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フィードバックは福利厚生

僕が実践しているフィードバック

当社トラックレコードの人事制度では、半年に一回の評価があり、そのタイミングで振り返りとフィードバックも行います。
もちろん常日頃から1on1などは行われているのですが、半年に一回のフィードバックはかなり気合いを入れておこなっています。

どう気合が入っているかというと、かなりボリュームがあります。たとえば2024年の上期に僕が書いたフィードバックを数えたら平均で2604文字、一番長いもので3285文字でした。一人あたりでA4で2~3枚くらいになります。
これは準備がけっこう大変で、半年ごとに2週間ほど死にそうになりながら書いています。

この話を先日別の会社で150人近いメンバーを抱える知人にしたら驚かれ、当社共同代表の野崎にも書けと言われたので、フィードバックの重要性と実践する上でのポイントについて解説します。

部下を抱える管理職・マネージャーの方、人事・組織開発の方、経営者の方などには多少役に立つ内容かと思います。


僕がフィードバックを重視する理由

戦略コンサルティングファームにおけるフィードバック
自分の原体験として、大昔に働いていたコンサルティングファームでは、評価とフィードバックに凄まじいエネルギーを投下していました。
コンサルティングファームでは特定の上司ではなく、ケース(プロジェクト)ごとにそのマネージャーが評価とフィードバックを行うのが一般的ですが、忙しいマネージャー達が寝る間を惜しんででもチームのメンバーのフィードバックをしっかり書きます。「忙しくて書けなかった」という人は(多分)一人もいません。
フィードバックの受け手側の体験として、これは本当に有意義なものでした。

そんな経験から、フィードバックは大事だし、フィードバックに全力投球するのはマネージャーの当然の責務だろうと考えています。

社員として働く一番の理由
当社には、フリーランス経験を経て、社員としてフルタイムで働いてくれている人も何人かいます。
一人でも十分な収入を得て生活をできていた彼らがわざわざ入社してくれたのは、多分会社に所属していた方が成長できると考えてくれたからです。 その期待に応えるためにも、成長につながる機会に投資することは僕らにとって重要です。 フィードバックはそのための最もパワフルでユニークな手段になると信じています。

そもそもCoachableが当社のバリュー
当社のバリューに”Coachable”というものがあり、採用上もその点を重視しています。
“Coachable”を日本語にすると、「コーチングを受け止める資質」のようなものです。
自社で大事だと決めており、同じ価値観を共有している人が社員になっているので、フィードバックをおろそかにする理由がありません。むしろ最重要事項のひとつとして全力投球すべきことなのです

フィードバックは福利厚生
そんなわけで、僕としてはフィードバック自体が福利厚生になるくらいフィードバックを大事にしたいと考えています。
半年に1回の賞与と同じくらい価値のあるものにしたいのです(当社は年俸12分割なので賞与はありませんけどね)。

フィードバックが成長をドライブする

最近のスタートアップでは、個人評価そのものを廃止する会社もちらほら見られます。
人事制度上評価をどうするかは設計上いろんな考え方がありますが、公式の評価とは別であったとしても、フィードバックの実施は組織の成長をドライブすることができると思います。

① エンゲージメント観点
しっかりとフィードバックが行われる組織の方が、会社にいる意味を感じてもらいやすくなり、エンゲージメントの向上にもつながると思われます。

② 成長観点
フィードバックの目的は、個々のメンバーの成長につなげてもらうことです。フィードバックを通じて個々人が成長することで、より組織が強くなります。昨今リスキリングやコーチングなど、人材関連投資を増やす企業が増えています。
同様に、各マネージャーの時間をメンバーのフィードバックに投資することも、会社の成長に大きなインパクトをもたらし得ると思います。なにしろ人が商品のコンサルティング・ファームでも、あれだけ重視されているんですから。

有意義なフィードバックのための9つのポイント

「フィードバックは重要だから全力でやっていこう!」と思っても、実際にやってみると意外と難しいものです。
新任マネージャーなど急にフィードバックする立場になった方は、どうしたらいいかわからずプレッシャーを感じているかもしれません。

そんなわけで、僕が意識している有意義なフィードバックのポイントをご紹介します。

事実で裏付ける

フィードバックに主観が入ることは避けがたいですが、常に事実で裏付ける意識を持つことが大事です。
これはポジティブなフィードバックでもネガティブなフィードバックでも同様です。
マネージャー個人の主観によるフィードバックは説得力に乏しい上に、実際にその後の行動につなげるのが難しくなります。

