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習いごとラプソディー

Top Photo:シルバー色のトランペット、じいじの宝物


「生後6か月から、赤ちゃん工作教室に通っていたわよ。子ども用のハサミを持たせていっしょに紙を切ったり、絵の具でお絵かきしたり。」

そう話すのは私の母。私はどうやら生後半年からハサミを扱っていたらしい。

母が怖いもの知らずだとかそういうことではなくて、当時 母自身も「生後たった半年の娘にハサミなんて持たせていいのかしら!?」と思っていたそうだ。ところが近所のママ友たちの中で評判の工作教室だったそうで、父の転勤先で知り合いも少なかった母は、工作教室をはじめ様々な習い事の教室に足を運んでいたようだ。

そうした経緯で私と弟は実にたくさんの習い事を経験している。父が某大学の応援団でトランペットを吹いていたことや、母が琴と三味線の免許を持っていたことで、音楽系の習いごとに関する楽器代やレッスン代に関しては双方とも理解があった。私が習ったことがあるものをざっと挙げてみると、ピアノ、クラシックバレエ、水泳、油絵、水彩画、ギター……(余談だがカメラは独学なので含めない)。弟に至ってはヴァイオリン(賞をもらってコンサートを開催するなど少しだけ実を結んだ)、ピアノ、水泳、バスケ、ベース。時には評判の先生を尋ねて隣県まで足を運んだことも珍しくなく、母は専業主婦の時間を活かして私たちをあちこちに連れ歩いてくれた。

一言「やってみたい」と言えばなんでも習わせてくれた両親には今でも感謝しているし、なんならこれらの習い事に加えて中学受験も経験しているので 今考えてみると毎日のように塾やレッスンに奔走した私自身よりも、送り迎えに追われる母の方が根気がいる日々だったと思う。


さて、本題だ。
このように私自身が多種多様な習い事を経験してきたので、娘にもぜひ習い事をさせてみたいと考えていた。出産前に私が勝手に思い描いていたのは、予防接種を受けるにつれて人ごみに出てもいいと言われている生後5か月を迎えたら体験入学に行き、生後6か月で半月に一度、気に入れば週に一度のペースで何らかのレッスンに通おうと思っていた。

ところがここで新型コロナウイルスである。
授業のスタート日が不透明なまま自宅待機が続いた小学生や、オンライン授業を強いられた大学生、9月入学に変わるかもしれないと情報に振り回された当事者の方々を思うと、私が感じたストレスなど小さなことかもしれないが、軒並み中止となっていく体験レッスンにため息が出た。知人に勧められた「ベビーヨガ」(母親メインの子連れヨガ)の教室に至っては新型コロナウイルスの影響を正面から食らって閉校してしまったほどだった。

ただ、わが家だけが新型コロナの影響を受けたわけではないので、それはそれでYouTubeの「手遊び動画」のようなものを見ながら毎日を過ごし、生後9か月を迎えている。そして感染第二派の波もピークを越えたとされる今、地元の子育て情報誌に少しずつ習いごとレッスンの再開の情報が目立ってきた。

ところが、改めて情報誌を見てみると、習いごとの大半は3才からの教室。0才から通えるのはピアノ教室、ダンス教室、英会話教室の3つであると断言してもいいほど、この3つに留まった。(関東圏はまた違うかもしれない、あくまで一地方都市・福岡の場合だ)

日本語もままならない(ままならないどころか、発語は「まんま」と「あ~~」のみ)という娘に英語を聞かせたところで……。私がピアノを弾けるのだから、家のトイピアノで一緒に遊べば良いのでは……。ようやく自力で立ち上がることができるようになったレベルでダンスができるのか……。と、ここで初めて、私の行動力を遮ったのはコロナだけでなく自分自身も加担していたことに気が付く。改めて、「生後半年でハサミを持たせる工作教室」などというものに足を運んだ母を尊敬した。

母の言うことには、「0才の習いごとなんて何をやっても本人はピンとは来ないから、ママが面白いと思って一緒に笑顔になれる教室を選んだらいいよ」と笑う。なるほど、その理論で言うとピアノもダンスも英会話も、娘のリアクションは想像がつかないが私としては楽しんで聞いていられそうな気がしてきた。

クレヨンを握って娘なりの造形を描いている様子をサポートしたり撮ったりするのも面白いかもしれないし、ピアノ教室だってプロの先生なら赤ちゃんにも伝わるテクニックで音楽を教えてくれるかもしれない。


思い切って、体験入学申し込みの申請フォームを開いた。

「0才のお子さまは、ぜひお友達とお誘いあわせの上で☆」という補足に、私1組で参加しても時間が持たないのだろうかと再び不安がよぎるが、1組でのエントリーがNGだとは書かれていなかったので、思い切って送信してみる。

娘はどんなリアクションをしてくれるだろうか。そして、この体験レッスンを皮切りに、私の家事ルーティンに「習い事のサポート」というタスクが加わったのを感じて、楽しみな気持ち半分、己を奮い立たせる気持ち半分。

体験レッスンは少し先の来月中旬だが、どんな結果になろうとも娘と楽しい時間を過ごしてこようと思う。


最後まで読んでいただいたあなたに感謝を。明日は日曜日、良い週末をお過ごしください。

2020/08/29 こさいたろ

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