理本部長だ! vol.15

兵どもが夢の跡 中編の2そんな専務のイベントの最中、別のグループでは、舟盛りに使用された舟に日本酒をなみなみと注いで回し飲みをしていた。 その中心には阿部取締役や竹原がいた。 この二人は人に酒を飲ますのが好きだ。 特に阿部取締役はかなりの酒豪で、飲んでも飲んでも滅多に潰れないからタチが悪い。 「なに~、俺の酒が飲めないってのか~」 阿部取締役のこのセリフを今まで何回聞いてきたことだろうか。そして、飲むのを断ろうものなら、 「よし、わかった。じゃあ俺も一緒に飲んでやろ

私が管理本部長だ! vol.14

兵どもが夢の跡 中編の1乾杯が終わるとすぐに、颯爽とした立ち姿の料理長が二人のスタッフを両脇に引き連れて現れた。そして、旅館のマネージャーらしき人が司会さながらマイクでしゃべり始めた。 「本日は当旅館に・・・いただき、誠に・・・がとうございます」 ザワザワ 「・・・は、当旅館料理長の渡部がみなさまの・・・で舟盛りを作らせていただき・・・」 えー!バカじゃねーの~ 「自慢の包丁・・きをご覧になりながら、新潟にしか無い地酒を・・・」 ぎゃはははは! ・・・ああ、酔っ

私が管理本部長だ! vol.13

兵どもが夢の跡 前編の2久しぶりのスキーだったからか、山から下りてきた後には体中がギシギシ言っていた。川島なんかはケロッとしていたが、今日初めてスキーをしたと言う谷と岩清水はかなりグッタリとしていた。 谷には「高良川さん厳しすぎますよ!」と言われたが、スキーは思い切って重心をかけることが出来ないとエッジが効かずに止まることが出来ないので、結構危ない思いをすることになる。 そのため、とくに腰が引けていた谷には、自ずと口調が厳しくなってしまったのだ。 それでもまあとにかく、「

私が管理本部長だ! vol.12

兵どもが夢の跡 前編の1社員旅行、社員旅行、社員旅行。 嫌な響きだ。 社員旅行には善も悪もない。 ひたすらカオスだ。 社員旅行。 毎年。そう、毎年毎年、私はどうせカオスになってしまうことを知っていながらも念入りな準備をし、そのカオスを収めるために参加しているのだ。 ***** 「やっぱり舟盛りは必要だろう!」 「ですね!あとは料理長が目の前でさばいてくれれば完璧ですよね!」 自信満々にアイディアを出す社長に、専務がひと声上乗せした。 我が社には年に一度の社員旅

私が管理本部長だ! vol.7.5

中途採用は気が付かない我が社は創業5年目の会社だ。新卒採用など無い。 正確には、社員を一から育てるための決まったフローが社内に存在しないため、「会社に育ててもらおう」と社員入社した人材は決まってガッカリしてすぐに辞めてしまう。 だが逆に、自分から率先して動くタイプは出世するのが早く、即戦力と見られる人材はすぐに会社に馴染んでしまう。 そのため、アルバイトで実務を覚えてから社員登用されることが非常に多いのだが、最近ではそれなりの経験を持った人材が社員として中途採用で入って来

私が管理本部長だ! vol.11

小さな嘘の見抜き方みんな嘘をつく。それは普通のことだ。 だが、一言で『嘘』と言っても色々な嘘がある。 自分の身を守るための嘘。 誰かを庇うための嘘。 自分自身に対する嘘。 ただその中でも、『自分の身を守るための嘘』はとても見抜きやすいものなのだ。 ***** 私の業務は午前中が忙しい。 店舗に何らかの問題があったりすると、当日は誰かしらが取り急ぎの対処をして、私にはその翌日の朝に報告やら根本解決の依頼やらが流れてくるからだ。 そしてその日は、店舗のゴミをルート回収

私が管理本部長だ! vol.10

さらば労働基準法 後編橋間とのやりとりから3日ほど経った頃、阿部取締役から電話があった。 「高良川くん、橋間と結構やりあったんだって?」 ん? 「・・あの、いったい何のことでしょうか?」 本当に心当たりがないが、まさか。。 「そんな隠すほどのことでもないだろう?そりゃあ君は管理本部長と言う立場だから、一度決めたことを変えられるのは面白くないということくらい私にも理解出来るよ」 「・・もしかしたら、伊勢谷くんの件ですか?」 電話の向こう口から、やっぱりなと言わんば

私が管理本部長だ! vol.9

さらば労働基準法 前編私は思ってしまう。 『労働基準法』とは、中小企業や零細企業の利益を一切考えず、従業員一人に対して年間で最大40日間ものサボりを認め、たかだか日が暮れてから仕事をするだけで1.25倍、さらには1.5倍もの賃金を発生させる恐ろしい法律である。 国は、企業には良心が無く、個人には良心があるものと勘違いしている。 昨今、義務を果たさないままに権利の主張ばかりをする人間が増えてきた。そしてその主張は、常に決まって独善的で、自己中心的なものなのだ。 ****

私が管理本部長だ! vol.8

旅の恥はおすそ分け旅に恥はつきものだ。 キレイな景色に美味しい食べ物、なかなか出来ない貴重な体験などなど。そんな中でテンションが上がってしまい、いつも以上に大きな声を出してしまったりちょっと変な行動をしてしまったりするのは仕方のないことだ。 ただ、それが自分の望んでいない形で起こることは不幸以外の何ものでもない。 ***** 「5月の幹部研修は、那須に行きます」 3ヶ月に一度行われている早朝幹部会で、専務がそう発表した。 「かねてから社長から提案のあった幹部研修です

私が管理本部長だ! vol.7

社内恋愛はほどほどに エピローグ神野が会社を辞めてから2年が経った。 その日の私は、ちょっとした用事があって学芸大学店に向かっていた。 日曜日だったこともあり、学芸大学店の改札を出てすぐの商店街は、人通りが多く活気に溢れていた。 「高良川さん!」 ななめ後ろから、女性の元気な声で呼び止められた。 「高良川さん、お久しぶりです!私のこと覚えてますか?」 そこに立っていたのは神野だった。 「ああ、神野さん、久しぶりですね。あれ?家ってここの近くでしたっけ?」 私の記

私が管理本部長だ! vol.6

社内恋愛はほどほどに「社内恋愛に関してどう思いますか?」 とよく聞かれる。 一説には『社内恋愛が多い会社は伸びる』なんてことも言われている。 女性がパートナーを選ぶ際には安定や将来性を求める場合が多いことから、社内恋愛が多い会社は女性からは『安定していて将来性がある会社』と見られていて、事実そういった会社では社内恋愛が多いとのことだ。 私は思う。 社内だろうが社外だろうが、恋愛は恋愛だ。そこには良いも悪いもない。変に『会社』というものを意識に絡ませるからややこしくな