野原太郎 / やけのはら

DJや作曲、ラップ、執筆業など。 2018年、雑誌「POPEYE」でのコラム連載をまと…

野原太郎 / やけのはら

DJや作曲、ラップ、執筆業など。 2018年、雑誌「POPEYE」でのコラム連載をまとめた初の著作『文化水流探訪記』を青土社から刊行。 https://artist.link/yake

最近の記事

濱口竜介監督映画『偶然と想像』感想 / 「実存と虚構、繋がらない心」

濱口竜介監督『偶然と想像』を見た。 以下、ネタバレありの感想、覚え書き。 濱口監督の映画は、『ドライブ・マイ・カー』、『悪は存在しない』を鑑賞したことがあり(濱口竜介『悪は存在しない』感想 / 自然の摂理 自然の寓話 立ち上る薪割り幻想)、今更ながら、その才能に驚き、他の作品も見てみたいと思っていたタイミングで、旧作をまとめて上映する企画があったので、とりあえず近作の『偶然と想像』を見ることにした。 ただ、予告編を見た感じ、現代劇の恋愛ものという、私はあまり得意ではない、

    • 映画『ソイレント・グリーン』 感想

      以前リリースした、UNKNOWN MEのアルバムのレビュー(https://turntokyo.com/features/unknounme_bishintai/ )で、アルバム内容に呼応する形で言及されていた映画『ソイレント・グリーン』、未見だったですが、今、再上映されているので、数日前に見ました。 以下、簡単なメモ、健忘録。 まず、1973年公開で、2022年を描いた作品でありつつ、全く未来感を演出しておらず、そのまま1973年の世界なのに驚く。潔い。 主人公警察官の

      • 映画『フィッシュマンズ』試写感想

        フィッシュマンズの映画、試写拝見しました。 面白かった。 音楽ドキュメンタリーは、思い入れたっぷりに対象を美化して描くものも多く、ファンもそれを求めているという構図もありますし、また別のベクトルでは、ゴシップ的にセンセーショナルな演出を施したものも散見します。 そう言った面で、ちょっと構えて見たところもあったのですが、1982年生まれで、中期〜後期あたりがリアルタイムかと思われる監督の手嶋氏は、比較的客観的に、良い面も悪い面も事実に則し(即そうと)、誠実に作り上げているよう

        • 遠野 / 釜石 / 陸前高田 紀行

          以前から興味があった岩手県遠野を初訪問。 遠野といえば、なんといっても柳田國男『遠野物語』だが、現地に行くと、柳田國男に地元の民話を伝えた、小説家志望だった青年「佐々木喜善」の功績を讃える動きも強いのが印象的。 遠野は、山奥の秘境という感じではなく、ゆったりとした空気感はありつつも、必要以上に観光化されていない、素朴で、自然が綺麗な地域だと感じた。 駅から離れた国道沿い以外には、チェーン店やコンビニもなく、夜7時にもなれば駅前も閑散とするが、寂れているという風でもない独特の

        濱口竜介監督映画『偶然と想像』感想 / 「実存と虚構、繋がらない心」

          初めての社交ダンス/ジルバ体験

          ジルバのステップを教わる機会があった。 ハウス・ミュージック以降の自由に踊って良いというダンス・カルチャーしか知らず、それはそれで性に合うのですが、決まったステップがあることによって、このグルーヴ、テンポは、このステップに合う合わないという新しい視座、枠があることの面白さを今更理解した。 ジルバは、4分の4拍子の音楽に対して、スロー(2拍)スロー(2拍)クイック(1拍)クイック(1拍)の6拍子(もしくは3拍子、4/4に対して1小節半)で、どんどんズレていくポリ・リズム の

          初めての社交ダンス/ジルバ体験

          坂本龍一『12』感想 「無我の境地的純音楽、音楽に捧げた音楽」

          楽しい、面白い、グッとくる、〇〇に合う、〇〇を表現している、等、音楽に付随する全ての効能、物語を廃し、ただそこに剥き出しの音があるという感じの無我の境地的純音楽。 ドビュッシーでも、現代音楽でも、ジャズでも、アンビエントでもなく、その他様々な、どの様式にも帰属せず、同時にその全てであるような森羅万象系。 前作『async』も最高でしたが、『async』は、使用楽器も多彩で様々なアイデアが織り込まれ、『12』と比べ、明確にエンターテインする意思が感じられる、広義のポップ・ミ

          坂本龍一『12』感想 「無我の境地的純音楽、音楽に捧げた音楽」

          濱口竜介『悪は存在しない』感想 / 自然の摂理 自然の寓話 立ち上る薪割り幻想

          数日前、濱口竜介監督の映画『悪は存在しない』を鑑賞。 以下、ネタバレありの感想、覚え書き。 事前に、石橋英子さんの音楽を起点として作られた映画との情報だけは知っており、また、ミニ・シアター限定での公開という上映方法からも、勝手に、もっと抽象的で、音楽を主軸に置いたイメージ映画的なものを想像していたのですが、はっきりと筋のある、シンプルで力強い「映画」。 舞台となった長野? 山梨? 小淵沢? の景色がまず印象的だ。 映画的マジック(それは危険なことでもある)によって切り取ら

          濱口竜介『悪は存在しない』感想 / 自然の摂理 自然の寓話 立ち上る薪割り幻想

          ビクトル・エリセ『瞳をとじて』感想 「映画の中にだけ生きる魂」

          数日前、ビクトル・エリセ監督の映画『瞳をとじて』を鑑賞。 以下、壮大にネタバレありの、感想、覚え書きです。 73年撮影、日本公開が85年の映画『ミツバチのささやき』で知られる、スペインの巨匠、ビクトル・エリセ監督の31年ぶりの長編映画。 予告編を見た時から分かっていましたが、『ミツバチのささやき』の映画的な別世界への没入性、瑞々しさとは明らかにトーンが違う現代劇。 思わせぶりで引き込まれる劇中劇の冒頭部分は魅力的で、普通にこれで一本見たいと感じたものの、本編になると(意図

          ビクトル・エリセ『瞳をとじて』感想 「映画の中にだけ生きる魂」

          はじめてJに触れた夜

          ずっとテレビをもっていないので、誰が誰か全く分からない(ギリギリ分かってSマップ)。 子供の時から一度もアイドルにハマったことがない。 という状態から、昨夜、大きな音で聴き、サイリウムを振って踊り、初めて「J」が少し分かった、体感として分かった気がする。 音楽的には、ダンス・ミュージックであり、広義のディスコ。 とぎすまされたエンタメ、夢の世界、救いの音楽。 ハウスの持続、永遠性、ある種の仏教感、横の動きとは違う、天上の音楽、一過性、一神教的上昇の音楽、縦の動き、という印象

          はじめてJに触れた夜

          Mini Interview with 万事快調(Banji Kaicho / Fredy J)

          米国バージニア州リッチモンドのFMラジオ局「WRIR」にて、J-POP/アンビエント/ジャズ/フォーク/ロック/エクスペリメンタル/サウンド・トラック、と幅広い、日本〜アジアの音楽を紹介する番組を制作する「万事快調」ことFREDY J。 数年前、私が参加するアンビエント・ユニット「UNKNOWN ME」の楽曲を放送で取り上げて頂いた時から交流が始まったのですが、毎週放送される万事快調氏の番組の、幅広い日本の音楽からのセレクションには驚かされました。 近年では、シティ・ポッ

          Mini Interview with 万事快調(Banji Kaicho / Fredy J)