たとえばこんな感じです。

【イマイチなフィードバック】
🙅 商談において顧客の要望を引き出して提案するのがうまくなった。

【よいフィードバック】
🙆 商談において顧客の要望を引き出して提案するのがうまくなった。それは、A社の商談においてお客様の「◯◯」という発言を引き出してうまく拾い課題を引き出したことで、結果的に新商品Aの追加受注につながったという実績にも現れている。

改善すべき点のフィードバックでは特に、具体的事実を添えて丁寧に伝える必要があります。

日頃から活躍情報を蓄積する

たいていの会社では評価は半年サイクルで行われます。
とはいえ、多くの人は半年前の仕事のことなど覚えていないので、どうしても直近の仕事の印象に基づいて評価やフィードバックをしてしまいがちです。

それを回避してフェアなフィードバックを行うには、常日頃からメンバーの活躍情報を蓄積しておく必要があります。
上述の事実に裏付けられたフィードバックを実践するためにも、常にエピソードを貯めておくことがとても有効です。
このとき、自分が目撃している情報だけでなく、社内の他のメンバから得られる情報や評価も参照できると、より説得力が増します。

これを実践していくには、手前味噌ですが当社サービスCollaの”キャンディ”機能がめちゃくちゃ便利です。
1年を通じて活躍を言語化して贈り合うことで、活躍情報がストックされます。
僕がフィードバックの準備をするときは、まずCollaのキャンディ履歴から半年間の活躍を思い出すところからスタートします。

当社の事例①
当社の事例②

このように、社内で生まれている様々な活躍情報がストックされていきます。これなしで評価やフィードバックをどうやって行うのか、もはや想像できないくらいよく見てます。


評価だけでなく感謝を込める

フィードバックは単に良かった点・悪かった点の評価上の指摘だと考えられがちですが、僕の場合できる限り感謝の気持ちを言葉で盛り込むようにしています。
せっかくの機会だから日頃の貢献に対する感謝の気持ちを伝えたいというのが直接的な理由ですが、感謝を伝えることには効果もあります。

同じフィードバックでも、単なる意見の陳述になっているか、心からの感謝の気持ちが込められている側で、受け取る側の印象は大きく代わります。
感謝の気持ちがあるのなら、それをきちんと伝えた方が受け取る側も真剣にフィードバックを受け止めてくれるはずです。

ポジティブ8割、ネガティブ2割

フィードバックはポジティブな点とネガティブな点(改善点)の両方を含むことが多いはずです。
ポジティブ要素とネガティブ要素のバランスについては、いろんな流派がいます。ポジティブ多めと考えている人もいれば、「評価次第」と考えている人もいて、あるいは「フィードバック=改善点を指摘すること」ととらえて改善点多めに伝える人もいます。

僕は9割5分のケースにおいてポジティブ多めがよいと考えています。感覚的にはポジティブ7割:改善点3割くらいがちょうどよいですが、意識的にポジティブ8割にするくらいで考えてOKです。
改善点多めのフィードバックが成立するのは、フィードバックを行う人と受け取る人の間に強い信頼関係と前向きな成長姿勢があるときと、それが改善できなかったら本当にアウトなときだけです。

フィードバックはあくまで相手の成長や行動の改善につなげるためのものなので、ダメなところばかり指摘しても意欲を削ぐだけでやる気を引き出せません。たとえ気になる点がたくさんあるとしても、本当に相手に変化を促したいのであれば、伝えるべきことを厳選し、本当に重要なことに対する行動変容を促すのがよいフィードバックだと考えています。

自分が評価できないことについて、いい加減なフィードバックをしない

自分が全然知らない領域の仕事について、いい加減なフィードバックをするのも避けるべきです。
これは悩ましい問題で、企業内では自分は全く理解できない仕事をしている部下の評価をしなければならない場面が多々あるからです。
複数のスペシャリストが集まる事業部を束ねる事業部長などはそういう場面に遭遇しますし、経営者はあらゆる職能の人を最終的に評価しなければなりません。

僕も以前はエンジニア・デザイナー・編集者など、自分とは全く違う職能のメンバーをマネジメントし、最終的にフィードバックや評価をしなければならなかったので、苦労しました。
こういう場面で大事なのは、自分が評価する能力のない事柄について、適当に評価しないことです。
よくわからない人間にいい加減な評価をつけられることは、誰にとっても本当にやる気がそがれることです。「自分の苦労や成長はこの環境では報われない」という強いシグナルになってしまいます。
そんなときは、率直に「わからないから評価できない。申し訳ない」と言ってしまった方がよいと思います。

