忘れられない初恋〜君を忘れて好きになった人〜
「よかったー。私も今日、ギンガムチェック着てこようか迷ってたんですよ。被るところだった。」
映画館バイトの研修日、ギンガムチェックを着る僕に彼女がそう言ってきた。
これが僕と映画館のともみちゃんとの出会いだった。
第一印象は少し変わった子。
そして、やっぱり名前が気になった。
僕は「ともみ」という名前の子に会うと、意識する一方で、一番最初に恋愛対象からは外れるようになってしまっていた。
それくらい僕の中で、「ともみ」という名前は、初恋のともみちゃんしか考えられなかった。
映画館のともみちゃんもやっぱりそうで、一緒に勤務してみると、第一印象の少し変わった子から、意外としっかりしてるし、人の気持ちのわかる優しい子という印象に変わっていたけど、好きとか付き合いだとかは思わなかった。
それに、年齢が5つも離れていて、彼女も当時は未成年だったから、まず、向こうの方からありえないだろうと思っていた。
それでも、勤務を重ねる度に、素敵だなと感じる。
僕の話すことでよく笑ってくれて、それが嬉しかった。
シフトが一緒になるのが嬉しかった。
バイト先のみんなと、ご飯行ったり、ディズニー行ったりして、僕のライブにも来てくれて。
バイト以外の時間でも会うことも、増えて同じ時間を過ごすのが楽しかった。
ニューヨークさんの単独ライブに初恋のともみちゃんが来れなくなった時、諦めることができたのは、ともみちゃん以上に好きになれると思ったから。
映画館のともみちゃんに告白しよう。
そう決めて、映画館のともみちゃんをデートに誘った。
一回目は、一緒にプラネタリウム観て。
二回目は、すでに二十歳になっていたから、飲みに行って、平成から令和に変わる瞬間を一緒に過ごした。
そして、ベタに三回目のデートで、映画を観に行って告白して付き合うことになった。
夏は花火観に行って、自分たちでも公園で花火して。
冬はスケートしてみたり、イルミネーションも観に行って。
付き合ってからのプラネタリウムは最初のデートでは、できなかったカップルシートにしてみたり。
僕の家に呼んで、そのまま泊まって、朝一緒にバイトに行ったり。
なんでもない毎日がかけがけのない毎日と思えるような日々だった。
映画館のともみちゃんと付き合ってる時間は、初恋のともみちゃんの気持ちを間違いなく忘れることができていた。
忘れられていたはずだったんだ。