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【愉快な仲間達】

短い期間ではあったが、共に過ごした奇妙な仲間の話。


大学に入ってから約3年半ほぼ惰性で続けていた、自分にとって何のプラスにもなってないであろう部活を4年の6月にしてキッパリと辞め、しっかりとシフトを提出し、時には残業もしながら仲間と協力して働くという僕の真っ当なアルバイト生活がスタートした。

以前に個別指導塾の講師のアルバイトをやっていた事があるが、如何せんこんな性格なのでどうしても生徒に対して「こいつアホやなぁ、何考えとるんやろ」「担当の教科全部文系なのに数学のテストの問題とか持って来んなや、知らんて」とかをいつも思ってて、時にはそれが口に出そうになり、それがなんか申し訳なくて長くは続かなかった。だからこれは真っ当なアルバイト経験ではない。

前代未聞、塾の講師による「我流・フィーリングでの高校数学の指導」という被害に遭ったあの時のJKは今も元気かな。アホだったけどめちゃくちゃ良い子だったから、素敵な友人たちに囲まれてきっと元気だろう。




そんなことは置いといて、7〜8月はコロナが猛威を奮っていたような時期で、1人暮らしをしていても何も楽しくないので実家に帰省して運動したり映画観たり適当に勉強したりしてて、9月から真っ当なアルバイトを始めた。
実に今の時代にタイムリーなアルバイト。「新型コロナウイルスのワクチン接種補助業務」である。


バイト初日、緊張しながらも勤務先へ行くと、30人弱くらいいるバイトスタッフのうち、男は僕含めて4人だった。小太りで眼鏡の中年、背の高い初老の男、白髪のお爺、そして僕。あとはほとんどがパートの主婦。


歓喜。これは大歓喜である。バイト先のメンバー構成としてこれほど完璧なものがあるだろうか。
面倒な人間関係や同世代とのしょうもない世間話、もしくはそこに入れない疎外感を感じなくて済む。このアルバイトを選んで良かったと心から思った。
しかもアルバイトの内容としては毎日大勢来る、細い針を腕に刺したい人たちを席に誘導したり、書類を確認したり、席の消毒をしたり。至ってシンプルな作業ばかりではあったが、時給は割と高かったので、丹精込めてどんな業務も真っ当にこなした。真っ当に。



後に分かったことなのだが、男性アルバイトの4人のうちの1人である小太りで眼鏡の中年男性は、実は24歳の専門学生だったらしい。
彼とは初日に自己紹介がてら少し話したが、「秋葉原にある専門学校に通っているんだけど、実はその専門学校っていうのも文科省(?)には正式には学校って認められてなくて、だから実質ニートっていうかぁ...」みたいな事を言っていた。
知らん。こいつはまじで知らん。24歳で専門学生ってのも、正式に認められていない専門学校のことも少し気になったが、この容姿で24歳だという事実に勝る衝撃は無いと感じたため、そいつと個人的な話はそれ以来してない。


他にも、背の高い初老の男は極度のヤニカスらしく、僕が以前iQOSを吸っていたという事を話したら、血相を変えて「そんなもんやめとけ」と言ってきた。iQOSに親でも殺されたんか、とまでは言わないが、iQOSに「別れて疎遠になってしまったが、良い思い出ばかりで実は今も心の奥で想いを寄せている元カノ」の悪口でも言われたんか、という程だった。
あとこの男は分かりやすくパートの主婦たちを口説いていた。主婦たちと優しく、時にいやらしい笑顔で話すこの男は実に幸せそうだった。もしかしたら口説かれている主婦たちも幸せだったのかもしれない。あまり笑顔ではなかったが。


もう1人の白髪のお爺とは殆ど話したことがない。初日に優しく業務を教えてくれたので、幸せお爺なのかと思ったが、このお爺が何日かお休みしていた間に僕がそのお爺の役割(トランシーバーを使ってあれこれ指示したりする業務)をマスターしてしまったのをあまり良く思ってなかったらしく、途中から話しかけたりしてもすごくそっけない態度を取ってきた。
ほんとにごめん。あんたがいないとやっぱこの現場は回んないんすよ。自信持ってこれからもトランシーバーでイケイケにぶん回して下せぇ。
このお爺とはもっと仲良くなりたかったな。



てな訳で、男性陣とはあまり仲良くなれずに、僕はバイト中の殆どのお喋りの時間を、仲良くなった主婦2人と、ゴリゴリのジャニオタでフリーターだという28歳の女性との時間に費やした。
この人たちとお話しする時間はとても楽しかった。友人も少ない僕にとっては数少ない話し相手であり、年齢は違えど良き友になれたと思っている。本当に楽しいお話ばかりだったので、この事はまた別の回で改めて書こうと思う。


自治体で決められているワクチン摂取期間が12月までだったので、約3ヶ月ほどで僕の真っ当なアルバイト生活は一旦終了した。摂取に来る人たちやバイト仲間も含めて色んなタイプの人間に出会うことができて、とても有意義な時間だったと思う。
2月から高齢者を対象にした3回目のワクチン摂取があるので、また仕事の募集は再開するらしいのだが、またこのバイトをするかはまだ決めてない。


でももしまたあそこで働くことになったら、次は24歳の専門学生に学校(?)でどんな事を学んでいるかしっかり聞いて、iQOSに疎遠になった元カノの悪口を言われた長身男と一緒に主婦を口説き、仲良くなれなかったお爺とトランシーバーの素晴らしさについてとかを語り尽くしたりしてみたい。知らんけど。

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