もちろん、その状態を放置せずに、評価不能な状態を解消する努力は必要です。同じ領域の専門家にリファレンスをもらったり評価自体を手伝ってもらう、組織として360度フィードバックを活用するなど、やり方はいろいろあります。
とにかく無責任なフィードバックはよくないのです。

少なくとも一晩寝かす

真剣に評価を書いているとだんだんと熱がこもっていき、ポジティブな意味でもネガティブな意味でも書きすぎ・言い過ぎになることはよくあります。
フィードバックを書いたら、少なくとも一晩寝かしましょう
翌日以降に冷静になって読み返してみて、気になるところは修正しましょう。

事前に期待を伝える

フィードバックが改善機会として有効に機能するための前提として、お互いの期待が事前にすり合っている必要があります。
その期待は目標設定として明示的に共有されていることもあれば、「2年以内にマネージャーに昇進を目指そう」といった認識合わせになっていることもあります。あるいは、「もっともっと成長したい」↔「爆速で成長してくれ」という双方暗黙の共通認識になっていることもあります。

改善点に関するフィードバックはその共通認識の範囲内で行わないと効果的に機能しません。
期待が伝わっていない状態での改善点の指摘は単なる揚げ足とりか後出しジャンケンにしか聴こえません。
期待が伝わっていない状態で気になる点がある場合、まず伝えるべきは改善点の指摘ではなく、期待そのものです。「こうあってほしい。こうなってほしい。」ということをしっかり先に伝えましょう。

本人の気持ちに寄り添う(フィードバックはおくりもの)

フィードバックは自分が相手に言いたいことを言うのが目的ではなく、相手に変化を生み出すために行うものです。
変化につながらないフィードバックはフィードバックとは言えず、単なる放言です。
その変化とは、マネージャーである自分や組織にとって有益な変化であるべきですが、同時に本人とっても有益なものである必要があります。

相手の気持ちに寄り添い、相手が最も建設的に受け止めやすい形でフィードバックを伝えましょう。
フィードバックは相手に対する贈り物です

とにかく時間をかけて真剣に考える

いろいろポイントを書きましたが、これらを実践して有意義なフィードバックを行うのは簡単ではありません。めちゃくちゃ手間がかかります。

手間をかけましょう。ショートカットはありません。

メンバーの気持ちに寄り添うフィードバックを行うためにも、まず相手のことを真剣に考えましょう。
深く考えられていないフィードバックは本人からすればすぐにわかります。

自分がどんなに経験豊富で優秀で、社内で立場が上で、対外的に有名だったり社会的地位が高くても、相手に真剣に向き合っていないフィードバックが人を動かすことはありません。
忙しくて多くの部下を抱える社長やシニアマネージャーがメンバーのフィードバックをするときは、この点を特に注意することだ大事です。

上司がきちんとフィードバックしてくれない場合

最後にフィードバックを受ける側の立場からも少しだけアドバイスを。

上司がきちんとフィードバックをしてくれないことは多々あると思います。フィードバックをする気がない場合もあるし、フィードバックをする能力がない場合もあります。受け手としてはどちらの場合も、よいフィードバックが得られないという点では変わりません。

ただ待っていてもよいフィードバックが得られない場合、自分から主体的にフィードバックをもらいにいきましょう

直接の上司に自分からお願いするのもよいです。
組織上の評価者以外の先輩などにお願いするのもよいです。

さらに貪欲にフィードバックを求めたい人は、周囲の同僚達からの360度フィードバックを自分からお願いしてしまいましょう。
これはなかなかアグレッシブで実践する人は少ないですが、たとえば退職時や部署異動時になどにお願いすると、あとから貴重な財産になります。

僕も以前同僚にお願いしたことがあります。興味がある人は以前書いた以下のnoteを参考にしてみてください。


ここまで読んでくれた方へ

お願い①
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質問や異論も歓迎なので、それもXでシェアしていただけると嬉しいです。

お願い②
当社トラックレコードでは、フィードバックから学び合うことに共感してくれる才能を募集しています!
「フィードバックをもらって爆速で成長したいぜ!」という方々も募集中です!!



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