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夜風の香りがしたら秋

今年に至っては9月早々に肌寒い日もあったため、10月中旬に公開するnoteとしてはなんだか不格好なタイトルかもしれない。


四季がはっきりとしている日本で育つと、それぞれの季節固有の香りがあることに気が付く。

冬は乾いた空気の中にほのかに香るホコリの香り。春は可愛らしいようで案外強烈な新芽が萌え出づる強い香り。夏は湿気に混じった新緑の香り。

そして秋は、どう言葉にしよう。寂しさを感じる香り…と書くとあまりにもセンチメンタルだが、それは夏と冬の中間でもなく、「秋の香り」として今の時期しか香ることのできない香りである。

あまりにも言語化しづらくて、書き始めてたった300字にして執筆テーマを変えたくなっているが、もう少し自分の語彙力を励ましてみるとする。


夜風は特に象徴的に “秋の香り”がする。逆に言うと、窓をしめきってしまう暑い夏や寒い冬は夜の香りに触れる機会がそもそも少ないこともあるだろうか。窓を閉めると暑いので少しだけ開けた窓の隙間から吹き込む風、私が感じる秋の風はいつだって少し肌寒い夜風だ。


思い起こすともう10年も前の話になってしまうが、軽音サークルに所属していた学生時代は、11月初旬の学園祭に向けて10月はいつも防音スタジオで夜通しバンドの練習をしていた。本番直前になると文字通り「終夜」で練習することもあり、始発電車で帰宅していたことも。始発列車を待つ駅のホームにただよう風。私の中では夜から朝にかけて肌を冷たく撫でていくこの風が、秋の風だ。

不思議なことに、当時のように駅のホームではなくても、自宅寝室の窓から吹き込む風も、あの頃の秋の風と同じ香りがする。

家の近所に生えている樹木も、環境のなにもかもが違うのに秋になると香るこの香り。


少々育児に追われ過ぎていたこともあるのか、今年は例年よりも遅く、今頃になってようやくこの秋の香りがしはじめた。

お風呂あがりに少しだけ窓をあけてみると、私の中でようやく秋だ、と感じた。まだ半袖だった夏用パジャマから慌てて薄手の長そでに切り替える。

もたもたしていると「気が付けば年末」みたいなnoteを書きかねない私がいるが、育児の最中でも今年も欠かさずに秋の香りに気が付くことができた日曜の “安息日” に感謝したい。

ワンオペ育児を回避できる週末が光の速さで過ぎ去ってしまうことが何とも惜しいが、来月になれば娘はとうとう1才の誕生日を迎えることになる。

毎週毎週土日を目指して休まることのない育児に向き合ってきたが、いよいよ1才に。来月になれば、このなんともいえない秋の香りも「娘が生まれた時期を思い出す香り」になるのだろうか。

四季の中でも特に思い出が共に伴走しやすい秋の香り。今年の秋は育児に奔走する中で、来年はどんな思いでこの香りを嗅いでいるだろうか。


夜空を見上げて深く深呼吸する秋の夜長に、言語化に苦しみながらなんとか書ききった。今宵もあなたの貴重なお時間をしばし拝借させていただいたことに感謝を。

おやすみなさい。

2020/10/18 こさい たろ


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