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【後編】犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉

子ども向けオンライン動画制作教室「FULMA Online(フルマオンライン)」を運営するフルマの齊藤です。

犯罪心理学者という点で非常におもしろいと思い買った本が
出口保行さんの著者「犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉」です。
(記事下部にリンクを掲載させていただきました。)

1万人以上の犯罪者・非行少年を心理分析して目線で子どもにどんな声かけをするといいのか、逆にどんな言葉は悪影響化がまとめられています。
前編はこちら↓

今回はこの書籍を読んだ内容(後半)をまとめていきます。

「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する

自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定できる感覚であり、他者との比較ではなく、自分の存在に価値があると認め尊重できる感覚のことをいいます。
非行少年・少女は総じて自己肯定感が低いそうです。
そんな彼らが更生する一歩として、自己肯定感を上げるようにしているというのは興味深いですよね。
では、具体的にどうしているのかというと、
行動観察を行い、変化を見逃さずに努力や成長に気づいたら、それを認め、褒めていくことで自己肯定感が上がっていくそうです。

また自己肯定感は時間と共に下がっていきます。特に13歳〜25歳ごろの青年期は「疾風怒濤の時代」と言われており、心身の急速な発達に伴い、不安や動揺を感じやすい時期だそうです。だからこそ「あたなの存在自体に価値がる」と伝えていくことが重要です。

自己肯定感と近い言葉で自己効力感というのものがあります。
自己効力感とは、何らかの課題に対して「自分ならできる」という思いをもっていることです。
自己効力感が高いほど、課題解決に向けて行動をとることができますが、低い人は「自分にはできるはずがない」と行動すら起こさないことがあります。
この自己効力感にもっとも大きく関わるのが自己肯定感です。
自分には価値がある、自分はできる、と前向きに行動していくことで、おのずと成功体験が増え、自信に繋がっていくのです。

このように考えると、幼少期に自己肯定感が低かった場合、課題の多い思春期以降に自己肯定感を高めるのは非常に困難になることがわかると思います。
課題に直面しても、前向きになれず、結果行動を起こさない、だから乗り越えられず、自信を失っていく、というのサイクルに入ります。
そこに親から「できないあなたはダメ」と言われれば、さらに自信がなくなってしまいます。

「うちの子のなんて」に気をつける

日本人の自己肯定感の低さは、謙遜からきているともいわれています。
親同士の会話の中で、子どもが褒められたときに、つい
「うちの子なんて大したことないよ」
「おたくのお子さん賢いよね〜うちの子なんて算数がまるでダメんだよね」
と相手の子どもを立てるために、自分の子どもを下げることはありませんか?

子どもからすると、親からそう思われているんだ、と感じてしまい、それが繰り返されると自己肯定感がどんどん下がってしまいます。

その場で謙遜することがあったとしても、あとからちゃんとフォローをいれておきましょう。

「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する

心理学では「ブーメラン効果」というものがあります。
ブーメラン効果とは、相手を一生懸命に説得するほど、反発が起こって逆の行動を導いてしまう現象のことです。
さらにこうのブーメラン効果が起きやすい条件が2つあります。

1つめは、説得者と同じ意見であるときです。
直感的には、自分と反対意見の方が反発したくなる気がしますよね。
でも実際はそうではないのです。「そうしようと思っていたのに!」という時に反発して逆の行動をとりたくなるのです。
勉強しようと思っていたのに、勉強しなさいと言われてやる気がなくなったことがある人も多いと思います。

2つめは、説得者を信用していないときです。
信頼関係があれば、この人のいうことを聞こうとなりますが、不信感のある相手だと「強制されている」「自由が侵されている」と感じ、反発したくなるのです。

上記のことから、親が勉強ばかりに関心ごとがあり、子どもが強制されていると感じたまま、しかたなく我慢しながら勉強しているとすると、気をつける必要がありそうです。
いつか溜め込んでいた不満が怒りに変わり、問題行動を起こしてしまうかもしれません。
だからこそ、子どもとは勉強以外の話題を持つようにしましょう。
勉強ときには細かく熱心に聞くのに、友達や趣味の話だけ「へ〜」とそっけない返事をしたり「そんなことより勉強は大丈夫なの?」と言ってしまうと、勉強のこと以外は話を聞いてくれない、と心を閉ざしてしまう可能性があります。
さまざまな話を通じてリフレッシュできた方が、結果としてやる気も湧いてくると思います。

「私は悪くない」合理化の心理

騙される方が悪い、など理屈をつけることを心理学では「合理化」といいます。
これは欲求不満や葛藤などから自分の心を守るために働く防衛機制のひとつです。問題を起こすとき、罪悪感があるからこそ、心を守るために合理化するわけです。
更生を見守る側は、それを一旦受け入れる必要があります。
自分の子どもが何かをしてしまったときに、親も同様に、まずは言い訳を聞いてあげることが重要です。子どもの言い訳は、自分の心を落ち着かせるためにやっていることが多いのです。
そしてとことん言い訳をすれば、自分で矛盾を感じるようになります。
これが重要な点です。
自分で気づいて、自分で先に進めるようになるからです。

気をつけて!の問題点

子ども心配するあまり、気をつけて!と先回りしてさまざまな経験を止めていませんか?
もちろん命に関わるような重大なことは先回りして防ぐべきですが、何でも注意しすぎると失敗する経験が失われてしまいます。失敗して落ち込んだり、嫌な気持ちになったりすること自体が成長の糧になり、自分で危険を察知する力が高まるのです。
特に対人関係の失敗は共感性を高めます。
余計な一言を言ってしまった、「言わないで!」と止められていたことをを言ってしまった、などコミュニケーションを通じて様々な失敗をすることになります。
何でも転ばぬ先の杖をしてしまうと、子ども自身が何に気をつけていいのかわからなくなってしまうのです。
だからこそ、本当に子どものためを思ったら、あえて失敗させてあげることです。そして親の考えをいうのではなく、子ども自身に考えさせてあげることが重要です。

子どもをよく観察することの重要性

子どもは思っていることの1%も口に出せない。だから何か異変が起きていないか常に観察することが重要です。子どもが助けてと言ったときは、すでに事態の深刻さは回復が難しいとろこまできているそうです。
子どもとの会話だけでなく、いつもと違う様子はないか、表情はどうか、常に観察することで、子どもが本当は言いたかったことに気づいてあげられるのかもしれません。

完璧な親なんていない

頭ではわかっていても、実行することはなかなか難しいものです。
ついつい余計な一言を言ってしまったりして反省することもあるでしょう。
たとえうまくいかないことがあったとしても、愛情をもって真剣にむきあっていればなんとかなります。修正はおそれずにいきましょう。

さいごに

どのようにして子どもが追い込まれていくのか、事例をもとに整理されていて非常にわかりやすい本でした。
子どもにとって親は一番信頼したい、愛されたい相手であり、その関係性が悪化すると、苦しくなってしまうのも共感できます。
非行少年・少女の親の特性として、
昔は「放心主義で子どもに興味関心がなく、子どもがやったことは子どもの責任」というタイプの親が多かったが、最近は過干渉、過保護の親が多いそうです。モンスターペアレントではなく、ヘリコプターペアレントという何でも急に関わろうとしてくる、というタイプの親がいることも本書を通じて知ることができました。

しっかりと子どもの話を聞き、言葉だけでなく観察を通じて子どもたちと向き合っていきたいと思わされる、素敵な本でした。

本書の前編はこちら


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